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「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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江戸東京博物館で開催中の「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」展内覧会に行ってきました。
例によって特別な許可をいただいて写真撮影しています。通常は撮影禁止です。

★ 展示内容

公式サイトによると、
本展では、現代のサムライイメージの原点である江戸時代のサムライ=〝士〟の暮らしや仕事のありさまをご覧いただき、サムライのイメージを見直してみたいと思います。
徳川将軍の居所として、当時、世界有数の大都市であった江戸の風景の中で、サムライがいかに活動していたのか、絵画作品や古写真から浮き彫りにしていきます。また、有名無名を問わず、サムライの家に伝来した所用品の数々から、江戸時代の人びとが見聞きし親しんでいた生のサムライの生活をご覧いただきます。
とのこと。

戦国の世では戦うことが役割であったサムライたちも、江戸時代になるとその求められるものも変わっていく。そんな様子を本展ではほぼ年代順に、有名・無名の侍たちをピックアップすることで示している。
展示構成は以下の通り。
  • プロローグ ―都市のサムライ―
  • 第1章 士 変容 ―武人から役人へ―
  • 第2章 士 日常 ―実生活のあれこれ―
  • 第3章 士 非常 ―変事への対応―
  • 第4章 士 交流 ―諸芸修養と人材交流―
  • 第5章 士 一新 ―時代はかけめぐる―
  • エピローグ ―サムライ、新たな生き様―

「サムライ」と言っても、時代によってその性格は変わっていったし、ランクによっても大きく異なっていた。馬に乗って戦闘行ったサムライたちに対し、身分の低い“雑兵”たちは歩兵としてその補佐をしたり、荷物の運搬を任されたり、土木工事(砦を築く、塹壕を掘るなど)に従事した。そんな様子を“解説”した絵巻物が残されている。
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築城もまたサムライたちにとって重要な任務だった。工事全体を指揮する者、そして実際に資材を運び、組み立てる者。
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戦国の世においては、サムライたちは“軍団”として組織化されていて、その指揮権を明確化していた。またそれは実際の戦いにおける布陣の形の基本ともなっていた。「陣備図」はその“見取り図”だ。
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参勤交代制度によって多くの地方のサムライたちは、江戸で“単身赴任”の形で暮らすこととなる。そんな彼らの生活の様子が描かれた絵巻物がある。車座になって酒を酌み交わすその姿は微笑ましいものだ。藩主が新たな役職を得たために帰国時期が延びてしまい、やけ酒で暴れている、なんてシーンまである。サムライと言えども人の子。その辺りは何も変わらないようだ。
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一方で、幕末の頃のものだが、彼らを写した写真も残っている。イギリスのフェリーチェ・ベアトによって写されたものだ。その中ではきちっと身なりを正し、キリッとした姿で写っている。絵巻物の中の姿がOffだとすると、こちらはOnの状態。時代が下っても“サムライ”としてのアイデンティティーは変わらないということか。
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サムライ長屋で窮屈な暮らしをしている者もいれば、与力の地位にあった者のはなかなかの豪邸に住んでいたようだ。ある与力が屋敷を新築した時の見取り図が残っている。部屋数はいくつあるのだろうか。
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さらにその上の奉行ともなれば日常使っていたものも豪華。南町奉行でお馴染みの大岡忠相のもの。手前は毛抜き。お白洲で裁きを行う際、気合いを入れるためか(?)これで髭を抜いたのだそうだ。いやぁ、痛そう。。。。
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そして対するこちらは北町奉行だった遠山景元の肖像画など。そう、ご存じ“遠山の金さん”だ。
そんな金さん、痔を煩ってしまい、馬に乗ることも辛い状態になってしまったそう。座っているだけでも痛いでしょうから、乗馬はさすがに無理。ということで、「駕籠に乗って登城することの許可願い」(手前の手紙)が残っているのでした。実在の金さん、ちょっとイメージが違いますね。
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この辺りは“有名人”コーナー。教科書でも見たことのある人物(の肖像画)が並んでます。平賀源内さんもいますね。
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展示コーナーの真ん中に置かれた大砲。存在感あります。幕末のもので、実際に戦闘に使用された後、明治になってからは「午砲」として使われたもの。「午砲」とは昼の時刻を知らせるために空砲を撃った大砲のこと。江戸時代の時の鐘と同じく、明治時代には大砲が使用されていたのでした。一般には“ドン”とも呼ばれていたもの。
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サムライたちに「武士の鑑」として語り継がれたのが鳥居強右衛門(とりいすねえもん)。そして、彼をより有名にしたのが、この背旗に用いられた“肖像画”。平和な世となったとは言え、サムライたちは武芸を忘れた訳ではなく、先人の武勇伝に敬意を持ち、モチベーションとした。
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文久遣欧使節団のメンバーを写した大判の写真が残っている。その中にはかの福沢諭吉も通事(通訳兼外交官)として加わっていた。
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幕末の三舟(さんしゅう)と呼ばれた、幕末から明治時代初期にかけて活躍した幕臣である勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟関連の品も展示。
海舟の号の元となった、佐久間象山宅に飾られていた額(「海舟書屋」とあります)なんてのも。
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江戸無血開城のために勝海舟が西郷隆盛へ談判したことは有名ですが、実はその前に江戸に向かって進軍してきた隆盛と直接対峙して説得を試みた人がいたのです。それが高橋泥舟。勝海舟の書状をこの入れ物に入れて西郷隆盛の元へと向かったのだそうです。
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明治の世を迎え、サムライもその役割を終えました。その後は、海外から日本へとやって来た欧米人が、半ば懐古趣味的にサムライの風俗に興味を持ったりもしたとのこと。こちらは、首から下だけが出来合いで、顔の部分だけ本人に似せて描かれた“お土産”用の肖像画。顔ハメ式の記念写真パネルのようなものですね。
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元サムライの中には新たな才能を開花していった人たちもいた。“維新の洋画家” 川村清雄もその一人。以前、江戸東京博物館でも企画展が催されたが(「「維新の洋画家 川村清雄」展 こんな洋画、初めて見ました!」を参照のこと)、それぞれに新しい世の中へと順応していったようだ。
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★ 感想

江戸時代のサムライたちの姿にスポットライトを当てた、江戸東京博物館ならではの企画展と言えるでしょう。テレビの時代劇で慣れ親しんだイメージとはちょっと(だいぶ?)異なった姿がそこにはありました。「武士は食わねど高楊枝」を二十四時間三百六十五日続けていくのはやはり無理だったのでしょう。素顔の彼らは、日々の生活を楽しみ、仕事に勤しみ、今の我々と変わらない生活を送っていたようです。
とは言え、世の中が大きく動いた、戦国時代の終わり、幕末には命を賭して戦った、まさに「もののふ」でもあった訳で、この企画展ではその両面を知ることができる形になっていました。

有名人所縁の品はやはり目を惹いちゃいますね。大岡越前や遠山の金さん、そして幕末の三舟は「おお、これが彼らの使っていたものなのか」と見入っちゃいました。
それにしても、金さんが“痔持ち”とは知らなかった。幕府首脳と対立することが多くて、苦労を重ねたという話は聞いていたが、プライベートでもこんな状態だったとは。上役との衝突によるストレスが原因だったんですかね。

鳥居強右衛門」の本を読んだところだったので、背旗の写し絵を見られたのは感激。命を投げ打って見方を守ったところをリスペクトされたのは分かるけど、この姿はなんともインパクトありすぎ。

そうそう。屏風絵にしろなんにしろ、細かい描写の作品が多いので、単眼鏡の持参をおすすめします。今回、持っていったのに、バッグに入れたままコインロッカーに入れちゃったので使わずじまいでした。失敗。

江戸東京博物館は、私が良く行く東京都写真美術館と同様に、図書館(図書室)を併設しています。今回も企画展に合わせた、関連図書の紹介がされていました。展示を見て興味を持った人物や出来事などがあれば、図書室に立ち寄って参考書を読んでみるのも良さそうですね。一部はミュージアムショップでも販売していました。「レンズが撮らえたF.ベアトの幕末」なんて面白そう。

★ 美術展情報

「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」展は下記の通り、開催中。






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コメント 2

JUNKO

今回は行けそうです。
by JUNKO (2019-10-13 19:30) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
こちら、常設展示も面白いですよ。
by ぶんじん (2019-10-13 21:25) 

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