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「維新の洋画家 川村清雄」展 こんな洋画、初めて見ました! [美術 : 美術展、写真展紹介]

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江戸東京博物館 開館20周年記念展「川村清雄展」の記念式典・特別鑑賞会に参加してきました。

と、偉そうに書いたのですが、実は「川村清雄って誰?」という感じでの参加。でも、その人となりや作品を観て「これはおもしろい!こんな洋画(?)は初めて観た!!」と感激。そして、美術史はもとより、歴史的観点からも観るべき企画展だと確信したのでありました。

イベントは二部構成。最初はホールでの講演(主催者挨拶&川村清雄のお孫さんによるお話、学芸員による解説)と、実際の展示見学です。

第一部の内容を要約するとこんな感じ。
★主催者挨拶:館長 竹内誠さん
川村清雄展には三つの特徴がある。
・博物館では作品とともにその人の生涯を立体的に展示している。
  清雄子孫寄贈の(膨大な)書簡・スケッチ下絵などを研究した結果である。
・展示作品:歴史の観点から肖像画に特徴がある。
  篤姫、徳川家達、福沢諭吉、勝海舟などの油絵群。
  絵画としては、その人の内面も描いた肖像画となっている。
  里帰り展示品も展示。
   日本では”忘れられた画家”になっていたが、海外での評価は高い。
   パリ・ベネチアで油絵修行した時の絵や、フランスから注文を受けて描いた「建国」などを本邦初公開。
・人となりを示した展示になっている。
  祖父は外国奉行を歴任した官僚。
  徳川家達(いえさと)の学友(お守り役?)となり、大政奉還・明治維新後も徳川家に仕える。そのため、徳川家の私費で留学した(初めはアメリカに法律の勉強に行く)。
  画壇における洋画の流れから外れ(主流はかの黒田せいきなど)、我が道を進むことに。そんな中、勝海舟に見いだされ、可愛がられる。
  和魂洋才+旧幕臣魂の人といえる。
  昭和9年没。享年83歳。

★川村清雄の孫娘:篠原さんのお話
祖父は生まれる十年前に他界。「おじいちゃんに似ている」と言われたが、顔も知らないので、そう言われてもうれしくはなかった。。。
父(清雄の一人息子)は祖先の品々を、戦争の時代を通して守ってきた。
東宝のカメラマンになり、その後、NHKに勤める。
「川村清雄研究会」を立ち上げ、忘れられた画家から引き上げようと尽力する。自宅の資料を整理し、明治以前のものを新潟市歴史博物館に寄贈。明治以降のものは江戸東京博物館に寄贈。この資料の研究成果が今回の企画展に反映されている。
遺族として、今回の企画展開催をとてもうれしく思う。その想いが叶い、亡き父も喜んでいるだろう。

★解説映像 学芸員:落合さん(田中さん)
今回の出品は218点。うち、絵画は約100点。会期中、二度の展示替えあり。(注意が必要。詳しくはホームページで確認を。展示期間も示された展示品リスト(PDFファイル)がダウンロードできます)
主な作品
 「形見の直垂(ひたたれ)」:恩人である勝海舟の死を悼み、作成。生涯、手元に置いていた。
 「徳川家茂像」:歴代将軍像の最初のもの。一年を要して作成。有職故実の研究をしっかりし、描き込んでいる。
 「貴賤図(御所車)」:日本画の巨匠が賞賛。
以下、初公開作品
 「建国」:オルセー美術館蔵
 「ヴェニス図」:個人蔵を新発見。尾張徳川家の注文品と同時期に描かれたものらしい。
 「晴・雨」:双幅の油彩画。幸田露半の箱書き。
師匠のジャンバッティスタ・ティエポロの作品も展示
清雄の留学時の通信簿(?)も展示

★川村清雄ってどんな人?
講演内容や、展示品横の解説をまとめると、
・江戸時代末期から洋画を始める。日本では最初期にあたる。
・あくまでも幕臣。明治になっても徳川家や勝海舟など旧幕府要人に仕える。
・手法は洋画だが、描くものは日本の神話だったり、有職故実に則った武家・貴族の世界。果物の静物画にも武具が描かれていたりする。
・人脈は広く、旧幕府関係者だけでなく、文壇にも顔が広い。
・有職故実などに対して研究熱心すぎ、依頼された期日を守れないことたびたび。でも、自分が納得しないと描くことをしなかった。
・時流(歴史の、画壇の、、、)に乗ることなく、我が道を進んだ人。

生き方があんまりうまくない人だったようですが、魅力的ですな、何とも。


★展示見学と所感
さて、講演が終わり、次は実際に展示を見学。一度に大勢の人が会場になだれ込んだので、最初は右往左往しちゃいました。が、いらっしゃっているみなさんはかなり”ハイ・ソサエティ”な方々ばかり。混雑はしても騒ぐことなく、場を乱すことなく観覧。ほどなくして、ゆっくりじっくりと作品鑑賞できるようになりました。

ということで、作品展示を観ての感想です。
これまで見たことのない洋画、いや日本画だ。日本の神話や有職故実に題材を得た作品群は、洋画のしっとりとした輝きのある画面の中に、古の日本を見ることができる。
”忘れられた”というか、”教科書で観たことない”作品ばかり。美術の教科書では「日本の洋画は黒田せいき等によって確立し、、、」と習った訳だが、違う流れもあったということがよくわかった。しかも、かなり魅力的な流れが。

歴代将軍を描いた肖像画が並んでいるコーナーがあるが、よく見ると将軍達の装束がちょっとずつ違う。襟(下着?)の色が白だったり、赤だったり。背中(腰)からひらひら垂れている布(名前がわかりません。。。)の色や形もちょっと違う。詳しい説明はないが、これも清雄の有職故実研究の結果なのだろう。単に雰囲気で描くのでは納得しない人のようだ。

”忘れられた”作品であるため、これまで評論・評価も見聞きしたことがない。そのため、清雄の世界・作品を表する”決まり文句”がまだないようだ。そのため、自分の目で実際に見て感じ取るしかなさそう。
ということで、観るべき作品であり、企画展だと思います。強くおすすめします。


会期   : 2012/10/08(Sun) - 12/02(Sun) 月曜日休館
会場   : 江戸東京博物館 1階展示室
開館時間: 09:30-17:30 (- 19:30 Sat)
観覧料 :  大人1,300円





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