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「江戸時代の天皇」展 @国立公文書館 江戸の庶民も改元の度に新元号をあれやこれや言って楽しんだみたい [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

公式サイトによると、
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康ら天下人が登場し、それに続く江戸幕府による支配の中で、天皇・朝廷はどのように渡り合い、関係を構築していったのか。光格天皇による朝廷儀式の再興、江戸時代の元号の選定と改元などについて、当館所蔵の絵巻物や公家日記などを中心に御紹介いたします。
とのこと。天皇の退位と、皇太子の即位を記念した企画展となっている。
企画構成は
  • はじめに
  • 第1章 天皇・朝廷と天下人
  • 第2章 江戸幕府と朝廷
  • 第3章 元号の選定と改元
  • 第4章 光格天皇と朝儀復興
  • 第5章 天皇・朝廷と民衆
  • おわりに
となっていて、政治的なものから、江戸庶民の暮らしの中の天皇制(この場合は改元をピックアップ)までと、幅広い展示だ。

後水尾天皇の二条城行幸を描いた絵巻。大御所となった徳川秀忠と、三代将軍家光が上洛した際に行われたもの。幕府と朝廷の良好な関係性、そして三代将軍となった家光の威光をアピールするのが狙いと言われている。
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だが、両者の関係がごたつくことも。
後水尾天皇と徳川秀忠は対立することが多く、その度に後水尾天皇は退位(譲位)の意向を示し、その数五回。最後(五回目)は公家たちにも事前告知することなく、本当に譲位してしまったのだそうです。幕府は渋々事後承認するものの、その後には五摂家に対して朝廷の運営を任せ、以後、勝手なことがないようにさせたのだとか。
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即位と言えば大嘗祭。戦国時代には途絶えてしまっていたものを、江戸時代に復興。東山天皇即位の際には、以前から比べると簡素化された(三日間の式次が一日に短縮)とはいえ、大嘗宮も建てられて挙行された。その見取り図(紫宸殿からの通路も描かれている)がこちら。
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水戸光圀は宮中の儀式・公事を保護・保全する目的で“辞典”「礼儀類典」を編纂している。
そこには、大嘗祭の際に用いられる“高御座(たかみくら)”の図などが記されている。
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最近、新元号が何になるかで盛り上がり、「令和」に決まったあとも、その謂われやイメージなどに対してあれやこれやと話題となった。江戸の庶民たちも同じように、改元の度に「これはいい」「これは縁起が悪い」などと“評価”して楽しんだようだ。
「正保(しょうほ)」に対しては、「正保元年」が「正に保元の年」と読め、保元の乱のような兆しでよろしくない、と不評だったようだ。
「明和」も「明和九年」が「迷惑年」になるとして嫌われたとか。果たして明和九年には、目黒行人坂から出火した“明和の大火”が起きている。
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元号を定める議論のことを「難陳(なんちん)」と言ったそうです。新元号候補に対して、吉凶やら典拠やら、音の響きやらを議論して決めたのだとか。その議論の記録集が残ってます。それが「改元定難陳詞(かいげんさだめなんちんのことば)」。
「「平成」と決めた時の公文書が残っていない」なんてニュースがありましたが、「令和」に関してはどうなんでしょうね。公文書として後日、公開されるのでしょうか。
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展示の最後は「桜町殿行幸図」。全長四十五メートルに及ぶ絵巻物で、光格天皇が禁裏御所を出て仙洞御所(桜町殿)へ行幸した時の行列を描いたもの。彩色も美しく、華麗な行列の様子は観ていて飽きない。
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★ 感想

譲位による天皇交代、そして改元。そんな時期に合わせた国立公文書館の企画展。ベタな企画だなと分かっていても、やっぱり気になっちゃいますよね。ということで、遅ればせながら観てきました。

江戸時代に関しては幕末になるまで、日本史の教科書でも天皇や朝廷の話ってあまり出てこなかった記憶があります。でも、当然ながら江戸時代を通して朝廷は続いていた訳で、その間にも色んなことがあったはず。今回の展示では知らなかったことも一杯あり、興味をもって見ることが出来ました。幕府と喧嘩して退位(譲位)しちゃった天皇がいたいうことも、江戸中期に“幻の公武合体”があった(七代将軍家継と八十宮の婚姻。家継の死去に伴って実現せず。)なんてことは、勉強不足もあって初耳でした。

江戸時代にあっても、朝廷の権威はそれなりにあったんですね。まあ、征夷大将軍を任命するのは天皇だし、当たり前か。日本史の教科書だと、幕末になって急に天皇・朝廷が担ぎ出されたイメージがあるけど、長い歴史の中にあっての流れだというのも良くわかりました。

ということで、時節柄、ホットな話題の企画展でした。歴史の勉強をし直すきっかけとしていいかも。GW中も休まず開催されているようなので、おすすめです。
なお、展示品のいくつかは国立公文書館 デジタルアーカイブのサイトで、パソコンから閲覧することが出来ます。「桜町殿行幸図」など、見応えありますよ。

★ 美術展情報

「江戸時代の天皇」展は下記の通り、開催中。






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