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「ギュスターヴ・モロー展 ― サロメと宿命の女たち ―」 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

パナソニック汐留美術館で開催中のギュスターヴ・モロー展を観てきました。「パナソニック汐留美術館「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」 @ [広告]」で宣伝した奴ですが、早速、観に行ったのでありました。

ギュスターヴ・モローは、十九世紀フランスの画家。神話や聖書をテーマに、美しい女性たちを幻想的に描いた作品で知られています。それらの女性は“ファム・ファタル(運命の女性)”と称されるようになり、その後の絵画や小説、戯曲などに大きな影響を与え続けています。
今回の企画展では、そんな作品群に加え、最愛の母親や恋人を描いた、幻想的作品とは異なった表現の作品も多数展示されていて、モロー芸術を原点から紐解いています。

展示構成は以下の通り。
  • 第1章 モローが愛した女たち
  • 第2章 <出現>とサロメ
  • 第3章 宿命の女たち
  • 第4章 <一角獣>と純潔の乙女

モローが愛した女たち、それは母親と、恋人のアレクサンドリーヌ・デュルーだ。恋人とは婚姻関係にはなかったそうだが、いわゆる“事実婚”という形だったようだ。
彼女たちを描いた作品は、紙に鉛筆描きが多く、題材も日常の姿を描いたものだ。居眠りをしていたり、新聞を読んでいたりする何気ない様子を何枚も描いている。“家族のスナップ写真”といった距離感だ。

一転、サロメと洗礼者聖ヨハネの物語を描いた作品群は、女性の妖艶さ、狂気、イノセント、そして異教の神々を連想させる装飾群に満ちている。
洗礼者聖ヨハネを斬首させ、その首を所望したというサロメ。愛するものを独占したかったのか、自分を拒否したものへの憎悪なのか、その二つが混然としている。それは、突如、空中に“出現”したヨハネの首に対して、全く物怖じすることなく指さし、にらみ返すサロメの姿・表情に集約されている。
サロメを描いた作品は多数あり、その習作も数多く残されている。彼女の姿勢や表情は元より、背景となる人物や建造物の装飾にも非常に力を注いで描かれていることが分かる。

サロメ以外にも、聖書や神話に登場する“ファム・ファタール”を多く描いたもロー。その中には、トロイア戦争の原因ともなったヘレネや、放蕩の限りを尽くしたと言われているローマ帝国の皇妃メッサリーナ、そしてエジプトのスフィンクスや、船乗りを誘惑するとされたセイレーンなども出てくる。まさに妖艶なる女性たちのオンパレードだ。

最後のコーナーでは、純潔の乙女のみがその身体に触れることが出来ると言われる“一角獣”と、乙女たちを描いた作品が並ぶ。
だが、その乙女たちも既に妖艶さを漂わせている。また、聖母マリアを描いた作品では、百合の花の上に立つ神々しい彼女の姿と、大地に累々と積まれた殉教者たちの屍が描かれている。乙女と言えど、人を惑わし、死に至らしめる何かを持っていると言うことだろうか。

★ 感想

まさに“ファム・ファタール”のオンパレードだ。改めて彼女たちの姿に魅せられてしまった。観終わったあとは酔っ払ったような感覚になるほど。ふぅ、お腹一杯。

サロメの作品群、初めて観るものも多く、見入ってしまいました。「踊るサロメ」では、キリストも影に霞んでいて、サロメは白く浮かび上がっています。「サロメ」では、俯いて目をつむり、爪先立ちをするその姿が本当に美しい。子供の頃に憧れた、「銀河鉄道999」のメーテルを思い出させてくれたが、逆に松本零士もこのサロメの姿にインスパイアを受け、オマージュとして描いたのかも?

サロメの視線の強さ・目力は本当に恐ろしいほど。宙に浮かぶヨハネはサロメを睨んでいるのだが、サロメも真っ向から視線を返し、一歩も引くことがない。他の作品でもサロメの目は魅力的だ。救いだったのは、その視線がこちらを向いていることがなかったこと。あの目でこちらを見つめられたらそこから動けなくなってしまうだろう。

「出現」の背景に描かれた神殿。後にモロー自身によって線画の装飾が描き足されたそうだ。神の像は猿をモチーフにした神“ハヌマーン”のようにも見える。柱に描かれた紋様はアンコールワットの神殿を想起させる。
サロメはユダヤの王国の王女なのだから、神殿もユダヤ教のもののはず。でも、モローはその幻想の世界をさらに発展させ、異教の世界としたのだろうか。


見応えありました。堪能しました。久しぶりに図録も買っちゃいました。おすすめですよ。ぜひ。
フランスのギュスターヴ・モロー美術館、いつか行きたいなぁ。

★ 美術展情報

「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」は下記の通り、開催中。




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