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「近松心中物語」二組の男女の物語。そのズレが面白い。 [演劇の感想]

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★ あらすじ

飛脚屋の養子忠兵衛は、義母とともに真面目に働き、遊ぶことなどなかった。だが、ある用事で出向いた色街で遊女の梅川を見かける。いわゆる一目惚れだ。その時以来、忠兵衛は夜に店を抜け出し、梅川の元へと通い詰めるようになる。同業者で友人の弥兵衛も最初は面白がっていたが、さすがに気になりだして「遊女に本気になってはいけない」と忠告する。だが、二人の中はそんな言葉も通じないほど、深いものになっていたのだ。

そんな二人をさらに“奥へ奥へ”と進めてしまう事が起きた。梅川の身請け話だ。ある商家の金持ちが梅川を見初め、身請けの手付金として既に五十両を支払ったというのだ。
思い詰めた忠兵衛は、幼なじみの与兵衛へ金の無心に行く。与兵衛は小道具屋の婿養子となっていたのだ。与兵衛は家の金庫を壊してまでして五十両を貸してしまったのだ。
かくして、与兵衛は家を出奔するしかなくなった。だらしのない与兵衛を、お嬢さま育ちの嫁お亀は深く深く愛していた。自分が一緒にいないと夫はダメだと信じている。

そんな二組の男女。彼らをさらに窮地へと追い込む難題が持ち上がってしまった。そして、彼らを逃避行へと向かわせることになってしまうのだった。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演 : 堤真一、宮沢りえ、池田成志、小池栄子、市川猿弥、立石涼子、小野武彦、銀粉蝶、他
  • 演出 : いのうえひでのり
  • 脚本 : 秋元松代

★ 感想

蜷川幸雄の演出で有名な作品だと言うのは知っていたのですが、さして芝居に縁のない私は蜷川作品は全く観てません。なので、過去の作品・演出との比較はできません。

元々が数百年前の、ゴシップ記事のようなものですから、話の流れは単純。遊女との関係にはまってしまった男が、店の公金に手を付けてしまい、死の逃避行に追い込まれるというもの。だが、話はそれだけではなくて、もう一組の男女(夫婦)もこの事件に巻き込まれ、これまた逃亡を余儀なくされる。その二組の交差する物語と、色街の賑やかさとがそれぞれに対称を成して、深みを出そうとしている。

男女のゴタゴタと、世間のしがらみという課題は、江戸時代から多少は技術や産業が進歩した現代にあっても、普遍的な変わりのない、馴染み深いものなのでしょう。だからこそ、この作品でも、歌舞伎でも“心中もの”は人気。
その点では忠兵衛・梅川の末路は“予想通り”・“期待通り”。でも、与兵衛・お亀はちょっと違う。そこに面白みがありましたね。前者だけだと余りにステレオタイプすぎて、さすがに今さらそれだけで芝居を作ることは難しいでしょう。悲喜劇を交互に見せることによって、どちらも振幅が徐々に加速されていく感じを狙ったのかな。涙も笑いも、どっちも大きくしていこうという仕掛けなのでしょう。

小池栄子さんは、こういうエキセントリックというか、そんな役が得意ですね。

★ 公開情報


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★ 参考書「曾根崎心中 冥途の飛脚 心中天の網島」






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