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「アジェのインスピレーション ひきつがれる精神」展 森山大道も荒木経惟もアジェをリスペクト [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で「アジェのインスピレーション ひきつがれる精神」展を観てきました。

★ 展示内容

ウジェーヌ・アジェは十九世紀末から二十世紀初頭にかけてパリの街並みや人々の暮らしを写真に撮りつづけた、「近代写真の父」と呼ばれる写真家。
パリのモンパルナスで、周りに暮らす芸術家たちの製作資料として、街の写真を撮影、販売を始める。さらにはパリ市歴史図書館などから依頼を受けて、計画的にパリの街並みを撮影していった。アジェ自身は、これらの写真を芸術作品と言うよりは、生活のために撮り続けていたようだ。だが、八千枚にもおよぶ作品群は晩年、マン・レイから大きく評価されて、世に紹介される。死後、その評価はさらに高くなり、多くの写真家に影響を与えることとなった。

今回の企画展は、全て東京都写真美術館の収蔵作品からセレクトされた作品から構成されている。まずはアジェの作品群。そして、彼の作品に影響を受けた写真家たちの作品が並ぶ。展示は写真家ごとにまとめられていて、
  • ウジェーヌ・アジェ
  • ジャン=ルイ・アンリ・ル・セック
  • シャルル・マルヴィル
  • アルフレッド・スティーグリッツ
  • マン・レイ
  • ベレニス・アボット
  • ウォーカー・エヴァンズ
  • リー・フリードランダー
  • 森山大道
  • 荒木経惟
  • 深瀬昌久
  • 清野賀子
の通りに並んでいる。

アジェの作品は、パリの街角の建物だったり、その扉だったり、階段(の手すり)だったり。街並みを静かに見つめる視線がそこにある。だが、アジェの作品はそれだけではない。扉の脇に女性が立っていたり、店の前に店主とおぼしき人がいたりと、市井の人びとの生活感も感じられる作品もある。十九世紀末・二十世紀初頭のパリの街角(場末、と言ってもいいかも)の雰囲気がそのままそこに表れているのだ。

ベレニス・アボットは〈変わりゆくニューヨーク〉シリーズで、戦前・戦後のニューヨークの姿を捉えている。戦前から既に摩天楼となっていたニューヨークだが、出航する客船を見送る人々の混雑など、昔は違っていた(飛行機ではなかった)んだなとわかる。

荒木経惟の<写真論>では(文字通りの)路上の人々の姿が写し出されていたり、どこかのビル街の様子だったりと、日本の今を伝えている。「やっぱ<私情>がなくちゃね。やっぱりアッジェだね。」と彼は語っている。

森山大道は新宿や有楽町、小樽や旭川などで撮った作品が並ぶ。「アジェの写真は(中略)、ぼくにとっては、限りなく蠱惑的な存在」とのこと。

★ 感想

「アジェのパリ」」を読んだのは七年前の暮れ。アジェとは比べものにならないけど、街中の景色を撮る(Smartphonography Clubを見てくださいな)のが好きな私としては、密かにリスペクトしています。いつか、アジェの写真集を持ってパリの街を歩き回ってみたいな。

さて、そんなアジェの作品と、それに影響を受けた写真家たちの作品ということで、どんなところにアジェっぽさがあるのかとじっくりと見てしまいました。
アジェのパリ」によると、アジェが被写体として建物などと共に撮っている人びとは場末の街の人々だったりするので、かなり打ち解けて信頼関係を築いていたからこそ可能だったらしい。以前TVで見たことがあるが、荒木経惟もそんなスタイルだと思う。街中に出て、写したいと思った人たちに気軽に声をかけ、会話をしつつシャッターを切る。作品そのものだけではなく、写真の撮り方でも影響されているのだろうか。まあ、“路上生活者”を写した作品はこっそり撮ったのかな、と言う感じではあるけど。

深瀬昌久の<鴉>シリーズはどこにアジェっぽさがあるのかな。荒木経惟や森山大道はそうなのかも、と思わせてくれたけど、だんだんと難しくなっていく感じ。鴉をクローズアップした作品は、静かなアジェの視線とは違っていそうなんだけど。
この辺り、キュレーターさんがどう考えてこれらの作品をチョイスしたのか聞いてみたい。1/5, 1/19にギャラリー・トークがあるみたいだけど、平日の昼間なのでちょっと厳しそう。残念。


そうそう。一枚目にアジェの油絵が展示されてます。アジェは画家になりたかったのだとか。でも、それでは生活できなかったため、写真を撮り始めたようです。そう思って彼の絵画を見ると、どことなく寂しさを感じてしまいます。でも、画家になれなかった結果、「近代写真の父」として世に知られるようになった訳で、人生色々だなと思ってしまうのでありました。

改めてアジェの作品は良いなと思った。私も地元の下北沢をこんな風に撮りまくってみようかな。

★ 写真展情報

「アジェのインスピレーション ひきつがれる精神」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/12/2(Sat) - 2018/1/28(Sun)
  • 開館時間 : 10:00 - 18:00(木・金曜日は20:00まで, 1/2,3は11:00-18:00
  • 休館日: 月曜日, 12/29,30,31,1/1
  • 料金 : 一般600円 学生 500円 中高生・65歳以上 400円 小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト : 東京都写真美術館
  • 図録 : 1,900円(税込)
  • 参考書 「アジェのパリ






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コメント 2

JUNKO

この展覧会は行きたいですね、
by JUNKO (2017-12-26 19:32) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
おすすめです。併せて、「ユージン・スミス」展も是非。
by ぶんじん (2017-12-27 19:53) 

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