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「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展 : 背景から主役へ上り詰めた風景 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

渋谷のザ・ミュージアム | Bunkamuraで行われている「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展を観てきました。

西洋においては、キリスト教も含めて神話を主題にした絵画が古来から描かれてきた。そこでは、風景は単なる背景もしくは舞台でしかなかった。だが、人びとの暮らしが営まれている場である“風景”は、一年の流れを表した月暦図にも見られていた。また、心象風景とも言える幻想的な絵を描く、ヒエロニムス・ボスのような画家も現れ、「風景画」は次第にその地位を確立していった。
そんな風景画の誕生を追って行こうというのが本展のテーマ。展示は下記のような構成となっている。
  • 第1章 風景画の誕生
    • 第1節 聖書及び神話を主題とした作品中に現れる風景
    • 第2節 1年12ヶ月の月暦(カレンダー)画中に現れる風景
    • 時祷書と月暦画の世界
    • 第3節 牧歌を主題とした作品中に現れる風景
  • 第2章 風景画の展開
    • 第1節 自立的な風景画
    • 第2節 都市景観(ヴェドゥータ)としての風景画

神話をテーマにした絵画に描かれる風景はステレオタイプ的だ。だが、キリストや聖者たちが小さく描かれ、背景としての森や山、そして遠くに見える街・村の様子が細かく、丁寧に描かれる作品も出てくる。
神話から離れ、人びとの生活を描いた月暦画が広まっていくと、そこには暮らしの場としての風景が描かれるようになる。また、時祷書(日々の祈りのガイドブック)の挿絵も同様だ。

また、ギリシアの昔から続く牧歌をテーマにした絵画は、元々が風景を描くことを主題にしている。羊飼いたちが休息している山岳地帯はまさに牧歌的風景画広がっている。

やがて、風景はそれ自体がテーマとして確立されていく。さらには都市の景観が風景として認識されるようになり、街の広場や塔などが主題となっていった。
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★ 感想

かなり昔になるけど、ウィーンに行ったことがあります。もちろん、ウィーン美術史美術館(Kunsthistorisches Museum: Kunsthistorisches Museum Wien)にも行きました。その時のお目当てはブリューゲル、そしてヒエロニムス・ボスの作品群。その前に、建物そのものも見所満載ですが。

風景画の始まりが結局どこからなのか難しいところですが、宗教的テーマから少しずつ自由になっていき、自然の美しさや、人びとの暮らしの営みの神々しさに気づいたことの表れが「月暦画」なのかな。
展示された作品群はかなりの大作です。ウィーン美術史美術館でも普段は収蔵庫に眠っていて、美術館の学芸員でもまとまって全部を観た人は少ないのだとか。いやぁ、貴重ですな、この企画展。

六月だったかな。さくらんぼの収穫をしているところが描かれていたけど、さくらんぼってポピュラーだったんですね、この地方で。知らなかった。また、藁だか葦だかをぎゅぎゅっと潰して(?)柔らかくする機械も初めて見ました。こうやって編み物のための紐にしていたのかな。
ってな感じで、中世ヨーロッパの生活の本当に細かいところまで知ることができます、この月暦画。ブリューゲルの作品は細かいところまで見入ってしまいますが、こちらはかなり大きな作品なので見易いのもグッド?!

「ベリー侯のいとも豪華なる時祷書」は、ファクシミリ版(コピー版)が展示されています。今見てもカラフルできれいだと思えるのだから、当時、これを作らせるのは確かにお金が掛かったでしょう。いやぁ、美しい。でも、正直、読みにくい。花文字って言うんでしょうか、装飾された文字はなんて書いてあるのかさっぱり分からない。挿絵を見ている分にはきれいでいいんですが、これを読んでお祈りをしなきゃならないのは大変そう。

ということで、ウィーンに行っても観られない(倉庫にいつもは入っているので)作品群は貴重。観るべき美術展でしょう。

ちなみに、会場の外ではこんなフィギュアがお出迎えしてくれます。一緒に記念写真、いかがですか?
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★ 美術展情報

「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展は下記の通り、開催中。



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