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「アイズ」 : ホラーなんだけど、切なくもあり、ほっこりしたり、そしてやっぱり怖かったり [読書 : 読んだ本の紹介]

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★あらすじ

短編集です。

★鍵穴
幼なじみの三人組。だが、一人の友人と連絡が取れなくなった。二人は虫の知らせかその友人のアパートまで様子を見に行ったのだが。。。鍵のかかった扉。読んでも返事はない。でも、夕暮れの中でその部屋の灯りがともったのを二人は確認し、やはり友人は部屋の中にいると確信する。だが、もう一度、扉を叩こうとするのをなぜか躊躇ってしまう。何かがおかしい。躊躇いながらも鍵穴から中を覗いてみたのだが、そこで見たものは。

その後、二人は大学を卒業し、そんなことがあったことも忘れていたのだが、なぜかまたその街を訪れることになってしまったのだ。

★しるし
姉と弟、そして父と母の四人家族。なぜか母は弟ばかりを可愛がる。その扱いは理不尽だ。父は黙って何も言わない。マンションの一階まで朝刊を取りに行くのは姉弟の役割。順番のはずだが、今日も母は姉に取りに行かせる。ブツブツ文句を言われるのがいやでそれに従う姉。しかたなく新聞を取って戻ってきてみると、玄関の表札に誰が書いたのか、赤いマーカーでアルファベットが一文字、走り書きされていたのだ。
誰かのイタズラだろうと憤慨する母。だが、"イタズラ"はさらに続いた。今日もまた一文字。

そんなことが続いたとき、父が失踪した。

★タクシー
結婚生活に疲れていた。姑からは、子どもはまだかと会うたびに言われる。エリート銀行マンの夫は、彼女が外に出ることを嫌い、貞淑な妻でいることだけを望んでいる。そんな時、彼に出会った。
道でひったくりに遭った。その時、偶然そこに居合わせたカメラマンが逃げ去るオートバイの写真を撮ってくれ、そのお蔭で犯人逮捕に繋がった。その縁で、カメラマンの彼と知り合ったのだ。惹かれ合う二人。そして、夫に別れを告げて、彼女は家を出て、彼と暮らそうと決意するのに時間はかからなかった。
だが、幸せはあっという間に彼女の前から消え去ってしまったのだ。

★櫓
郊外のアパートに引っ越してきた一家。母と姉・弟の三人。町営のアパートは元々が格安の家賃だったが、さらに母子家庭のために安めの設定になっていた。これで毎月の貯金もできるようになった。ようやく落ち着いた暮らしができると母は喜んだ。
だが、そんなアパートでは奇妙な出来事が頻発するようになる。天井を無数の足音が駆け巡ったり、食器棚の中で皿が割れたり、風もないのに窓が揺れたり。その現象は一家の住む部屋だけではなかった。今やアパート全体で起きていた。そして、いつしかそのアパートは「幽霊アパート」と噂されるようになってしまう。やっと手に入れた静かな暮らしが一変してしまったのだ。マスコミもこぞって取材に来るほどの騒ぎにもなっていった。

でも、始まりと同じで、その騒ぎはある日、ぱたっと止まったのだ。

★基本データ&目次

作者鈴木光司
発行元角川書店(角川ホラー文庫)
発行年2015
ISBN9784041017951

  • 鍵穴
  • クライ・アイズ
  • 夜光虫
  • しるし
  • 杭打ち
  • タクシー
  • 見えない糸 ― あとがきにかえて

★ 感想

上に書いた「あらすじ」だけでは、ほとんどホラー作品とは思えないだろう。実際、「得体の知れないモンスターが人びとを次々と殺していく」ような話ではない。また、「リング」、「らせん」、「ループ」と続いた、ホラーだと思っていたらSFだった、というのとも違う。ちゃんと(?)心霊現象がメインになっている。
何が違うのだろうと思ったら、その心霊たちが現れる理由が恨み・辛みだけではないのだ。この世に未練を持つのは、何も恨みからばかりではない。愛する人との別れもあれば、もっと生きていたかったという単純な"動機"もある。そんな話なのだ。もちろん、恨みを持っているだろう話も出てくるが、なんというか納得感がある。そして、それがその心霊たちに感情移入さえしてしまいそうになるのだ。

なんだろう。ホラーと呼ぶよりも"怪談"と言った方がしっくりくるかも。怖いだけではない、人情ものののような切なさを呼び起こさせる感じがそう呼ぶのにふさわしい気がする。
何とも不思議な魅力の作品集だった。一編だけを読んだのではこの感覚は分からない。全部読んでみないと。

お気に入りの、乃木坂46の伊藤万理華さんが今度、この作品集を原作にした映画「アイズ」で初主演するというので読んでみた。映画の脚本は原作とどんな風に違っているのだろうか。ただ怖いだけの作品になっていたらイヤだな。「しるし」の姉役だとしたら、大人しいんだけど心の強さを持っている人、色んなものを包み込んで理解できてしまう人って感じになるのだろうか。六月公開だそうだから、今から楽しみだ。



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