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「ムーミンパパの思い出」 : 北欧の冒険家は海をめざすものらしい [読書 : 読んだ本の紹介]

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★ あらすじ

ムーミントロールがまだ小さかった頃、ムーミンパパは初めて風邪をひいた。ベッドに横たわり、もう死ぬんじゃないかと心配になる。なにせ、風邪をひいたのは初めてだったから。そこでムーミンパパは思い立つ。自分の思い出の記、冒険談を子どもたちのために書き残しておこうと。

自分の冒険を語ることは、冒険の仲間も語ること。その中でヨクサルがスナフキンのパパであることや、スニフがロッドユールの子どもであることも明らかになるだろう。

八月の夕方、ムーミンみなしごホームの階段の上に、買い物用紙袋に包まれて捨てられていたのがムーミンパパだった。ヘムレンさん(本当はフィリフヨンカ。未だ存命なので仮名とした)は厳しいしつけを良しとし、全てにおいて厳格だった。ムーミンパパはそんな生活がいやである日、ここを飛び出していった。

森を抜け、小川を渡った時、その小川の真ん中に水車が回っているのを発見する。ムーミンパパはその水車で実験をしていたフレドリクソンと出会ったのだ。そして二人はすぐに友達同士となる。
さらにはフレドリクソンの甥である、がらくた集めをする小さな動物のロッドユールにも紹介され、彼らはみんなで船を作り出す。さらにさらに、船の建造には、いや全ての仕事には手を貸さないヨクサルとも知り合いになる。こうして旅の仲間・冒険の友が揃ったのだ。

彼らの船は「海のオーケストラ」と名付けられた。完成し、いざ出航となったが、陸から水に動かすことができない。フレドリクソンは一計を案じ、竜のエドワードをたきつける。エドワードが小川に飛び込むと、一気に辺りは洪水となり、陸にあった海のオーケストラ号の周りも水びたし。やっと動き出せたのだった。もちろん、自分を利用した彼らを竜のエドワードは怒ってあとから襲いに来るのだが。。。

かくして冒険者たちの海を目指す旅、そして大海原を渡って未知の世界へと踏み込む冒険が始まったのだった。

★ データ

● 基本データ


著者トーベ・ヤンソン
発行講談社
発行年2011年(新装文庫版)
訳者小野寺百合子

● 目次

  • プロローグ
  • 序章
  • 第1章
  • 第2章
  • 第3章
  • 第4章
  • 第5章
  • 第6章
  • 第7章
  • 第8章
  • エピローグ

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★ 感想

私にとってのムーミンは「カルピスまんが劇場(カルピスこども劇場?)」版なので、最初は原作の方に違和感があった。初めて原作を読んだのはいつだったろうか。知らないうちに、原作(の翻訳)が文庫になり、さらにKindle版でも発行されていた。なんとも懐かしさに包まれ、一冊読んでみた次第。

みなしごだったムーミンパパが孤児院を脱走し、冒険の旅に出る。そのシチュエーションだけでワクワクさせられる話だ。そして、ムーミンパパは仲間たちと出会い(出会ったものたちを仲間とし)、大海原へと航海に出る。誰しもが子供の頃に憧れた世界だろう。
でも、そこからの冒険譚はかなり"ゆるい"もの。この辺りがムーミンの良さなのかな。ドラゴンは出てくるものの、すぐに騙されて逃げ果せてしまう。海の怪物たち(ニブリング)が集団で襲ってくるが、鼻を囓る程度。王様が作った"迷宮"もびっくりハウスのような子供だましの仕掛けしかない。J・R・R・トールキンの描いた「ホビットの冒険」や「指輪物語」のシリアスさとは対極にある感じ。だが、どちらの冒険も同じように惹かれてしまうのはなぜなのだろうか。
ムーミンの物語は登場人(?)物について多くを語らない。「知っているでしょ?」という感じだ。名前すら呼ばれないものがほとんど。ムーミンパパにしたって、個人名がなんなのか出てこない。そもそもムーミンという生き物自体が、「先祖はストーブの裏に住んでいた、妖精たち」らしいが、その出自は不明。だからこそ、色々と読み手が勝手に想像できるのだろう。その楽しさが、ゆるい感じの冒険譚なのに惹かれる所以か。何ものか分からない主人公が、なんなのか分からない生き物に襲われる。読み進めながら、勝手に分からないところを自然と想像で埋めて行っている感じ。それがこの物語へと読者を惹きつけるノリの役割を果たしている気がする。

ところで、年齢不詳の登場人物たちだが、ミィがスナフキンよりも年上で、叔母と甥の関係にあるとは知らなかった。昔、全巻読んだはずなのに、すっかり忘れていた。その分、新鮮な気持ちで楽しめたが。
懐かしさと、新鮮な発見と、二倍楽しめる作品だった。おすすめです。

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コメント 2

JUNKO

懐かしいお話ですね。思い出しました。
by JUNKO (2014-07-18 10:31) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
名作は色褪せないと言いますが、その通りです。懐かしくもあり、新たな発見もあり、何度でも楽しめる作品でした。
by ぶんじん (2014-07-19 19:31) 

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