So-net無料ブログ作成

山川日本史リブレット 「平清盛」 プロパガンダに消された英雄? [読書 : 読んだ本の紹介]

平清盛

平清盛
著者:上杉和彦
価格:840円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る


NHK大河ドラマの「平清盛」は視聴率が低迷しているとか。ここ数年、大河ドラマを観ていなかった私は、なぜか今シーズンは欠かさず観てます。源氏の鎌倉幕府以降に対して、学校で習った日本史でもさらりと流されていた感のある時代。馴染みがそれほどない分、新鮮な気持ちで観て楽しんでます。

とはいえ、やっぱり歴史を振り返っておかないと落ち着いてドラマも観られません。そこで、薄くてコンパクトながら、一つのテーマに関して要領よくまとめてくれているこの「山川日本史リブレット」のお世話にまたまたなることにしました。

大河ドラマでも一つのテーマになっていますが、
「驕り高ぶりによって滅びた平家」のイメージは、その後の権力者(源氏や歴代幕府統治者)たちによって作られたもの。実際の平清盛は、貴族から政治権力を武士に移した改革者だった
というのが本書の論調であり、主張です。今風に言えば、政府のプロパガンダによって革命の英雄をその地位から引きずり下ろした、と言うところでしょう。

私もその一人ですが、「平家物語」の”祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす”は平氏のイメージを日本人に決定づけたもの。本書の著者は、平氏を倒して政権を打ち立てた源氏が
  ・平氏一門を「朝敵」(天皇に逆らうもの)と位置づけた
  ・さらには「仏敵」とすることで、寺院勢力にも対立するものとした
のが、平氏==悪者のイメージを作り、そのような政治的背景の中で「平家物語」が形作られていったとしている。

このような例(前の政治勢力を悪者とすることで、自分の正当性を為政者が主張すること)は古今東西、至る所で見られる。そのため、既存の歴史資料(例えば「平家物語」)を読み解くにも注意が必要だと著者はことあるごとに指摘する。そして、”セカンドオピニオン”(どっちがファーストかは分からないが。。。)として別資料にも当たり、事の真相に迫っている。
例えば、ちょうど大河ドラマで今、描かれている保元の乱。十三世紀になってから作られたとされる「保元物語」では、源義朝(頼朝の父)の活躍が大々的に描かれているのに、平清盛に関する記述は少ない。さらには、その後の平治の乱を描いた「平治物語」でも、清盛が合戦に臨んで怖じ気づいたと描かれているとのこと。それに対して、天台座主慈円が書いた「愚管抄」では清盛の勇壮な活躍が記述されている、と言う違いがある。著者はそれらを対比して示すことで上記の”プロパガンダ説”を明らかにして行っている。

天皇・貴族の勢力と、寺院勢力(宗教勢力)との狭間でそれらの調整を取りながら自分たち武士の勢力を拡大していった。それが平清盛の生涯であったと著者はまとめている。古代の王権、宗教勢力と争い、その上に登ろうとしていた平清盛は、古代を終わらせ、中世へと日本を変えていった人だった、ということだ。残念ながらその階段の最後の一段を上って頂上に達したのは源氏だったけれど。

ということで、歴史の復習ができました。また、昔、学校で習ったのとは違う歴史解釈も新たに学ぶことができ、さらっと読める割にはとても意義深い一冊となったのでした。大河ドラマを観ている人にもそうでない人にも、歴史(解釈)の難しさとおもしろさを知ることができるおすすめの一冊です。


平清盛―「武家の世」を切り開いた政治家 (日本史リブレット人)

平清盛―「武家の世」を切り開いた政治家 (日本史リブレット人)

  • 作者: 上杉 和彦
  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 2011/05
  • メディア: 単行本



平清盛 (人物叢書)

平清盛 (人物叢書)

  • 作者: 五味 文彦
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 1999/01
  • メディア: 単行本



保元の乱・平治の乱

保元の乱・平治の乱

  • 作者: 河内 祥輔
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本



愚管抄 全現代語訳 (講談社学術文庫)

愚管抄 全現代語訳 (講談社学術文庫)

  • 作者: 慈円
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/05/11
  • メディア: 文庫



書評・レビュー ブログランキングへ



nice!(8)  コメント(2)  トラックバック(4) 
共通テーマ:

nice! 8

コメント 2

JOY

また違う視点からの解釈を知るというのは楽しいですよね(´∀`*)
おもしろそうな本です♪
by JOY (2012-06-04 22:12) 

ぶんじん

JOYさんへ:
歴史解釈って難しいですね。まあ、歴史にかかわらず、全てが主観的な判断になってしまうのでしょうが。
by ぶんじん (2012-06-05 22:30) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 4