「大英博物館 古代ギリシャ展」特別ご招待 [美術 : 美術展、写真展紹介]
恐竜博のあとは、その隣の国立西洋美術館でやっている「大英博物館 古代ギリシャ展」を観てきました。こちらはNHKさん特別ご招待。運良く、この日に二つのイベント招待に当たっていたんですよ。
古代ギリシャって紀元前一千年辺りからすでに”文明開化”していた訳で、日本なんてまだ縄文時代か弥生時代になったばかり。すごい差ですね。そんな古代ギリシャではもうオリンピック(オリンピア競技祭)が開かれ、人間の肉体美を体現すると共に、今回の展示物のようにそれを形に(彫刻に)残している。いやぁ、すごい。
さて、こちらの展示は残念ながら写真撮影はダメ。その代わり、音声ガイドが無料で貸し出されていたので、ちょっと行列ができていましたが、しっかり借りました。
この音声ガイド、会場だけじゃなくてあとからも聞けるように、mp3ファイルのダウンロードサービス・販売をしてくれるといいな。前、渋谷Bunkamuraのザ・ミュージアムで一度、やっていたけど、すぐにやめちゃいましたね。採算が合わなかったのかな。色んなところで始めればその壁もクリアできる気がするけど。
展示は大きく四部に別れて構成されています。描かれている・彫刻されている対象物別。古代ギリシャの人々が何に関心を持っていたのかよくわかりますよ。
I 神々、英雄、別世界の者たち
I-1 ギリシャの神々
I-2 英雄ヘラクレス
I-3 別世界の者たち
II 人のかたち
II-1 男性の身体美
II-2 女性の身体美
II-3 人の顔
III オリンピアとアスリート
IV 人々の暮らし
IV-1 誕生、結婚、死
IV-2 性と欲望
IV-3 個性とリアリズム
ギリシャは神々が身近な存在だったんだなと言うのがよくわかります。もちろん、スフィンクスのように半人半獣の姿をした異形の神もいますが、大半は人間そのものの姿をしているんですよ。なので(?)神と人間の間に生まれた子供も一杯いて、人並み外れた能力をもった人間として考えられていたようです。怪力のヘラクレスが代表格。彼の冒険譚を描いた彫刻やアンフォラ(素焼きの壺。オリーブ油やワインを入れたらしい)が多数展示されていました。ヘラクレスは苦難の末、神々の仲間入りをしたそうで、ギリシャ人にとっての“立身出世”物語、こういう人生を送りたいというあこがれだったのでしょう。
神々も人の姿をしているくらいだから、ギリシャの人々は人間の身体美に関して理想像をはっきりともっていました。もちろん、実際のギリシャの人々が全て美男・美女だった訳ではなく、デブデブ・ぷよぷよの人もいただろうけど、それ故に彫刻には理想の姿を表したのでしょう。
美女の代表格はアフロディーテ(ヴィーナス)。八頭身で、女性的なふくよかさもあるものの、全体的にはひきしまった体型です。
男性は筋肉美とも言うべき姿ですね。私もこんな体型になりたいものです。理想の体型は三千年の昔から変わらないと言うことかな。
そんな筋肉美をさらに追求したのがオリンピアのアスリートたちをモデルにした作品群。日本初公開の「円盤投げ」の像はその代表格。ローマ時代(二世紀)に作られたコピー作品(ローマンコピーと呼ばれている)だそうですが、それでも千八百年たっているんですからね。それがここまで完璧な姿で残っているのがすごい。そして、描写のリアリティにさらにびっくり。円盤を振り上げた腕は、浮き出た血管までもが描かれています。
オリンピア競技祭の再現映像が会場で見られるのですが、参加選手はみんな全裸。肉体を謳歌し、その美をも見せるという意味があったんでしょうかね。
そんなギリシャ人もやはり人の子。愛と性欲についても今の人々と変わらぬ“感心”を持っていたようです。芸術表現においては一定の倫理観が確立していたのか、普通の人々の直接的な性描写は(表立っては)タブーだったようです。その代わり、神々たちの戯れとして描いていたんですね。性欲たっぷりの男性は半獣の神として描かれ、たぶん娼婦や酒場の女性たちはニンフ(精霊)という設定です。
以前、観に行ったチベット仏教の秘仏たちは、性交を通じてユーホリア的な幻視を体験していた僧侶たちの想いを形にしていました。男女の神々がまさに“一体”となっているんですよ。それに対してギリシャの神々は“戯れ”レベル。セックスの高揚感が霊的な体験と感じた東洋の人々と、普段の生活の中の“娯楽”と感じていたギリシャの人々との違いなんでしょうかね。
ということで、肉体美にうっとりしっぱなしでした。おすすめです。
会期: 2011-07-05(Tue) -- 2011-09-25(Sun)
開館時間: 09:30 - 17:30 (金曜日は20時まで開館)
※入館は閉館の30分前まで
休館日: 月曜日
[ただし、7/18, 8/15, 9/19は開館、7/19(Tue), 9/20(Tue)は休館]
観覧料: 一般1,500円
特設サイトはこちら。
おまけ写真。国立西洋美術館は屋外にも彫刻が飾られていて、タダで見ることができます。
でも、最近の猛暑は厳しすぎ。地獄の門の向こう側が地獄のはずなのに、こっち側も東京砂漠という地獄のような暑さなのでありました。
1665 古代ギリシアの歴史 ポリスの興隆と衰退 (学術文庫)
- 作者: 伊藤 貞夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/07/10
- メディア: 文庫
訴えられた遊女ネアイラ―古代ギリシャのスキャンダラスな裁判騒動
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- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
ぶんじんさん観に行かれてるとおもっていたんですよ!
やっぱりぶんじんさんの解説はわかりやすい!
最後に触れた東洋と西洋の考え方の違い、興味がありますよね。
神話が本当であって欲しいと願うばかり。苦笑。
by カエル (2011-09-17 09:23)
カエルさんへ:
ギリシャ人と語り合ってみたいですねぇ。彼らが何を考えていたのかもっともっと知りたいなと思いましたよ。
by ぶんじん (2011-09-19 22:36)