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「こどもの情景-戦争とこどもたち」友の会特別内覧会 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館友の会イベントに参加してきました。今日(7/10)でもう終了となってしまう企画展なんですが、今年度の写美コレクション展(収蔵品からテーマに沿って選んだ作品展)第一弾の「こどもの情景-戦争とこどもたち」の、企画者(キュレーター)による解説付き内覧会です。

毎年、年間テーマを決めて、何回かに分けて行われる企画展で、今年は「こどもの情景」がテーマ。その一回目は戦争とこどもたちとの関わりを写し取った作品群。そして、今回の企画をし、また内覧会の解説もしていただいたのは学芸員の鈴木さん。年代別に四つのパートでまとめてみたとのこと。震災を経験し、大きな出来事を色々な場所で共有すること、色々な目で見てみることに新たな意味があるだろうと感じられ、そのような構成にしたんだそうです。
といいつつ、最初の一枚はユージン・スミスの「楽園への歩み」。沖縄戦で従軍カメラマンとして取材中に、爆撃によって頭部に重症を負う。帰国して療養中にこの一枚を撮ったのだそうです。個人的な意味でも、そして自在全体としても未来に歩みだそうという気持ちを、幼い子供たちのちょっと危なげな足取りで表現したんでしょうね。今回の企画テーマを象徴させたのでしょう。

さて、四十年代。戦争中は機材確保のため、カメラマンであり続けるための手段としてプロパガンダ写真を撮るしかなかった木村伊兵衛や、土門拳の作品が並びます。
海の向こうでは米国日系人収容所の様子を、自分も強制収容されながら撮り続けた宮武東洋が写し撮っていた。
記録として、軍や文部省の仕事として子供たちを撮ったものもある。長崎被爆翌日から現地の凄惨な様子を撮り続けた山端庸介の精神力はすごい。
戦争の最中、それぞれ立場は違えど、苦労のほどは計り知れません。彼らの作品に登場する子供たちも呆然とした表情をしているのが多いかな。
戦後になると林忠彦や影山光洋は子供や作家、自分の家族を撮る。激動の時代が過ぎ、日々の生活の大事さを噛みしめるかのような眼差しだ。もちろん、最愛の息子の死を看取ることになった影山のように、個人的な悲しみはなくなることはないのだが。

五十年代、六十年代になると、土門拳は戦中の反省からプロパガンダの対極とも言えるリアリズム運動を展開する。そこにあるものをそのまま伝えようというものだ。子供たちの何気ない表情が楽しくもあり、また痛々しくもあり、まさにそこにいて暮らしている子供の姿をそのまま映している感じだ。
でも、この時代にも戦争は世界の各地で起きている。その代表がベトナム戦争。岡村昭彦はLIFEにベトナム戦争の写真を掲載し、アメリカにとって“都合の悪い真実”を明らかにしていった。その業績に対し、ロバート・キャパ賞が贈られたそうだ。さらに、ピューリッツァー賞をとったのは沢田教一。爆撃から逃れるために必死で川を渡る親子。子供の表情は凍り付いたようになっている。恐怖に引きつっているのだろうか。

七十年代、八十年代は過去の事実を検証していった時代。土田ヒロミのヒロシマ三部作は、被爆者を一人一人取材して、被爆時の様子を明らかにしたり、今の姿を写真に撮っている。遺品を撮ったものは、白いバックで淡々とした”商品カタログ”のような写し方。遺品そのものに語らせることを意識したとのこと。胸の名札が“元の”持ち主を示しているシャツはぼろぼろだ。学校に登校する途中だったろう本人(遺体)は結局探し出せず、このシャツだけが樹に絡みついていたのだそうだ。
中村悟郎の撮ったベトナム戦争は後遺症に悩む人々、子供たちの姿。ベトナム人はもちろん、アメリカの兵士も帰国後に発症したり、子供に障害が出て苦しんでいる。子供に罪はないのに、とはよく使われるフレーズだが、そう言うしかないものがある。

どんな時代でも、笑顔を見せてくれる子供たちがいて、それを作品に残している写真家もいる。でも、多くの子供たちはなすすべもなく苦しみに耐えているだけだ。まさに今、この時期に見ておくべき作品群と言える。残念ながらもう終わってしまう企画展だが、関連する写真集は四階の図書室で閲覧できるとのこと。機会があれば私も観てみたいと思う。考えさせられた、今回もいい内覧会だった。

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はくちゃん

こんばんは
梅雨が明けたら一段と暑くなりましたね

by はくちゃん (2011-07-10 23:46) 

ぶんじん

はくちゃんさんへ:
毎日、暑くて参ります。
by ぶんじん (2011-07-14 22:02) 

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