「日本のプチファーブル 熊田千佳慕展」 [美術 : 美術展、写真展紹介]
先日観た「ブリューゲルの版画展」も、絵の細かさに観るのが疲れてしまったが、今回もそれ以上に繊細な作品ばかりでびっくり。しかも、七十歳を超えてからの作品だというのにさらにびっくり。いやぁ、すごいじいちゃんがいたものだ。
ということで、今回もアスパラクラブのご招待に当たり、奥さんと二人で横浜高島屋まで出かけて観てきました。今回の美術展で初めて熊田千佳慕のことを知ったのですが、有名な人だったんですね。うむ、勉強不足でした。略歴によると熊田千佳慕は、美術学校を出てからデザイン会社に勤め、児童書の挿絵で認められ、60歳の頃から『ファーブル昆虫記』の虫たちを描くことをライフワークにし、この絵が1981年と1983年にボローニャ国際絵本原画展で入選したのだそうだ。それ以来、日本のプチファーブルと呼ばれるようになったとのこと。そして、本展準備中の去年八月に他界された。
今回の美術展はそんな熊田千佳慕の世界を概観する、200点に上る作品を展示したものとなっている。構成は以下の通りで、描かれた対象ごとに分けられている。
・chikabo植物園
・chikabo動物園
・chikabo昆虫館
・chikaboファンタジー館
・chikabo絵本館
そして、熊田千佳慕の生い立ちや愛用品などを紹介したコーナーも設けられていた。
子供の頃に読んだ「ファーブル昆虫記」に憧れていただけあって、彼の描く昆虫は細密なだけではなく、どことなく人柄や愛情のようなものが感じられるのだ。バッタを捕まえて食べるカマキリや、糞に群がるスカラベ(フンコロガシ)など実写であればちょっと遠慮したくなるような場面でも、なぜか素直に見られる。そんな不思議な魅力を持っているのだ。よくよく筆遣いなどを見ると、細かい毛を一本ずつ丁寧に描いているところもあれば、墨絵のように一筆でさっと流しているところもある。単なる写実ではないのだ。やはりそこには彼の表現の仕方が、自然を見る解釈の仕方が表れているのだろう。
そんな彼の心の中がそのまま絵の中に描かれただろうシリーズが、「chikaboファンタジー館」のコーナーに展示されていた、妖精が登場する作品たち。その中では虫や草花と戯れる妖精が描かれ、昆虫も擬人化されてポーズを取っている。ただの写実では飽き足らないその想いがここに溢れ出たかのようだ。さすがは童話の挿絵作家でも名を成した人だ。その世界観には素直に引き込まれてしまう。
どの作品もよかったのですが、気に入ったのは夜の空を飛ぶ蛾の絵かな。きらめく星々をバックに、ちょっと妖しげに蛾が飛ぶその一枚はファンタジーと言ってもいいくらい。でも、蛾の習性をちゃんと表しているし、昆虫記を描いた中の一枚になっている。なんか気に入っちゃいました。そう、そして久しぶりに図録(1,900円)を買っちゃいましたよ。
ということで楽しい美術展でした。これは一見の価値ありです。おすすめ!
会場 横浜高島屋 8Fギャラリー
会期 2010-08-04(Wed) - 08-16(Mon)
入場料 一般800円、高大生600円、中学生以下無料
今後の巡回先:大阪 心斎橋大丸(2010-09-15 - 27) 、 群馬 高崎市美術館(2010-11-14 - 12-26)
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熊田千佳さんの緻密な昆虫の絵 大好きです
by Ranger (2010-08-10 13:30)
Rangerさんへ:
クマチカさん、匍匐前進のような姿勢で何時間も昆虫の観察をしていたそうです。Rangerさんとなんか“つながっている”気が。。。
by ぶんじん (2010-08-10 21:58)