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「ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムでやっている「ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界」展に行ってきました。
いやぁ、疲れました。人気があって混んでいたのもそうですが、なにせあのブリューゲルの作品ですから、やたらと細かい、細かい。どうしても一枚一枚、睨むように観ることに。いつもの1.5倍は時間がかかったのじゃないでしょうか。
私のブリューゲルとの出会いは、たぶん学校の美術の教科書だと思います。が、はまったのは中野孝次著「ブリューゲルへの旅」を読んでからでしょうか。それ以来、気になる存在で、ウィーンに旅行したときには美術史美術館で数々の作品、特に「雪の中の狩人」にもご対面したりもしました。あと、森洋子著「ブリューゲルの諺の世界 民衆文化を語る」を読んでさらにはまっちゃいました。ブリューゲルの絵の中には当時の諺がこれでもかというほど盛り込まれているんだと知り、描かれている人物一人一人が気になるようになっちゃって。そうそう、今回も諺シリーズ(?)の「大きな魚は小さな魚を食う」が出てましたよ。

と、前置きはこれくらいにして、今回の話をしましょう。展示構成は以下の通りです。

 プロローグ
 第1章 雄大なアルプス山脈の賛美と近郊の田園風景への親近感
 第2章 聖書の主題や宗教的な寓意を描く
 第3章 武装帆船やガレー船の驚くべき表現力
 第4章 人間観察と道徳教訓の世界
 第5章 諺を通じて知る「青いマント」の世界
 第6章 民衆文化や民話への共感
 第7章 四季や月暦表現で綴る市民の祝祭や農民の労働
 エピローグ

「第2章 聖書の主題や宗教的な寓意を描く」では七つの原罪シリーズや七つの徳目シリーズがやはり目を引きます。貪欲や傲慢、怠惰などの罪を絵画として表す訳ですが、その擬人化というか喩えがどれも楽しいんですよ。大食では豚君たちがもぐもぐやっていて、食べ過ぎた人は橋の上からゲーゲーやってます。怠惰はロバ君が主役。主婦とおぼしき女性がロバと一緒に昼寝してました。車輪のついたベッドで寝ながら移動している人なんてのも描かれていたなぁ。分かり易いですね。これではいけないぞ、と思ってしまう。

「第3章 武装帆船やガレー船の驚くべき表現力」のシリーズは初めて知ったかも。戦艦の絵なのですが、ブリューゲルらしく詳細まで描いています。戦艦の売買の際にカタログとして使ったんですかね。それとも軍事機密をスパイしていた?いろいろと想像して楽しめちゃいますよ。

「第5章 諺を通じて知る「青いマント」の世界」は森洋子著「ブリューゲルの諺の世界」で読み知っていた世界が広がっていました。青いマントとは裏切りや不義を象徴しているそうで、奥さんが旦那さんとおぼしき人に青いマントを掛けている姿が描かれた作品が今回も展示されているのですが、これは「その奥さんは浮気してますよ!」ということを表しているのだそうです。
大きな魚は小さな魚を食う、という絵は分かり易いですね。こちらは弱肉強食の象徴。大きくは、権力者による圧政を指摘しているのでしょう。

と言った具合に、一枚一枚に、いや、一枚の中に山と描かれた人々の一人ずつにこんな風に意味が込められている。なので観ていくのに時間がかかっちゃうんですよ。でも、やっぱりおもしろかった!人の愚かさや、愛すべきいい加減さはブリューゲルの時代も現代も変わらないなぁとつくづく思いました。おすすめですよ。ぜひ!

会期 2010-07-17(Sat) - 08-29(Sun) 開催期間中無休
開館時間 10:00-19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
入館料 一般 1,400円






ブリューゲルの諺の世界―民衆文化を語る (明治大学人文科学研究所叢書)

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ブリューゲル探訪―民衆文化のエネルギー

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  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本



ブリューゲルの「子供の遊戯」―遊びの図像学

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  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 1989/03
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ブリューゲルへの旅 (文春文庫)

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  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 文庫



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コメント 4

TaekoLovesParis

ウィーン美術史美術館のブリューゲルコーナーは充実していましたねー。
雪の中の旅人や婚礼の絵は、写真で何回も見ていたけど、実物を見れて
感激でした。
どの絵にも教訓があって、かなり刺激たっぷりの版画なようですね。
by TaekoLovesParis (2010-08-08 09:51) 

ぶんじん

TaekoLovesParisさんへ:
美術史美術館、建物自体が美術品ですね。
ブリューゲルの作品、教訓くさいところがないのが好きです。ブラックユーモアたっぷりで、とても現代的だなぁと。
by ぶんじん (2010-08-10 21:55) 

カエル

町中のポスターを見て立ち止まったやつだ!
おもしろそうですよね。
by カエル (2010-08-12 09:29) 

ぶんじん

カエルさんへ:
おもしろいです!森洋子さんの著作を読んで予習していくとおもしろさは倍増すると思います。ああ、これがそれか!となること請け合い。
by ぶんじん (2010-08-13 21:25) 

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