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「野町和嘉写真展「聖地巡礼」」 / 「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」展 / 「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 Ⅱ.中部・近畿・中国地方編」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で三つの写真展を観てきました。

★野町和嘉写真展「聖地巡礼」
インド、アフリカのエチオピア、サウジアラビア、南米ペルーと、各地で巡礼者の姿を追った作品展だ。人々の持つパワーが宗教という媒体によって一つに結集し、ものすごい流れを作っている。そんなものがどの作品からもあふれ出ていて、圧倒されてしまった。
インドでは100kmも裸足で歩いて神様(シバ神)に水を捧げる巡礼を追っていた。その巡礼の人の流れが延々と続く。さらには、ゴールである神殿では狭い入り口に満員電車以上に密集して人々が殺到している。せっかく運んだ聖なる水をこぼしてしまいそうだ。そんな姿をとらえた作品は力強さに溢れている。
また、水葬が行われている川では、その様子を静かに伝えている。岸に打ち上げられた、水葬後の遺体を野良犬が食べている姿も、そこでは珍しくないとのこと。人も犬も牛も、生きているものは輪廻転生、つながっているからなのだと。作品の中にはそんな場面も出てくる。IT企業のインドしか知らない私には驚きの連続。思わず見入ってしまいました。
■会 期:2009年3月28日(土)→5月17日(日)
■会 場:地下1階展示室
■料 金:一般 800(640)円



★「やなぎみわ マイ・グランドマザーズ」展
なんなんでしょう。一枚の写真なのに、一本の映画や一冊の本のような物語性がそこには込められてます。いろんなおばあちゃんが出てくるんですが、そこまでやるの?というくらいの舞台を作り、特殊メイクまでして芝居(?)をしているんですよ。五十年後の自分がどんなばあちゃんになっているかを想像しての作品作りをしているのだそうですが、その創作力に驚き。一枚撮るのにどれだけの時間をかけているのだろうか、と思わずにはいられません。
作品には、そのおばあちゃんの名前が題名としてついています。そして、それぞれの物語がキャプションとして書かれています。いつもだとそんなに一生懸命キャプションを読むことはないんですが、今回ばかりはじっくり読んでしまいました。そして作品を観て「うーむ、なるほど~!」と唸ること幾たびか。”AI”と題された作品は占い師のばあちゃんが主役。お客は小さな女の子達。そっと手を出して手相を観てもらおうとしている女の子の表情は不安そう。なのにばあちゃんは退屈そうな顔で少女を見ている。ばあちゃんは手相を見ているのではなく、自分の後継者となる才能を持った少女を見つけ出そうとしているのだ、そうだ。なるほどねぇ。確かにそんな表情をしていますよ、このばあちゃん。うーむ、なるほど~!
■会 期:2009年3月7日(土)→5月10日(日)
■会 場:2階展示室
■料 金:一般 800(640)円



★「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 Ⅱ.中部・近畿・中国地方編」展
幕末の頃、日本にもたらされた写真技術。それがどのように日本人に受け入れられ、文化の一部となっていったのかを探ろうという企画展の二回目。今回はその名の通り、中部・近畿・中国地方に残っていた当時の写真を集めての展示だった。地元の美術館・郷土資料館などに収蔵されている作品が多いので、東京で公開されるのは初めてのものが一杯とのこと。
写真は初め、肖像画の代わりとしてとらえられていた。が、徐々に芸術性を帯びていったり、逆に記録として実利的にも使われるようになっていった。そんな流れがわかる展示になっていた。おもしろかったのは写真の裏側や縁。写真屋というか撮影をした写真家の名前が書かれているのだ。誰それが撮った、というのを誇らしげに書いてあるところに歴史を感じます。
京都の名所を写した写真(集)もおもしろかったですね。清水寺や本願寺は今も昔も変わらないのに、周りの景色は全く違っている。そうそう、金閣寺は当時はずいぶんとみすぼらしい風体で、金箔なんてかけらも付いていなかったんだなぁと言うのがよくわかりました。なるほどねぇ。百年前の風景がこうやって今も見られるというのは、楽しいこと、驚くことですね。写真ってやっぱりいいものですねぇ。
■会 期:2009年3月7日(土)→5月10日(日)
■会 場:3階展示室
■料 金:一般 500(400)円


ということで、三つの写真展を一気に観て回ったのでした。ふぅ、疲れた。で、歩き疲れたあとのお楽しみは恵比寿麦酒記念館。今日も飲み比べセットを頼んでしまいました。おいしゅうございました。



地球巡礼

地球巡礼

  • 作者: 野町 和嘉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/10/22
  • メディア: 大型本



名作写真館―小学館アーカイヴスベスト・ライブラリー (19) (小学館アーカイヴスベスト・ライブラリー)

名作写真館―小学館アーカイヴスベスト・ライブラリー (19) (小学館アーカイヴスベスト・ライブラリー)

  • 作者: 野町 和嘉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 大型本



やなぎみわ―マイ・グランドマザーズ

やなぎみわ―マイ・グランドマザーズ

  • 作者: 東京都写真美術館
  • 出版社/メーカー: 淡交社
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 大型本


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コメント 6

HEIJI

あ〜、これはちょっと良さそうな感じですね。
久し振りに東京都写真美術館行ってこようかな。
今週末の山を越えればちょっと時間できるし・・・
by HEIJI (2009-04-19 23:05) 

kimiko

「聖地巡礼」 興味深い写真展です。
インドたった1週間いただけでも人々のもつパワーのようなものを感じる国でした。
だいぶ前、「ベトナム写真展」に行ったのが最後かも。。
by kimiko (2009-04-20 07:10) 

リカ

「水葬」って…今でもそんな風習があるんですね(汗)
宗教ってホントに分からないっすわ~
麦酒飲み比べセットが気になりました^^
恵比寿ってことはエビスビール?
あぁ早くアルコール解禁したい~!
by リカ (2009-04-20 10:56) 

ぶんじん

HEIJIさんへ:
どうぞどうぞ。見応えありますよ!

kimikoさんへ:
インド、あのパワーは行ってみないとわからないですよね。

リカさんへ:
そう、エビスは黒生。あとペールエールとヴァイス(小麦の奴)と普通の(?)ドラフトビールかな。五百円で楽しめますよ!
by ぶんじん (2009-04-20 22:56) 

カエル

聖地巡礼に興味あり!
by カエル (2009-04-22 11:14) 

ぶんじん

カエルさんへ:
見応えありますよ!おすすめです。
by ぶんじん (2009-04-22 21:29) 

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