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「SILK(シルク)」を試写会で観てきました [映画の感想]


「SILK(シルク)」を観てきました。
フランスが主な舞台(の一つ)なのに、なぜかイタリア・カナダ・日本の合作映画。そして主人公とヒロインはブロードウェイスター。なんとも国際色豊かな映画ですね。

なんていうか、一言で言うと観ていて心落ち着き、心地よいたゆたげさを感じさせてくれる作品でした。音楽を担当しているのが坂本龍一で、そのゆったりとした曲が第一の理由でしょう。そして、役者のせりふや主人公が独白する語りも落ち着いたテンポ。さらにはフランスや日本の田舎の風景が静かな映像として目を和ませてくれます。これらが一体となって感じられる、それがこの映画の魅力なのでしょう。

十九世紀のフランスの田舎町。主人公は町長(村長?)の息子。兵役中の休暇で里帰りした際に、小学校の女教師と恋に落ちて結婚する。そこまでは平凡な人生だった。が、町で絹糸の製紙工場を起こした、ちょっと山師的な実業家に見込まれ、仕事を依頼される。ヨーロッパ中の蚕が伝染病にかかってしまったので、日本まで行って、病気に感染していない卵を買い付けてくるようにと。当時の日本は幕末のころで、まだ鎖国は続いていた。でも、密貿易のルートがあるとのこと。彼は新婚の奥さんを家に残し、はるか極東の地を目指して旅だった。
苦労の長旅の末にたどり着いた日本。そこはまさに未知の世界。言葉も全く通じない中、製紙工場の社長に渡された日本語の紹介状を頼りになんとか目的地の村に着く。その村は役所広司演じる頭領が治めていた。その頭領が彼に興味を持ち、自分の家に招く。主人公の彼はそこで運命の出会いをしてしまうのだ。謎の少女は全く話をしない。少女は彼にお茶を入れてくれるが、彼が一口飲むと湯呑をとり、自分で飲んでしまう。これでもう、彼の心はその少女に強く惹かれてしまったのだ、国には新婚の奥さんがいるというのに…。夜、彼が風呂に入っていると少女が静かに寄ってくる。だが、謎の手紙を黙って渡しただけで立ち去る。手紙は日本語で書かれていて、もちろん、彼には読むことができない。少女は謎に包まれたままだ。
なんとか病気のない蚕の卵を国に持ち帰ることができた。ヨーロッパでは絹が高騰していたのだろう、彼は一気に大金持ちになる。奥さんにはもちろん、日本での話はしていない。代わりに、村の外れに家を買い、家の横の林に「君の庭を作ろう」と提案する。そう、彼は奥さんのことを真に愛しているのだ。経済的にも恵まれ、幸せな暮らしが始まる。だが、謎の少女からもらった手紙が気になってしょうがない。そして、製紙工場の実業家に日本語の紹介状を書いた女性に翻訳を頼むためパリにまで出かけてしまうのだ。手紙には「戻ってきてくれないと私は死にます」と書かれていた。彼の心は大きく揺れる。奥さんへの愛情はもちろん、偽りではない。奥さんも彼のことを愛してくれている。奥さんはそんな夫の気持ちに感づき、悩むが、彼への愛のために黙って彼を見つめるだけだ。
そして、彼はふたたび日本をめざして旅立ってしまうのだった。

悲劇ではある。ラストの展開は、ゆったりとしたテンポはそのままなのだがぐっと心を揺さぶられるものがある。彼女の、夫への愛の印であるユリの花が、彼女の庭一面に咲いている。そんな象徴的なシーンが目の奥に残る感じだ。原作者はイタリアの人。この原作も、イタリアだけではなくて世界中で翻訳されベストセラーになっているそうだ。恋愛小説を読むことはほとんどないが、ちょっと読んでみようかなという気になった。

ということで、ポップコーンを食べながら観る映画ではない。しばし日常の生活を忘れて作品に浸る。そんな映画だった。おすすめです。


絹 (白水Uブックス 169 海外小説の誘惑)

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コメント 4

mamire

ぶんじんさんの解説を読んでいると見たくなりますね。
でも、あんまり評判はよくないの?
外国の俳優さんは、もっとだれが見ても素敵な人だったら・・・・
初めてあった人にこんなに惹かれてしまうなんてのは、年をとるとわからなくなってしまいます。
by mamire (2008-01-17 14:09) 

ぶんじん

mamireさんへ:
特に女性には不人気なようで。主人公が身勝手すぎるのが気に入らないのかな。でも、そんな主人公に共感してしまった私は全国の女性を敵に回してしまった?!
by ぶんじん (2008-01-18 23:23) 

Cartouche

はじめまして。というかTBでお世話になってます。
良かった!!初めてです同じ意見は!!
そうなんですよね。これはじっと耐え忍ぶ妻も主人公。
知っていたのに気づかないふり。
でもラストのお庭で色々なことが明らかになりました。
あ~なんて素敵な映画なんでしょう。
いいですよ。全国の女性を敵に回しても(笑)
by Cartouche (2008-01-20 00:46) 

ぶんじん

Cartoucheさんへ:
同士が存在したことをうれしく思います(笑)。
ラストのシーン、百合の花がきれいでしたね。
by ぶんじん (2008-01-20 10:31) 

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