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「光と影 はじめに、ひかりが、あった」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

恵比寿の東京都写真美術館で写真展「光と影 はじめに、ひかりが、あった」を観てきた。
写美収蔵作品から厳選し、写真の原点とも言える光と影とを強く感じられるものを集めた作品展だ。また、同時に写真技術の歴史をも垣間見せてくれる。さらには、光と影の表現として美術としての写真表現の多様性もそこには表れている。なんとも盛りだくさんの展示だ。
ネガとしてフィルムに写しとった映像をポジとしてプリントし、見たものを再現する。これの元祖がカロタイプというそうだ。それを発明し、写真集まで作っちゃったのがウイリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットさん。「画家の手が加わっていない絵」というような主旨の説明を彼はしていたようだが、なるほどその通りだ。光は人の手によることなくネガフィルムに焼き付き、ポジプリントに写し取られるのだから。彼は家や農家の小屋のような風景だけでなく、テーブルに並べられた花器や果物などを撮ることによって、画家の描く静物画へ”宣戦布告”しているようだ。さらには細かな模様のレース編みを撮ってみたり、標本のような感じで植物の枝葉をも写している。手芸や押し花だって写真はこなせるんだと言っているのかもしれない。写真の黎明期、既にその表現の可能性は飛躍的に広がっていた訳だ。
さらに時代とともに写真は光と影とを自由自在に操っていく。マン・レイのレイヨグラフ、ソラリゼーション、そして瑛九らのフォトグラムなどが現れる。ヘリオグラフィーなんてのも紹介されていた。これは、長時間露光で太陽を撮るというもの。太陽の光が太い筋となって写真の上を横切る。水平線と平行に引かれた光の太線。雲の向こうでちょっと滲んだ太線。こんな表現方法もあるのね。
われらが(?)森山大道の作品も展示されていた。粗いモノクロの絵は、他の歴史的作品に囲まれても存在感を主張していた。薄汚れた革靴やボコボコにへこんだゴミ箱。光と影の世界はそんなところにも満ちている。
あと、これは写真なのかそれともポップアートなのか良くわからなかったのが石元泰博の作品。多重露光によって風景を重ねていくのだが、色使いがすごい。ピンクやオレンジの建物が重なり合っているとそこには現実感は無く、色と模様へと変容している。これも写真なのね。
さらにさらに、いつか真似してみたいなぁと思ったのが伊藤義彦の作品。一枚ずつは単なるハーフサイズの写真。ところがフィルム一本分を適当なこま数で切って並べていくと、そこには全く別の作品が現れるのだ。アニメーションとも違う。でも、動きも感じられ、なるほどこれは面白い!とうなってしまった。ここで見せられないのが残念だ。この作品をじっくりと観てみたいと思って、金欠にもかかわらず図録を買ってしまったほど。いやぁ、楽しい作品だ。
てなわけで、写真ってほんとに奥が深くて、そしてこんなにも表現力豊かなのだと再認識。ちょいと真似っこして遊んでみたくなりました。



■会 期 :2006/12/23 - 2007/02/18
■休館日:毎週月曜日
■料 金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円


世界芸術写真史 1839‐1989―W.H.フォックス・タルボットからシンディー・シャーマンまで

世界芸術写真史 1839‐1989―W.H.フォックス・タルボットからシンディー・シャーマンまで

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: リブロポート
  • 発売日: 1990/03
  • メディア: 大型本


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コメント 6

野うさぎ

是非 ぶんじんさんの光と影 見たいです。待ってマ~ス。
by 野うさぎ (2007-02-05 22:58) 

東雲

ぶんじんさん おはようございます!
『光と影・・・』
チョット 興味があります。行ってみたい気がするのだけれど・・・。
光と影って 人生にも そして人にも それは存在しますよね。
by 東雲 (2007-02-06 05:22) 

JOY

あぁいいなぁ・・・。今度東京に行ったら、写真美術館行きたいです☆
by JOY (2007-02-06 21:51) 

ぶんじん

野うさぎさんへ:
早速のっけてみました。見てやってくださいな。

東雲さんへ:
光があるからこそものが見えるし、光があれば影もある。写真はその真理を改めて教えてくれますね。時には人の影の部分まで写しちゃったりもするし。

JOYさんへ:
ぜひ、どうぞ! 観終わったあとはカフェでお茶もできますし。そして、なぜかベルギー・ビールがそろっているんですよ、あそこのカフェ。あなどれません。

Rangerさん、komaさん、u-kさんへ:
niceをどうも!
by ぶんじん (2007-02-07 19:52) 

吉田さん

う・・・いけるかなぁ~?
by 吉田さん (2007-02-08 22:50) 

ぶんじん

吉田さんへ:
この週末の連休にいかがですか。今なら「日本の新進作家 vol.5-地球(ほし)の旅人-」展と「新規コレクション展「ようこそ。写真美術館へ!!」」も観られますよ!しかも新規コレクション展は誰でも無料です。
by ぶんじん (2007-02-09 20:40) 

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