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「線の造形、線の空間 飯塚琅玕齋と田辺竹雲斎でめぐる竹工芸」展 海外で先に見つかっちゃった造形美 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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智美術館 - Musee Tomoで開催中の「線の造形、線の空間 飯塚琅玕齋と田辺竹雲斎でめぐる竹工芸」展の、ブロガー特別鑑賞会に参加してきました。
例によって、特別な許可をいただいて写真撮影しています。通常は撮影NGです。

★ 展示内容

公式サイトの説明によると、
竹工が職人的な技芸を超えて、個人の表現として追求されるようになるのは大正、昭和期のことです。本展では、その時期に東京を拠点に活躍した飯塚琅玕齋(1890‐1958)と大阪・堺を拠点に活躍した初代田辺竹雲斎(1877‐1937)を中心に、琅玕齋の兄・二代飯塚鳳齋(1872‐1934)、琅玕齋の息子・飯塚小玕齋(1919‐2004)、そして二代竹雲斎(1910‐2000)、三代竹雲斎(1941‐2014)、四代竹雲斎(1973-)の作品を展示します。
  二つの家系、作家7人の作品120点余によって、大正、昭和、そして現在までの竹工芸作品を見渡し、各作家が既存の技法や前の世代の制作を革新させてきた「線」による立体造形の魅力をご紹介します。
とのこと。

入館してすぐに、巨大オブジェが登場。智美術館 - Musee Tomoのシンボル的存在であるガラス細工の螺旋階段の真ん中に竹で編まれたトルネード(?)がどんと聳えています。こちらは四代 田辺竹雲斎作「Connection - 過去、現在そして未来へ」という作品。学芸員さんと比べると、その大きさが良くわかりますね。
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冒頭に「通常は撮影NG」と書きましたが、この作品は例外。記念写真をどうぞ。
とは言え、設置場所の問題もあって全景を一枚に収めるのは不可能。上から見たり、下から見上げてみたり、根本に近寄ったり、インスタ映えする(?)ポジションを見つけてくださいな。
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展示は作家さん別に構成されています。ただ、材質が竹ということで長期間の展示は厳しいのと(智美術館 - Musee Tomoでは作品をガラスケースに入れることなく、オープンスペースに展示しているのが特徴(ウリ!))、作品数が多いこともあり、展示替えが二度、行われます。全部見るには三回通わないとダメですね。
展示順・構成は以下の通り。
  • 二代 飯塚鳳齋
  • 飯塚琅玕齋
  • 飯塚小玕齋
  • 初代 田辺竹雲斎
  • 二代 田辺竹雲斎
  • 三代 田辺竹雲斎
  • 四代 田辺竹雲斎


飯塚琅玕齋の「花籠」。確かに、これならば花を飾るのに使えるでしょう。でも、見ての通りの何とも言えない傾き加減。さらには、下の方は粗めに編んであり、上部は細かな直線。なるほど、ただの道具ではなく、造形美ってやつがもう分かります。
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竹工芸の鑑賞ポイントというか、こんな点に注目すると面白そうというのがいくつかありそうです。
一つは編み方。粗かったり、細かかったり、一本飛ばしで編んでみたりと、バリエーション豊か。その組み合わせも面白いです。

もう一つのポイントは取っ手。そして取っ手を本体に取り付けている編み込み部分。本体は主に“竹ひご”として加工した部品を編み上げていますが、取っ手には素材(竹)そのものの形を活かしたものが多いようです。それが雲のようだったり、生き物の身体のようだったり、不思議な造型を見せてくれるんです。
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一本の竹の“一体成型”で作り上げられた作品。取っ手部分は見ての通り竹そのもの。そして、取っ手を繋ぐ部分をよく見ると本体と繋がっています。そう、一本の竹なのです。あら、面白い。
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本体と同じようでいて、編み方が異なり、捻れた取っ手。
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色合いも色々。
煤竹ってのがあるのは知ってました。古民家の建材として使われ、囲炉裏から出る煙で煤が付いた竹。それを再利用したもの。リサイクルって意味でも面白いし、風合いが渋いのもグッド。
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さらには古矢竹ってのを今回、初めて知りました。弓矢の矢に使われていた竹を再利用したもの。まっすぐな素材なので、使い易いようです。色合いもいい具合に古色を帯びているので竹工芸の素材として用いられるのだとか。
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熱を加えることによってかなり自由に形を作ることができるのも竹素材の良さ。かなり自由な造型が可能。それらを組み合わせることによってこんな作品もできてしまいます。
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曲線模様も可能だし、
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直線の組み合わせもあり。
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★ 感想

いやぁ、面白かったですね。竹という素材だけで(正確には籐なども一部に使われていますが)こんなに色んなものが作れるんだな、と素直に感心。
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いわゆる“竹細工”とは異なり、そこに芸術性・創造性を込めた作品に昇華させたものが「竹工芸」。「「第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」 これ、どうやって作っているんだろう?!」で紹介したように、利用している技術は実用的器作りと同じだけど、「陶芸」はまた異なるもの、と言うのと同じ意味合いですね。

竹という素材がありふれているため、それで作られていると聞いてもなんとなく(昔の)日用品というイメージが湧いてしまいがち。でも、竹が自生していない欧米や中南米の国々では、竹工芸の造形美にまず注目し、芸術品として高く評価されているとのこと。そのため、日本の作品がかなり“海外流出”してしまっているようです。まあ、高く買ってくれる訳だから仕方がないでしょうけど。
東京で竹工芸の美術展が開かれるのは三十数年ぶりだとか。もちろん智美術館 - Musee Tomoでは初めて。日本での竹工芸の認知度を上げていきたい、そうでないと作品はみんな海外に出て行ってしまい、日本で作品製作する人もいなくなってしまう、という危機感から、今回の展示会を企画したそうです。

私もそうでしたが、やっぱり作品を観てみるのが一番。実際に観てみると、「不思議な形だなぁ」、「きれいだな」、「これ、どうやって作っているんだろう?」等など、素直に感動・共感できる作品ばかり。
自然の素材が持つ柔らかさと力強さの二面性がまずは面白い。そして、そこに作者の技が加わって、幾何学的とも言い難い、不思議な造型を生み出しているのがさらに興味を惹きます。敢えて比喩的に言うならば、直線的な世界のユークリッド幾何学ではなく、“非ユークリッド幾何学の世界”といった感じでしょうか。

あと、影をみてみるのもいいかも。これはオープンスペースに作品展示されている智美術館 - Musee Tomoならではの楽しみ方でしょう。
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海外で評価され、それが逆輸入されるような形で日本でも人気が出る、なんてことがあります。この竹工芸もそんな感じで盛り上がるといいですね。でも、その前に自ら竹工芸の良さを再発見する方がさらにいいでしょう。この企画展がそのトリガーになればいいな。

ということで、一見の価値ありですよ、これ。

★ 美術展情報

「線の造形、線の空間 飯塚琅玕齋と田辺竹雲斎でめぐる竹工芸」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2018/4/14(Sat) - 7/16(Mon)
  • 開館時間 : 11:00 - 18:00(入館は17:30まで)
  • 休館日: 月曜日 、5/1、6/5  ただし、4/30、7/16は開館
  • 料金 : 一般1,000円 大学生800円 小・中・高生500円
  • ギャラリートーク : 予約不要・聴講無料(展示観覧料が必要)
    • 5/19(Sat):「竹雲斎が継承するもの」 4代田辺竹雲斎氏
    • 6/16(Sat):「琅玕齋を中心に飯塚家の制作について」 鈴木さとみ氏(栃木県立美術館学芸員)
  • 公式サイト : 最新の展覧会 | 智美術館 - Musee Tomo





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JUNKO

次回の上京中に行かれる展覧会2つになりました。竹は大いに興味があります。写真見せていただいてよかったです。
by JUNKO (2018-04-23 10:26) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
かなり面白い企画展です。是非是非。
by ぶんじん (2018-04-23 21:26) 

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