「黒田如水」 : 黒田官兵衛の前半生を描く物語。忠義に篤い軍師はいかにして生まれたのか [読書 : 読んだ本の紹介]
★あらすじ
織田信長が天下統一を目指して西国の毛利陣営と対峙していた頃、そして羽柴秀吉が未だサルと周りから呼ばれていた頃、後の黒田如水、黒田官兵衛は播州御着城(ごちゃくじょう)城主であった小寺政職の家老として仕えていた。地方の小さな国にあっては、この動乱の時代をいかにするか、城主はじめ、重臣たちは無益な評定を繰り返すばかり。このまま毛利についているべきか、新興の織田信長と結ぶか、結論は出ないままだ。だが、若き官兵衛の心はとうの昔に決まっていた。小寺家の命運を預けるのは織田信長をおいてはいない、と。
それではと重臣たちは、官兵衛が織田信長に会ってその旨を伝えるよう送り出した。それは、彼ら重臣たちが、体よく官兵衛を追い出したようなものだった。その結果がどうなろうか考えることを避け、今を、いや昔から続いていることを変えるのがイヤなだけなのだ。
だが官兵衛は本気だ。信長に会って自分の考えを述べ、その天下統一の一翼を小寺家が担うことを真剣に考えていたのだ。
主家のためを一心に思い、旅だった官兵衛。各地の情勢をつぶさに観察し、世情を知るにつけ、いよいよ織田信長は信じるに足ることを確信していく。そして、その織田勢の中でこれは、と思う人物に巡り会う。それが羽柴藤吉郎秀吉だ。官兵衛はまず、秀吉に自分の思いを告げ、そこから信長に取り次いでもらおうと考えたのだ。
ここから官兵衛の運命は大きく変わっていく。この後、信長に仕え、秀吉の軍師としてその才を発揮していくのだった。
★基本データ&目次
作者 | 吉川英治 |
発行年 | 1943初出 |
- 蜂の巣
- 岸なく泳ぐ者
- 沐浴
- 道
- 信念一路
- 丘の一族
- 玲珠膏
- 先駆の一帆
- 鍛冶屋町
- 深夜叩門
- 初対面
- 鷹
- 与君一夕話
- 死を枕とし
- 鉄壁
- 設計二図
- 質子
- 待望の日
- 名馬書写山
- 友の情
- 将座の辛さ
- 捨児の城
- 平井山の秋
- 道は一すじ
- 紙つぶて
- 闇
- 封の中
- 猜疑
- 虱と藤の花
- 老いざる隠居
- 惨心驢(ろ)に騎せて
- 菩提山の子
- かくれ家
- 昆陽寺夜話
- 室殿
- 蛍の声
- 藤の枝
- 違和
- 男の慟哭
- 戸板
- 稲の穂波
- 陣門快晴
- 髪を地に置く
- 心契
- 美人臨死可儀容
- 城なき又坊
- 草履片方・下駄片方
★ 感想
今回、またまたオーディオブックで“読みました”。「耳で読む本」オーディオブック「黒田如水」― 吉川英治 配信中!
黒田如水
- 吉川英治
- 定価:1296円
大河ドラマ「軍師官兵衛」 | NHKドラマは二年前の放映だったのかな。実は全く観ていません。過去最低視聴率となった大河ドラマ「平清盛」 | NHKドラマ(スタンプラリー特典・大河ドラマ「平清盛」スタジオ見学ツアー 清盛が出世して、屋敷も衣装も豪華に!:ぶんじんのおはなし:So-netブログも見てね)以来、観てないんですよ。「平清盛」が知的好奇心をかき立ててくれるいい作品だったので、そのあとは気が抜けちゃったのかも。
でも、今回、「黒田如水」を読んで(実際は聴いて)、「軍師官兵衛」も観れば良かったなと後悔。そのうち、OnDemand放送でチェックすることにしましょう。
この作品は、黒田如水の前半生を描いている。若き官兵衛が世に知られる存在になるまでの、波瀾万丈の物語だ。青春モノとも言えるし、立身出世ものがたりとも言える。主人公の官兵衛は、信念を曲げない強い男であり、忠義に篤く清廉潔白でもある。こう書くと、少々青臭い感じがしてしまうが、吉川英治作品はそれでいて嫌みがないのが良い。素直に感情移入し、憧れのヒーロー像として主人公を描いてくれる。良い意味で、人はかく生きねばならない、と言う道徳的教訓もしくは実践哲学を示してくれている。それ故、読み終わったあとには爽やかな読後感が残る。ドロドロとした話も面白いが、たまにはこんな作品も良いものだ。
それにしても官兵衛さん、どうやって“世界情勢”を掴み得たのだろうか。TVもネットもない時代、毛利方に付くか織田信長が来ると見るのか、判断できるだけの情報をどうやって得たのかが不思議。話の中ではその辺りはあまり触れられていない。官兵衛が市井の人々の噂話から「羽柴藤吉郎はできる奴」と見抜くシーンは出てくるが、国政を占うだけの大きな流れを捉えるのは難しかろう。今となっては知る由もないが、その時代の人びとの“情報合戦”の様子も知りたいなと思ったのでありました。
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吉川栄治の作品はとにかく面白い、一気に読めますね。私は歴史もの好きです。
by JUNKO (2016-03-24 23:27)
JUNKOさんへ:
前に読んだ「三国志」もそうでしたが、その世界に引き込まれて、一気に読んでしまう感じです。
by ぶんじん (2016-03-25 22:54)
黒田官兵衛は、NHKの大河で見ていたので、岡田准一の顔が浮かんでしまいます。
<それにしても勘兵衛さん、どうやって“世界情勢”を掴み得たのだろうか>→ ほんと、そうですね。歴史は繰り返す、ことと、こういうパターンならこうなる、という予測も情報がないと、精度が減りますよね。
by TaekoLovesParis (2016-03-26 11:54)
TaekoLovesParisさんへ:
あら、漢字を間違えてしまった。訂正しておきます。岡田准一、いい役者ですよね。
by ぶんじん (2016-03-26 22:40)