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「アール・ヌーヴォーのガラス展」 at パナソニック 汐留ニュージアム [美術 : 美術展、写真展紹介]

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「アール・ヌーヴォーのガラス展 デュッセルドルフ美術館 ゲルダ・ケプフコレクション-」 at パナソニック 汐留ニュージアムの記事で事前告知したこの美術展に、WindamArtPRさんから招待券をいただいて観てきました。

★ 展示内容

展示はざっくりと二つに分かれていて、前半がパリの工房の作品群、後半がアルザス=ロレーヌ地方の工房の作品群です。
一人の陶芸家がデザインもするし、土もこねるし、窯で焼いて完成させることもある。だが、この時期のガラス器の場合は、工房の経営者がいて、その人がプロデューサーとなり、デザイナーや職人を雇い、作品造りをしている。そのため、これら作品も“誰が作ったものか”は簡単には言いがたい。そのため、出品目録などにも作家・デザイナー・工房の名前と共に、制作者の名前も並記する形になっている。例えば、
作品名 作家・デザイン・工房・会社 制作 制作年
花器(竹) ウジェーヌ・ルソー、パリ アペール兄弟、クリシィ 1877/1878年
という感じで記述されています。

ジャポニズムが大きな潮流となっていたアール・ヌーヴォーだが、パリのガラス作品群は特にその影響が強い。ウジェーヌ・ルソーは葛飾北斎の「北斎漫画」を“発見した”と言われる人だそうで、そのデザインには直接的に浮世絵や絵巻物に出てきそうなモチーフが使われている。中には、北斎の描いた布袋様をそのまま使っている花瓶もあるくらい。今観ると、ちょっとクスッとしてしまう意匠だが、当時のパリの人びとにはエキゾチックだったんだろうな。

鯉をモチーフにした作品も多い。あの鱗がデザインとして面白いし、その泳ぐ姿は躍動感もある。存在感たっぷりの鯉たちはインパクト充分だ。


アルザス=ロレーヌ地方のコーナーにはエミール・ガレやドーム兄弟の作品がこれでもかと並んでいた。
彼らの作品には、どうやって作ったのだろうか?と考え込んでしまうものが多い。ガラスの厚み方向にグラデーションがかかっていたり、非常に細かい細工物(虫が多いかな)が違和感なくそこに付いていたり。使われている色数も多いし、金属(金や銀など)を蒸着(?)させたものもある。とにかく多彩だ。

ドーム兄弟の作品で、森の風景を花瓶の側面に描いたものがある。風景画のような趣を持ちながら、ガラスの持つ透明感・不透明感によるきらめきがあり、幻想的な森がそこにはある。緑のグラデーションが美しい。

作品には花器が多いが、ランプもいくつかはあり、中に灯りをともしている。あのランプの色合いは観ている者の心を落ち着かせてくれる。

★ 感想

私の父親がコレクターだったこともあり、個人的には懐かしさが一杯だった。ドームのランプのぼんやりとした灯りは、読書には不向きだったけど、ぼぉっとしているのには良かったかな。

とにかく、どうやって作ったのか気になるものばかりだった。展示会場の最後にパネルで主な技術の説明があるのだが、これらを組み合わせたとしてもあんな作品を作り出すのはどれだけ手間がかかっただろうかと思ってしまう。
酸を使ってガラスを部分的に溶かす技法(エッチング)や、やすりなどで削り取る技法(エングレーヴィング)などなどを駆使しているのだが、一点ものの芸術作品ではなく、工芸品(大量生産するもの)として(ほぼ)同じものをいくつも作るのはまさに職人技だ。

どの作品も素晴らしいが、私はドーム兄弟の、きのこをモチーフにした作品群が良かったか。花や昆虫の作品もいいが、きのこが可愛らしいのと、色合いが落ち着いていて、観ていて飽きないのが良い。
もう一度、バブル景気が訪れてくれないと、おいそれと手に入れることはできないだろうけど、自分のお気に入りを見つけるのも楽しいかも。

ということで、誰にもおすすめできる美術展でした。

★ 美術展情報

「アール・ヌーヴォーのガラス展 デュッセルドルフ美術館 ゲルダ・ケプフコレクション-」展は下記の通り、開催中です。





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