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「武士の家計簿」 試写会 [映画の感想]

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試写会で「武士の家計簿」を観てきました。時代劇ではあるんだけど、めいっぱいのホームドラマ。笑わせて、ほろっとさせて、そして考えさせられて、よくできたいい作品でしたよ。

時は幕末。ところは加賀百万石。主人公の一家は加賀藩に御算用者(ごさんようもの)として何代にも渡り仕えていた。つまりは会計係を代々生業としてきたのだ。祖父(中村雅俊)は婿養子。もちろんお城のご用はきちんとしていたのだがちょいと浪費家。だが、その子で、主人公(といっても語り、という感じかな)の父(堺雅人)は「そろばん馬鹿」と呼ばれるほどの几帳面かつ勤勉家。結婚してもそれは変わらず、新婚初夜に婚礼費用の帳簿を付けるためにそろばんをはじいているくらいだ。妻(仲間由紀恵)もあきれるが、その人柄に惹かれていく。
そんなほのぼのとした一家にも事件は起きる。勤勉な父は、自分の職場で不正な経理処理があるのをそのそろばんの技で見つけてしまう。上司からは見ぬふりをしろと脅される。また一方、この一家は親戚づきあいやら何やらもあり、年収の倍にもなる高利の借金があることもこれまたそろばんをはじいて見つけてしまった。左遷の危機と家系の破産の危機のダブルパンチだ。それまではおとなしく祖父の言うことに従ってきた父だが、この危機を前にして毅然とした態度をとるべきと心に決めたのだ。その時からこの一家の戦いが始まる。一番の敵は借金!そろばんを武器に立ち向かっていくのだが、果たして無事に乗り切れるのか。しかも時代は幕末へと向かい、世の中は騒然としていく。大きな時代の流れの中で、小さな家族の戦いの話が進んでいった。


いい映画でした。観終わったあと、しばらくご無沙汰している父や母の顔が見たいな、なんて殊勝なことを思ってしまったくらい。
時代劇ではあるんですが、描かれている家族の様子は現代のそれと全く違和感がない。最近の不景気で暮らしが苦しくなってきた「中流家庭」という感じでしょうか。家のローンを抱えて、子供達の教育費のために重度の金欠病を煩っている私としては、まるで自分を見ているよう。でも、こんな風に強くはなれないかな。堺雅人演じる父は、仕事にも家族にも、そして子供のしつけにもとてもしっかりとしていて”ぶれない”んですよ。久しぶりに強い父親像を描いた作品を見た気がします。最近の父親はドラマや映画の中でも弱い存在ですからねぇ。見習わないといけないな、これは。
でも、一番に感じたのは家族の絆。親から子へ、子から孫へとつながっていくもの。それは生き方や考え方だったり、家族を思う心だったり、そんなものが受けつながれていきながら、一緒に生きていこうという力を生んでいるんだろうと思えるんですよ。子供の出産のシーンがあったり、祖父や祖母が死んでその葬式の場面が描かれているんですが、それもまた効果的だったかも。結婚式のスピーチに使われる「親が死に、子が死に、孫が死に・・・」ってやつですね。生まれ来るものと死にゆくもの。その交代を繰り返しながらも家族のつながりは続いていく。当たり前ではあるけど、その意味の大きさを改めて考えさせられました。

出演陣がみんなうまいので安心して観られ、話に没頭できた気もします。気は優しいんだけど頼りないおじいちゃん役の中村雅俊、少女のような無邪気さを感じさせるおばあちゃん役の松坂慶子、外見は頼りないけど芯はびしっと決まっている堺雅人。そしてそんな夫を内助の功で支える妻役の仲間由紀恵は、奥さんにしたい女優ナンバーワンって感じの健気な演技。そしてそして、主人公の子供の頃を演じた子役の大八木凱斗君はうますぎて、ついついほろっとさせられてしまう台詞を吐きまくり。
中でも、仲間由紀恵が良かったですね。父と子の間に入って自分を殺して生きる、“古き良き時代”の母親。でも、子供の安否を思う時には感情を爆発させて泣き崩れる。そのギャップを自然に見せてくれ、とても感動させてくれました。

ということで、これはおすすめですよ。12/4から全国公開とのこと。

そういえば最近、時代劇が多いですね。この前観た「桜田門外ノ変」や、「十三人の刺客」、「雷桜」などなど。ちょっと異色だけど「大奥」なんてのもやってますし。面倒くさいことを語る必要なく、訴えたいテーマをストレートに描けるのがいいのかな。だとしたら、今回の「武士の家計簿」は大成功でしょう。



武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

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  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/04/10
  • メディア: 新書



映画『武士の家計簿』で巡る百万石の金沢

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 時鐘舎
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  • メディア: 単行本



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コメント 8

はくちゃん

おはようございます
僕はハリウッド映画が好きだったんですが、ここ数年邦画が面白いんですよね
日本の映画が元気なのはうれしいですね

by はくちゃん (2010-11-03 09:44) 

Darling

はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
本当に、幕末の頃の話でありながらも、現代に通じるところや、
現代が忘れているものを思い出してくれるような・・・いい映画でしたね。
by Darling (2010-11-03 11:54) 

カエル

観終わった後に、、、の感想を聞いたら「いい映画だったんだなぁ」って
伝わりましたよ〜。
by カエル (2010-11-03 17:09) 

Ranger

ほのぼのと温かい感じの物語なんですね^^

ぶんじんさんの評価なら、折り紙つきですね!
by Ranger (2010-11-03 18:17) 

東雲

こんばんは。
“あぁ・・・、なんか 良い映画なんだなぁ・・・”というのが
伝わってきました。
12/4から全国公開・・・?
その頃私は 関東に居るのですが、
でも、 機会があったらそっちで観て来ようかな?
なんて 思ってしまいました。
by 東雲 (2010-11-03 22:09) 

ぶんじん

はくちゃんさんへ:
一時は「邦画は死んだ」と言われていたのに、最近は元気を取り戻しましたね。私もうれしい限り。

Darlingさんへ:
こちらこそどうもありがとうございます。
舞台挨拶、聴きたかったなぁ。羨ましいです。

カエルさんへ:
親孝行の心なんて普段は全く持ち合わせていない私をもそんな気持ちにさせちゃう作品でした。

Rangerさんへ:
まあ、趣味は人それぞれ。その人ごとに見るポイントや共感する“周波数”も違うでしょうから、「当方は責任を負いません」って奴ですけどね。でも、たぶんこの作品を悪く言う人は少ないかと思います。

東雲さんへ:
おや、こちらにおいでで。時間があったら是非どうぞ。
by ぶんじん (2010-11-03 23:27) 

non_0101

こんにちは。
ご訪問&niceをありがとうございました!
いい映画でしたね~
心にじんわり残るような作品でした☆
by non_0101 (2010-11-14 10:20) 

ぶんじん

non_0101さんへ:
いえいえ、こちらこそ。誰に対しても薦められる作品かなと思います。
by ぶんじん (2010-11-14 11:40) 

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