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角川文庫"トウェイン完訳コレクション 「アーサー王宮廷のヤンキー」 「不思議な少年44号」 [読書 : 読んだ本の紹介]



トウェイン完訳コレクション  アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)

トウェイン完訳コレクション アーサー王宮廷のヤンキー (角川文庫)

  • 作者: マーク・トウェイン
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2009/12/25
  • メディア: 文庫



トウェイン完訳コレクション  不思議な少年44号 (角川文庫)

トウェイン完訳コレクション 不思議な少年44号 (角川文庫)

  • 作者: マーク・トウェイン
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/08/25
  • メディア: 文庫


今年(2010年)はマーク・トウェイン没後百年に当たるとのこと。Wikipediaによると1910年4月21日に亡くなったんですね。ということで、今年は百周年を記念して記念事業的なものがいろいろと企画されてます。「死後、百年間は公表するな」と遺言されたために封印されていた自叙伝が刊行された、なんてのもあります。そして、角川文庫でも、有名な「トムソーヤの冒険」以外の、あまり知られていない作品を次々と刊行しています。今回のこの二冊がそれ。

★「アーサー王宮廷のヤンキー」
(トウェイン存命当時の)現代人がなぜかアーサー王の時代にタイムスリップしてしまう。そこは騎士が国を治め、小国が相争っている時代だった。人々は純朴で、魔法や呪術が普通に存在する(とみんなが信じている)生活を送っていた。
現代からやってきた主人公は、その知恵と行動力を生かしてアーサー王に取り立てられ、宰相的な役につく。現代の知恵を持って銀行経営をしたり、発電所を作ったり、電話網を国中に張り巡らしたり・・・としたかったのだが、表立ってそんなことをしたらカルチャーショックは計り知れない。これぞと見込んだ若者を集めて密かに教育を施し(秘密の学校まで作ってしまう)、彼らを使ってその計画を進めていった。たまには、魔法使いのマーリン(!)と“魔法”対決をして見せ、こっそり仕掛けたダイナマイトで城の塔を破壊して「偉大な魔法使い」として認知されるようにもなる。

と、こんな形で話は進む。現代人から見た過去の人々の無知蒙昧さを描いているのだが、実は現代にもつながっている宗教や、愚かな為政者などを揶揄しているのだ。なかなか手のこんだ筋になっている。


★「不思議な少年44号」
宗教が人心を支配している中世末期。ある城の中では、当時発明されたばかりの活版印刷が領主の経営の元、怪しげな職人を集めて行われていた。主人公はその印刷所の見習い。そこに謎の少年がふらりと現れる。職人達は反対したが、領主はその少年を哀れに思って自分の城に住まわせ、印刷所の見習いとして仕事を与えた。ところが、その少年は不思議な能力を持っていて主人公達を驚かせる。城に住む魔法使いが操っているのだとみんなは思ったが、実は少年は未来からやってきたのだと主人公にあかす。そして、次々と不思議なことを少年は引き起こすのだった。少年がやってきた目的は何なのか、そして彼の正体は?宗教的教育をやっと施された程度の主人公には理解を超える話であったが、彼なりに何とか少年のことを理解しようと努めるのだが、そこには大きな困難があった。

かつて岩波文庫版の「不思議な少年」を読んだのだが、実はこれが贋作だという話で、こっちの角川文庫版こそマーク・トウェインによるもの(何度も自分で改訂(加筆・修正)していた)なのだそうだ。いやぁ、びっくり&ショック。岩波版は好きな話の一つだったのに。。。読み比べると、話は全く違ったもの。なんでこんなことになっちゃったんでしょうね。



どちらの作品も、トムソーヤやハックルベリーフィンのような冒険小説とは全く違ったものです。SFなんでしょうね、ジャンル分けするとしたら。タイムトリップがベースになっていて、昔の時代を描写してはいるんですが、でもその奥に見ているものは“現代”というのも、二作に共通したテーマです。
読み物として面白いです。有名なアーサー王の伝説を“パロディ”に使っちゃっていて、知っている名前が一杯出てくるんですよ。しかも、かっこうよかったはずの騎士達や偉大な魔法使いのマーリンが、現代文明の智恵にかかれば無知蒙昧もいいところに描かれていて、ファンの人はショックかも知れません。エクスカリバーも拳銃(主人公の秘密工場で製造されちゃうんです!)が相手じゃ、文字通り刃が立たないでしょう。読む順番としては、正統派(?)のアーサー王伝説を読んだあとにこちらを読んでください。そうでないときっと悲しい思いをするでしょうから。
とはいえ、お薦めですよ、この本。

不思議な少年の方は、何度も書き直されたこともあってか、途中でずいぶんと雰囲気が変わってしまっています。ちょっと戸惑うくらい。でも、なぜか魅力のある作品です。その心は、ってのを知りたくなっちゃいます。表面上に書かれたものだけではない何かを表しているはずなのですが。もしかしたら、死後百年後に刊行された自叙伝に載っているのかも。

ということで、買っちゃいました!700ページ以上!!いつ読み終わるでしょうか。。。。まあ、ぼちぼちがんばります。
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不思議な少年 (岩波文庫)

不思議な少年 (岩波文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 文庫



Autobiography of Mark Twain (Mark Twain Papers)

Autobiography of Mark Twain (Mark Twain Papers)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Univ of California Pr
  • 発売日: 2010/11/15
  • メディア: ハードカバー



ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 文庫



トム・ソーヤーの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

トム・ソーヤーの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 文庫



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コメント 2

TaekoLovesParis

わー大きな本、洋書ですね!
トムソーヤもハックルベリーフィンも日本語で読みました。
「アーサー王宮廷のヤンキー」はおもしろうそう。
現代から見たアーサー王物語の人々、といっても現代が100年前、それでも
銀行や発電所はあるわけで、興味をそそられます。
いつもぶんじんさんの読書量に関心しています。
「不思議な少年」は、贋作というより、初版みたいなものですね。
自分で加筆・修正していったのだから、この本に思い入れがあったという
ことでしょうね。
by TaekoLovesParis (2010-11-06 22:50) 

ぶんじん

TaekoLovesParisさんへ:
「不思議な少年」、読み比べてみると面白いですよ。角川文庫版を読んだあと、岩波のを本屋で立ち読みしちゃいました。
by ぶんじん (2010-11-08 23:00) 

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