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ルイス・ブニュエル監督の「幻影は市電に乗って旅をする」 [映画の感想]

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先日、「プリズン211」の試写会でお邪魔した市ヶ谷にあるセルバンテス文化センター東京で、今度は映画上映会(入場無料・要予約)に行ってきました。スペイン語教育やスペインの文化紹介の一環としてこのような上映会を開いているそうです。スペインには大昔、出張でバルセロナに数日間行っただけなのですが、サグラダ・ファミリアに圧倒されてそれ以来、また行きたいなぁと思っている国の一つです。

さて、ブニュエル監督というと、「アンダルシアの犬」のエキセントリックなシーンで有名ですが(というより、私はそれくらいしか知らないのですが・・・)、スペイン内戦を機にアメリカに渡り、さらにはメキシコに移ってそこでは雰囲気の違う作品をとり続けたのだそうです。今回の作品もメキシコ時代のもので、1953年の作品です。

メキシコシティでは当時、路面電車が街の公共交通の中心だった。が、トローリーバスの出現によってだんだんとその役割が減っていこうとしていた。そんな時、主人公の二人(運転手のファンと修理工のタラハス)は廃車宣言をされた車両133番の担当だったため、自分たちも職を失うのではと落ち込んでいた。その夜、街のパーティーで深酒した二人はこれが最後の機会だろうと思い、無断で133番車両を操縦してパーティー客を家まで送っていったのだった。
ところが、パーティー客を降ろしても次から次といろんな「客」が乗ってきてしまう。屠殺場では解体した豚などの肉をお土産に(?)持って帰る作業員が乗ってきて満員になってしまった。料金を取ると詐欺になると思った二人は無料でみんなを乗せてあげる。そうしたら「客」たちはお礼にと豚の脳みそやら肉片やらを代わりにくれたのだった。
彼らが降りたと思ったら遠足に行く子供たちが特別列車と間違えて乗り込み、車内で大騒ぎ。両親のいない子供がいじめられてけんかを始め、先生が大声で怒鳴ったり。。。
車庫の番人は夕方にならないと出社しない(番人は夜勤なのかな)。彼がやってくる前に車両133番を車庫に戻さないと二人は会社を首になるだけではなく、警察に捕まってしまうかもしれない。焦る二人。だが、「客」はほかにもいろいろ現れるのだった。

普通の市民の小さな冒険が話のメインなのだが、電車に乗ってくる「客」たちはその当時の社会問題を体現するような人々ばかりなのだ。もちろん、主人公も時代の流れ(路面電車からトローリーバスへ)に乗れずにおいてかれてしまいそうな存在なのだ。笑える場面も一杯の娯楽作品ではあるのだが、そんな中に社会のひずみやそれに流されるしかない人々の悲哀などが盛り込まれているのだ。なるほどねぇ。シュールな作品だけではなく、こんな風な作品も作る人だったんですね。全く知りませんでした。なかなかおもしろかったですよ。
語学の勉強という意味では、最近の映画よりもこの頃の作品の方がテンポがのんびりしている分、向いているかもしれませんね。私はスペイン語は全くダメですが、はっきりと台詞をしゃべってくれているし、知っていたらちゃんと聞き取れるんだろうなと言う感じがしました。

普段では観ることのない作品もこういう機会があると観てみようかなという気になりますね。次回は何かな。楽しみです。








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