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インド人の頭ん中 [読書 : 読んだ本の紹介]


インド人の頭ん中 (中経の文庫)

インド人の頭ん中 (中経の文庫)

  • 作者: 冬野 花
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2009/03/26
  • メディア: 文庫


何度かインドに出張で行っている訳ですが、数日の滞在ではやはりその国の本質はわかりません。でも、そんな短い期間の中でも「こりゃなんだ?」と思うことが何度もあり、さすがはインドだなぁと思わざるを得ません。もっと深く知りたいものだと思っていたのですが、赴任話は流れてたぶんもうないでしょう。住んでみる機会はちょっとなさそうです。そんな時、このインパクトのあるデザインの表紙が本屋で目にとまったので(目があった?)、思わず買っちゃいました。

著者は女性。数ヶ月のインド一人旅(これだけでもすごい!)に飽きたらず、いきなりインドに”引っ越し”しちゃったそうです。仕事がどうだとか、知り合いがいるからという訳ではなく、まさかの飛び込み。何のツテもなくデリーに住んじゃうなんて、すごいとしか言いようがありません。そんな彼女の体験記がこの本。観光でちょこっと訪れただけでは当然ながらわからないインド人の考え方、価値観、“常識”にこれでもかと驚かされっぱなし。
まず、案の定というか、部屋探しで早速インドのすごさを体験したそうです。インドの不動産屋は電話一本で商売をしているところが多く、店に行っても机一つ(&電話一台)しかない場合がほとんどだそうで、しかも直接行っても店番の小僧が出てくるだけ。店主に連絡を取ってもらっても「明日また来て」だの「ちょっと待ってて」と言われるだけだとか。で、次の日に入っても同じことを言われるだけ。その場で待とうものなら一時間は覚悟しないといけないそうです。時間の感覚が違う、というレベルではなさそうですね。
やっと見つけた部屋は、後で知ったけど使用人のための部屋。その時はもちろん、そんなことは知らずに決めちゃった訳です。その部屋は建物の屋上にある三棟の小屋。トイレやキッチンが別棟になっていたそうです。屋上にあるなんて、いわゆるペントハウスの様でちょっとお洒落と思っちゃう訳ですが、そこはインド。しかもデリーは灼熱の土地。乾期には気温が四十度になり、太陽がじりじりと照りつける土地。屋上はまさに灼熱地獄なのだそうです。これも後で知ることになるのですが、家賃は建物の下層の方が高く、上に行くに従って安くなるそう。つまり、太陽に近いだけ熱くてどうしようもなくなるので安い。で、屋上の小屋はもっともひどい環境なので、使用人に割り当てられるそうです。著者は暑さに耐えられず、さらにその他の信じられない理由もあって、すぐに引っ越しをしたそうです。私もちょっとだけこの暑さを体験したことがありますが、あれは我慢できるものじゃないですよ。
そしてなによりも興味深かった話は階級、身分の話。いわゆるカースト制度というやつ。厳然として社会・生活に根付いているんだけど、表だっては聞けないことなので、なかなか勉強になった。やはり、その身分によって職業がとても細かく分かれ、決められているそうです。例えば、水道工事屋は工事をした後の後片付け(ゴミ掃除)をしないで帰ってしまう。掃除をするのは別のカーストなので、自分ではしないというのが理由。うーん、徹底してますねぇ。万事がこの調子なので、一つのことをするにも何人にも仕事を頼まなけりゃならないそうで、面倒くさくてしょうがないそう。ある意味では”ワークシェアリング”になっているので、みんながハッピーになる仕組みなのかも知れないけど、毎日がこんな調子では大変でしょうねぇ。

そのほかにも、一読三嘆って感じで次から次へとインド人のすごさが明らかになっていきます。でも、自分で住んじゃおうと思った著者のことですから、結局はそんなインドの人々のことを愛してやまないよう。なんだかんだ言って異文化コミュニケーションを楽しんでいるみたいです。世界の人々と付き合うにはこれくらいの姿勢が必要なんでしょうねぇ。私もここまでできるかはわかりませんが、この姿勢、見習いたいと思います。
ということで、面白くって一気に読み切ってしまいました。インドに興味ある人もそうでない人も、読んで損はない一冊です。超おすすめです。






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コメント 11

HEIJI

インドのことは意外なほど知らないです。
そんなに遠いとは思っていなかったのだけど、
何カ月もインドを一人旅ってすごいなあ。
それだけ懐の深い国なんでしょうね〜
by HEIJI (2010-02-22 00:01) 

kana

インドって、ハマルと出てこれなくなる・・・と、
インドにはまった中学の担任が言ってたのを思い出しました^^;
その先生も、休みの度にインドへ。
近所のお兄さんはインドに行って帰ってこないと、捜索願が(笑)
ハマるんですねぇ。
by kana (2010-02-22 11:50) 

ぴーすけ君

最初のが外国のお友達がインド人だったせいか
インドは親しみ感じます。
一時インド映画にもハマってましたw
by ぴーすけ君 (2010-02-22 13:11) 

カエル

インドだったら今すぐ行ってみたいんですー。
今インド熱が高まってますなぜかわかりませんし、行った事ないですが。
インドのドキュメンタリーを知り合いが撮りました。
シスター・チャンドラとシャクティの踊り手たちと言って、松井和さんが監督されてます。
この映像の中で炎のシーンがあるのですが、意味がわかりませんでしたが、インド人だったら一目瞭然でわかるショッキングな出来事が隠されているようです。話を伺ってちょっとびっくりしました。
根深いこの問題はそんな簡単には拭えないようです。
私には理解しがたい出来事です。



by カエル (2010-02-22 20:53) 

ぼんぼちぼちぼち

インドは 中学生の頃 憧れていたので
これ 読んでみたいでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-02-25 22:49) 

アズサ

今日、スラムドックミリオネアを観たんですよ。
インドに疎い私だったので、結構新鮮っていうか衝撃いっぱいで
すごく楽しめた映画でした。
機会があれば、ぜひコレも読んでみたいです~。

by アズサ (2010-02-25 23:02) 

ぶんじん

HEIJIさんへ:
インド、深いですねぇ。底なしかも。でも包み込んでくれる深さなのかも知れませんね。

kanaさんへ:
底なし沼のようにはまっちゃうのか。これは危険ですなぁ。

ぴーすけ君へ:
インド人の友人がいらっしゃるんですか、いいですねぇ。私は仕事でしか付き合いがないので、なかなか本音が聞けません。

カエルさんへ:
行っちゃってください、インド!
ほほぉ、どんな映画なのでしょう。興味津々。

ぼんぼちぼちぼちさんへ:
中学生とはインド歴(?)が長いですねぇ。ぜひ、ご一読を。

アズサさんへ:
インドの格差社会が分かり易く描かれていましたよね。
知れば知るほどはまる国なのでしょう、インド。
by ぶんじん (2010-02-27 11:25) 

fuu

インド人はナチュラルにちがう道を教えたりするって 
ちがう本で読んだことがありますw 
旅をしたら だれが『ホント』を教えてくれるかドキドキしっぱなしになりそうです~
by fuu (2010-03-11 16:01) 

ぶんじん

fuuさんへ:
聞いたことがある程度でも「知っている」になっちゃうので、タクシーに乗っても道に迷うことがあります。この前もあるオフィスに行くのに何度同じ道を行ったり来たりしたことか。
by ぶんじん (2010-03-12 23:54) 

jun

これはおもしろそうですね。うちの会社にもインド人一杯いるので
気になります。
一度バンガロールへ送られそうになって、ビザまで取ったのを思い出しました・・・。
あの時が最初で最後の訪インドのチャンスだったような気がしますw
by jun (2010-03-21 02:16) 

ぶんじん

junさんへ:
アキバでも"ITガイ"のインド人が一杯ですよね。バンガロール、チャンスがあればぜひ!この本を読んで予習しておけば大丈夫?!
by ぶんじん (2010-03-21 08:53) 

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