「霊魂だけが知っている」：ぶんじんのおはなし：So-netブログ

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「霊魂だけが知っている」　[読書：読んだ本の紹介] [編集]

心霊写真を撮ろう！と決意したからと言うわけでもないが、面白そうだったので読んでみたのでした。

前作の「死体はみんな生きている」がとても面白かったので、これも期待を持って買ったのだ。で、その期待は充分に満たされた訳だ。
今回のテーマは死後の世界。死後の世界が本当にあるのかや、その証拠（？）としてこの世に現れてくる幽霊に関し、科学的な解明をしようとしている人達やその研究に関してのレポートだ。著者のスタイルは突撃レポートとでも言うのだろうか、これは面白いと思ったらその人達から話を聞くだけではなく、自ら体験し、実験台となってみる。また、彼女の探求の姿勢は、とてもシニカルではあるけれど一応の中立を保っている。それがどんなに怪しげなものであっても、相手が科学として取り組んでいる（と思っている）ことに対して敬意を持って接している。もちろん、いつもの通りに（無言の）するどい突っ込みが連発するのだが。
まずは「生まれ変わり」。研究者がインドにいると判ると早速コンタクトをしてデリーに飛んでしまう。私もインドに行った経験があるが、いきなり行ってしまうような国ではないと言うのに・・・。案の定、あの交通渋滞（三輪車と、人と、そして牛と・・・）にカルチャーショックを受ける。が、そんなことではめげないのがこの人だ。国際転生輪廻研究所の研究者と一緒に、「自分は隣村で死んだ男の生まれ変わりだ」と言い出した子供の調査に同行する。それにしてもさすがはインド。生まれ変わりは珍しくないのだそうだ。しかも死ぬとすぐに生まれ変わっちゃうみたいで、またこの子供のように近所に蘇ることが多いらしい。調べていくと、遺族と生まれ変わりの家族とが対面して、その後は親戚のようにつき会うなんてこともあるらしい。でも、そんな近所だったら元々知り合いだったり、そうでなくても隣村の様子は良く知っていたりする。子供が「自分の家の裏には祠があった」なんていうのがどの程度アテになるのか。。。ものすごく怪しげだ。研究者自身もこのこのケースはクロと思ったようだ。
次ぎは歴史上の”研究”の紹介。人はいつ人となるのか、詰まりは発生のメカニズムだ。精子の中に小さな小さな”人”が入っているかもしれないと顕微鏡を覗いた人や、一卵性双生児になるかならないかが決まる受精後１４日以後にアイデンティティが確立するだろうと言う説、そして解剖学的に脳みその中をいじりまわして魂を見つけようとした話などが続く。魂の重さを計ろうとした話も興味深い。臨終間際の人をべっどごと精密な秤に乗せて、その瞬間の重量変化を計る実験をした人がいたのだ。そしてその時に観測されたのが例の21gだ。これは映画「２１グラム」として有名になった数字だ。
さて体験突撃レポートとしてこの人は霊媒師養成コースを受講してみたり、霊の声を録音するツアーに参加したり、幽霊の幻影を見る原因と言われている電磁波や超低周波不可聴音を浴びてみたりしている。とても冷静なのか、単にひねくれた疑い深い性格なのか、残念ながらどれも自分では死後の世界も幽霊も見たり聞いたり感じたりすることができなかったようだ。うむ、残念。
難しい科学の話題を一般の読者にもわかり易い読み物にするのがサイエンス・ライターだが、その意味で彼女はまさにその道のプロと言えよう（もちろん、死後の世界の探求も科学なのだ）と。文章が判りやすいだけではなく、その博学さを活かしたギャグ（というのかな）がとても効いている。カフェで読んでいると思わずカフェ・ラテを吹き出しそうになってしまうほどだった。こんな洒落た文章を書けるといいなと密かにあこがれてもいるのだ。うむ、おすすめの作品でした。