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ジェームズ・アンソール展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

TV東京の「美の巨人たち」でも紹介されていたのを観て、Ensorに興味を持った。Bunkamuraミュージアムでやっていた「ベルギー象徴派展」でも何点かの作品を観たばかりだが、その変った作風は非常に魅力的だった。
昨日の雨に濡れた庭を抜けると、旧朝香宮邸の母屋が現れる。アールデコ調の、きれいな建物だ。そこが今は東京都庭園美術館になっている。屋内も美しい。シャンデリアや窓がとても素敵だが、床もそれに劣らずお洒落だった。特に子供部屋(お姫様の部屋だったそうだ)の床は寄木細工で、その模様はとても美しかった。それらの部屋が展示室になっている。
展示されている作品は140点あまり。十代の頃のものから、晩年に近い頃のものと、多岐に渡っている。若い頃は風景画、静物画が多い。彼の故郷が灰色っぽく、うす暗く描かれている。雲が空を覆った、冬の情景のようだ。でも、草木には葉があるから、季節はいつなのだろうか。暗い野原に小さく人がいるのはなんとも寂しげだ。
二十代から北斎の「漫画」を模写し始める。鎧兜に身を包んだ髭の武者や、雅な女房などだ。鳥獣戯画のような絵もある。その影響か、その後の作品にはグロテスクな題材が増えている。ヒエロニムス・ボスやブリューゲルとも違った悪魔や魔物が行進したり、踊ったり、尻でラッパを鳴らしたりしているのもいた。口からはゲロゲロしている。いや、尻から鳥か何かが飛び出している魔法使いまでいた。そしていよいよ仮面の登場だ。
Ensorの実家は土産物やなにやらを売る店で、カーニバルに使う仮面も取り扱っていた。つまり、子供の頃から仮面に囲まれて育ったのだ。その記憶が、日本の漫画などに触発されて噴出したのだろう。がい骨も仮面と同じと思えば、その後の作品は仮面だらけだ。彼には世の中が全てそんな風に見えたのだろうか。だが、自らその仮面をつけることによって、正直に世の中の矛盾や醜さを描くことができたのだろう。アウトサイダーとしての仮面の自分と、醜い仮面をつけた世の人々、その二つが絵の中で静かに共鳴している感じだ。
老いてからはキリスト教的主題が多くなってくる。七つの大罪などだ。人はおろかさを仮面に隠しても、その罪からは逃げられないと言いたかったのかな。
一人の人の作品展なのに、変化に富んだ、楽しい展示だった。


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