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「TOPコレクション イメージを読む 場所をめぐる4つの物語」展 やっぱユージン・スミスは良いなぁ [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で「TOPコレクション イメージを読む 場所をめぐる4つの物語」展を観てきました。

★ 展示内容

収蔵品による企画展で、今年のテーマは「イメージを読む」というもの。そして今回、作品から読み解くのは「場所」と「物語」。
公式サイトの説明によると、
5月に始まる第1期は「場所をめぐる4つの物語」をテーマに、「場所」と密接にかかわった4人の作 家によるアプローチを取り上げて、そこから生まれる物語的な世界の広がりを見つめていきます。それぞれの作家たちは、あるひとつの場所や地域を深く見つめ、その場所に固有の生活や風景、出来事をとらえるだけではなく、現実的な事象からさらにその向こう側にある隠された物事の本質や普遍的な意味をとらえています。
とのこと。
そして、展示構成は以下の通り。
  • W.ユージン・スミス:「カントリー・ドクター」
  • 奈良原一高:「人間の土地 緑なき大地―軍艦島」
  • 内藤正敏:「出羽三山」、「出羽三山の宇宙」
  • 山崎博:「10 POINTS HELIOGRAPHY」

2017年に開催されたユージン・スミスの企画展(「「生誕100年 ユージン・スミス写真展」:写真が語るヒューマン・ドラマの説得力」)でも展示されたが、今回も「カントリー・ドクター」シリーズが取り上げられている。
人口2000人の町にただ一人の医者。その姿を追ったドキュメンタリーだ。怪我をした子供の治療、出産、予防接種から、老人の死を看取る姿など、まさに休みなく働く医師。無表情なその顔は意志の強さと、隠しきれない肉体的・精神的疲労と、その両方が滲み出ているようだ。ユージン・スミスのカメラはそんな医師の姿を淡々と写していく。このシリーズが掲載されたLIFE誌には、当然、解説記事が付いている。でも、そんな文字による説明はいらない程、写真の持つイメージが語りかけてくれているのだ。

奈良原一高の「軍艦島」のシリーズは、この特異な、全てが作られた人工の町に暮らす人々の生活を淡々と語っている。それはSF作品のようでもあり、古代神話の一場面のようでもある。軍艦島という“場所”は、まさに“作り物”の世界であり、それでいて現実でもあり、そんな基本的な判別さえ不可能にするイメージを私たちに示しているのだ。

祈りの場は異界と呼ぶに相応しい。神々と人々の交わりは極限まで張り詰めた緊張感を持って行われる。内藤正敏の作品群は、そんな、見てはいけないものを目の当たりにしてしまった感覚だ。場所はおろか、時間さえも分からなくなる。生と死の混沌とした世界へようこそ。

山崎博の作品群は、ここだけ撮影OK。
思いっきり減光して、長時間、太陽の運行を追った作品群だ。都内の異なった場所に同時にカメラを(何台も)設置し、撮影したとのこと。その時の設置場所を記した地図も併せて展示されていた。
写真家は、太陽に絵を描かせたかったのだそうだ。天空を横切り、一直線を描く太陽。曇りの日にはそれが点線となっている。光が光自身で描いた絵画。
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★ 感想

東京都写真美術館の収蔵作品数は約35,000点だそうで、それだけあれば収蔵品だけでもこんな企画展ができるんだぞ、という(?)シリーズ。もう何年も続いていますが、まいど、まいど、なるほどねぇと感心してしまいます。キュレーションが良いということなのでしょう。
確かに、四つのシリーズはその“場所”を強く意識させてくれます。小さな町だけど、一人の医者にとっては広すぎるなぁだとか、修行の場は光さえも違って見えるなぁ、などなど。
観光写真のように、単にそこにあるものを写しているだけではない。被写体だけを見れば、どこにあっても違和感がないようなものもある。それでも、こうやって写真として見ると、そこがどんな場所なのかイメージがすっと入ってくる。いやぁ、面白いものですね。

あと、このシリーズは収蔵品によるものなので、料金が安いのも魅力。友の会に入っていれば、何度でも無料で観ることができるという太っ腹さ。気軽にふらっと寄って、ここではないその場所へ引きこまれてみるのも良し。テーマも毎回分かり易いので、おすすめですよ。

★ 写真展情報

TOPコレクション イメージを読む 場所をめぐる4つの物語」展は下記の通り、開催中。





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