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「眠れる美女」 試写 : 人には自ら死す権利・自由があるのか [映画の感想]

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★ あらすじ

イタリアはある女性を巡って大きく揉めていた。十七年にわたって"植物"状態にあったその女性を尊厳死させることに宗教家だけではなく、政治家たちも反対を唱え、国中が騒乱状態になったのだ。そんな事件を背景に、三つの物語が綴られていく。

尊厳死をやめさせようとする政治家たちの中に、一人、静かな死を迎えさせるべきとの信念を持った議員がいた。そんな彼は、一人娘との間にある確執を抱えている。娘は尊厳死に反対するカトリック信者だ。だが、二人の間には心情・信念だけではない溝があったのだ。

かつて有名女優として富と名声を掴んだ彼女。今は舞台から遠のき、大きな屋敷に暮らしている。彼女の娘も植物状態でずっと寝たきりなのだ。経済的に問題のない彼女は屋敷内で娘の看病をし続けている。何人も人を雇い、娘の世話をさせている。
彼女の夫も俳優で、さらに息子も俳優志望。だが、娘につききりの妻・母とどのように接して良いか分からず、家族の気持ちはバラバラだ。そして今は別居中。娘の誕生日に久しぶりに屋敷にやってきたが家族の間にはギクシャクとしたわだかまり・互いを理解できないもどかしさがそこには満ちていた。

その女は薬物中毒。盗みを繰り返して食べつないでいる。だが、取り押さえられたり、拘束されそうになると自傷し、周囲を惑わせる。そんな彼女がある病院で騒動を起こす。薬を盗みに入ったのだ。掴まりそうになるとまたも手首を切る。
一応、ベッドに寝かされ、治療を受けるのだが、病院の医師たちは例の植物状態の女性がいつ死ぬかでかけをしている有様。薬物中毒の女のことを、厄介払いとばかりにさっさと退院させてしまおうとする。だが、ある医師だけは彼女をそのまま入院させ続け、自ら病室で付きそう。でも、彼女はまたも自殺を図ろうとする。医師はそれを遮る。
一方では植物状態からの開放のための尊厳死が世間を騒がせている中、薬物中毒の人生を悔いて自殺を試みる彼女を止める医師。薬物中毒者は死を選んではいけないのだろうか。

★ キャスト・スタッフ

  • 出演 : イザベル・ユペール、 トニー・セルヴィッロ、 アルバ・ロルヴァケル、 ミケーレ・リオンディーノ、 マヤ・サンサ
  • 監督 : マルコ・ベロッキオ
  • 脚本 : マルコ・ベロッキオ 、 ヴェロニカ・レイモ 、 ステファーノ・ルッリ


★ 感想

非常に重いテーマだ。眠れる森の美女は王子様のキスで目を覚ますことが出来るが、脳死"患者"は目覚めることがない。その死を認めるのか、宗教的理由(カトリックでは自殺は罪という意識が強い)から認めないのか。目覚めることのない"患者"の看病に人生を費やすのは無意味なのことなのか。脳死者の尊厳死は許されるのに、人生に絶望した人の自殺は止めねばならないのか。次から次へと重い問いかけが為される。
しかし、こんな重たい話だが飽きたり、途中で疲れてしまったりと言うことがない。役者の演技がとても迫力があるのだ。それに引き込まれ、ずっと緊張感を持って見入ってしまう。なので、あっという間に最後のシーンが来てしまった感じだ。もちろん(?)、見終わったあとにズンとくるものがあったが。

Memento mori. 人は誰でも死ぬ。それは避けられない。だが、脳死を死とするには未だ抵抗感を持つ人もいるだろう。私自身は「脳死は死であり、自分が、そして家族が脳死となったら臓器提供する」という考えを持っている。もちろん、違う考えを持つ人も一杯いるだろうし、今時点ではどちらが絶対的に正しいと言うことはなさそうだ。この作品を観ることによって改めて考えねばならない、思い出さねばならない(Memento)ことだと思い直したのでした。

それにしても、ここまでストレートにこんなテーマを扱う作品を作っちゃうなんて凄い。どう見ても商業的には"ヒットする"とは思えない。だが、売れる・売れないではない、語らねばならないという想いから作られたのだろう。そんな意気込みに報いるために、興味を持った人には見て欲しい作品だ。そして自分なりの考えをそこで整理するきっかけにして欲しい。

おすすめの一作です。

★ 公開情報









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コメント 2

JUNKO

重いテーマですが見たい映画ですね。
by JUNKO (2013-10-04 23:29) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
明日は我が身、かも知れませんし、考えるきっかけをくれる映画でした。おすすめです。
by ぶんじん (2013-10-06 10:12) 

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