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「隋唐帝国 (講談社学術文庫) 」 [読書 : 読んだ本の紹介]


隋唐帝国 (講談社学術文庫)

隋唐帝国 (講談社学術文庫)

  • 作者: 布目 潮風
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/10/09
  • メディア: 文庫


前に書いたように、中国の歴史を勉強中。今回で4冊目。「古代中国」、「魏晋南北朝」も読んだのですが、感想は割愛。
このシリーズ、おもしろいです。教科書的に事象を時間順に並べて記述するだけではなく、ちゃんと著者の主義主張の元に、その歴史の流れを解釈してくれています。それがとても納得感があるんですよ。なるほど、こういう観点で眺めればこんな風に言えるのか、という具合。

隋や唐の時代は、日本史でも遣隋使・遣唐使(あと、遣渤海使なんてのも)でおなじみ。漢の頃にはちっちゃな金の印鑑をもらったくらい(?)だったのが、留学生・留学僧が何人も往来して政治的にも文化的にもとてもつながりが強くなった時代です。そんな隋・唐は、「律令・仏教・儒教や使用文字としての漢字を共通の要素として・東アジア文化圏を成立」させていった、”世界帝国”的性格を持った国だった。年代的には、隋が誕生したのが581年。その隋が滅び、唐が起きたのは618年。そして唐が滅んだのが907年。日本だと飛鳥時代ですね。

著者は、この大きく栄え、そしてものの常として頂点に立った後は衰えていくという流れを辿ったこの時代を、どんな連中が支配集団として作り上げていったのか、そして壊していったのかを軸に語っています。国を支配するような集団には、貴族(土地の有力者の家系が定着していった、血統・家柄に根ざした人々)、武人(力で勢力を伸ばしていった集団)、官僚などがあるようですが、隋唐の時代は北方系の(漢人ではない)貴族的土着集団が核になって国を興し、律令体制が固まるに従って科挙(役人登用試験)で選ばれた官僚たちが力を持つようになっていく。が、だんだんと武人たちが発言力を持ち出していって、最後は農民たちの不満分子を結集する形で国を滅ぼすに至った、とこんな流れのようです。その時々でなぜ、その集団が力を持つようになったのかを追っていけば、時代の持つ意味がわかるという訳ですね。
それにしても国を動かすというのはやはり大変なこと。その時の勢いで国の実権を握りながら、その後が続かないというのもよくあることのようです。例えば農民一揆的な反乱がこの時代にも一杯起きるのですが、圧政を行っていた役人を追放したり殺したりして“自由”を勝ち取ったまではいいけど、どうすれば前よりいい暮らし(政治)ができるかわからずにその集団が解体していったり、代わりの役人をよこしてくれと皇帝に陳情するしかないといったこともしばしば。政権交代だけを目標にしちゃっていると、その後が続かないということなのでしょう。うむ、難しいものですねぇ。千年以上たった現在でも「歴史は繰り返される」状況のようです。

律令体制崩壊とともに徴兵制が崩れ、傭兵軍団が主流になっていくと、雇い主(皇帝や地方の有力者)よりもだんだんと兵士の方が発言権を持つようになるようです。待遇が悪いと命令に従わずすぐに戦場から離脱してしまったり、敵に寝返ったり。雇い主は傭兵たちのご機嫌取りに腐心するようになり、仕舞いには兵士たちが気に入らない雇い主を追い出して都合のいい人を親分に据えることも多かったようです。そう言えば、ローマ時代も末期になるとこんな感じで皇帝がころころ変えられていましたね。まさに歴史は繰り返されていくのでした。

歴史を勉強するのって、やっぱりおもしろいですね。中国四千年の歴史、まだまだ続きがあるぞ、と。がんばって読まねば。
ということで、この一冊も、そしてこのシリーズもおすすめです。


おまけ。
昨年、北京出張の時の一枚。二十一世紀の中国はどんな集団に支配されているのでしょうか。
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古代中国 (講談社学術文庫)

古代中国 (講談社学術文庫)

  • 作者: 貝塚 茂樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/02/10
  • メディア: 文庫
秦漢帝国 (講談社学術文庫)

秦漢帝国 (講談社学術文庫)

  • 作者: 西嶋 定生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/03/10
  • メディア: 文庫
魏晋南北朝 (講談社学術文庫)

魏晋南北朝 (講談社学術文庫)

  • 作者: 川勝 義雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/05/09
  • メディア: 文庫

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コメント 4

Ranger

ぶんじんさんは、いつも知的な本ばかり読まれますねぇ
隋唐帝国!Rangerは、題名を聴いただけでしり込みしそうです^^;

でも、ぶんじんさんの書かれている内容を読んでいると、すごく興味が沸きます
by Ranger (2010-07-27 13:55) 

ぶんじん

Rangerさんへ:
中国は出張や旅行でちょこっといっただけなのですが、それでも急に親近感が沸くんですよね。そして、もっといろいろと知りたいなと思うようになった訳です。
by ぶんじん (2010-07-31 23:03) 

TaekoLovesParis

岩波新書の「遣唐使」を読んで面白かったのを思い出しました。
隋唐に政治的面も学ぶことが多かった日本。
ぶんじんさんの<政権交代だけを目標にしちゃっていると、その後が続かない>
→ まさに今の状況。歴史に学べ、ですね。
高校生のとき、買ってもらったけど、挫折したのは、貝塚茂樹の「中国の歴史」。
今なら読めるかな。。

ぶんじんさんの記事は、私が忘れている勉強的な側面を思い出させてくれて、
有意義です。
by TaekoLovesParis (2010-08-01 09:29) 

ぶんじん

TaekoLovesParisさんへ:
上で紹介している講談社学術文庫の「古代中国」も貝塚茂樹らによるものです。最初の方の土器の変遷の辺りはちょいと飽きますが、“有史”以降はおもしろかったですよ。
by ぶんじん (2010-08-01 23:10) 

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