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「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」展 すごいコレクション! [美術 : 美術展、写真展紹介]

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三菱一号館美術館で開催中の「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション」展内覧会に行ってきました。
例によって特別な許可を得て写真撮影しています。通常は、一部エリアを除いて撮影禁止です。

★ 展示内容

以下、岩瀬 慧学芸員とTakさんによるギャラリートーク の内容を盛り込みつつ、内容説明です。
こちら、オシャレ学芸員の岩瀬さん。
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公式サイトによると
建材メーカーとして知られる吉野石膏株式会社が、長年の蒐集により形成してきた西洋絵画のコレクションは、優しく、親しみやすい作品群であり、その質の高さは世界に誇るものです。
本展では、国内有数の量と質を誇るシャガールの油彩画。ルノワールの初期から晩年までの重要な作品。モネ、ピサロ、シスレーら印象派の画家の詩情豊かな風景画やピカソの珍しい風景画。 また、ルノワール、ドガ、カサットによる、油彩画とは異なる表現の探究が見られるパステル画など、 選りすぐりの作品にご注目ください。
とのこと。当時のフランスを中心とした芸術の流れを概観できる企画展となっている。
展示構成は
  • 1章 印象派、誕生 ~革新へと向かう絵画~
  • 2章 フォーヴから抽象へ ~モダン・アートの諸相~
  • 3章 エコール・ド・パリ ~前衛と伝統のはざまで~
と言う形で時代ごとに区切り、さらには画家ごとに作品を集めて各コーナーを設けている。

通常の美術展だと、展示室の灯りは100ルクスくらいにするそうだが、今回は70ルクスほどに落としている。それでも作品が明るく見えるのは、まさに印象派ならでは。

印象派の先駆けとも言えるコローの作品は、それまでの宗教色を廃した純粋な風景画。フランスの明るい風景が広がっている。
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伝統的なサロンでも入選を何度もしていたカミーユ・ピサロはその後、第一回印象派展(と後に呼ばれるようになった展覧会:1874/4)から作品を出品している。
点描画のような技法も見られ、明るい庭園を描いた作品はまさに印象的。
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ルノアールの作品群が並ぶ。彼も、プロのモデルを使うことは少なく、”知り合い”をモデルにして描くことが多い。「シュザンヌ・アダン嬢の肖像」もその一枚だが、パステル画で描かれていて、油彩画とはまた違った色合いを醸し出している。
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印象派の画家の中でも、存命中に有名になり、多くの収入を得たものもいれば、シスレーのように貧しさの中、喉頭ガンで亡くなってしまうものもいた。モネたち画家仲間はそんなシスレーのために追悼展を開く。そして、シスレーの作品や、画家たちがその追悼展のために描いた絵を販売し、売上金を遺族へ寄贈したのだ。売れた絵画の中では、シスレーの作品が一番高値がついたそうだ。
その時に出品されたルノアールの作品が展示されている。また、別のコーナーではその追悼展に出品されたシスレーの作品も展示されている。120年の時を経て、日本の地でまた一緒に展示されることになるとは、ルノアールもシスレーも想像できなかっただろう。
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その、シスレーの作品がこちら。
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ゴッホの作品。金細工師から「最後の晩餐のような、食堂に飾る豪華な作品」との注文を受けて描いたそうだが、農地を歩む農民たちを描いたものにしてしまった。ゴッホ好みの題材で、農民に対する神聖な視線が感じられる。
ただ、人物描写はぎこちなく、”肩が凝りそうな”カチカチに固まった姿勢だ。これでは歩きにくかろう。
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次の章ではフォーヴィスム(野獣派)や抽象画へと進んでいった画家たちの作品が並ぶ。
アルベール・マルケはフォーヴィスムの画家。私はあまり馴染みがなかったが、フォーヴィスムと分類されるものの、色合いは穏やかで美しい風景画は落ち着いて見られるものが多い。
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「色彩の魔術師」と言われたアンリ・マティス。静物画も華やかだ。バックの水色と、花瓶のちょっと薄い水色のグラデーションが面白い。
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エコール・ド・パリの時代に進む。
モーリス・ユトリロの描く町並みは、相変わらず人の気配がない。
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マリー・ローランサン。「エコール・ド・パリ」の画家たちの作品にはあまり共通の技法や表現がなく、どれも個性的だ。その時代に、同じパリにいたというのが唯一の共通点か。
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マルク・シャガールのコレクションがこれまたすごい。量・質ともに国内有数のものだ。ただ、残念ながら(シャガールが長生きしたので。。。:1985年没)著作権が生きているため、写真撮影ができなかった。残念。

★ 感想

三菱の岩崎家、住友財閥の住友家などのコレクションがすごいのは三菱一号館美術館静嘉堂文庫美術館住友コレクション 泉屋博古館などの所蔵品(国宝、重要文化財が一杯!)を観てきていたので知っていました。が、吉野石膏と言う会社、全く知らなかったのですが、すごいコレクションを所蔵しているんですね。ビックリ。公益財団法人吉野石膏美術振興財団を設立してこれらコレクションを管理しているそうです。美術品検索のページに作品を所蔵してる画家のリストがあるんですが、いやぁすごい、すごい!!
そんな収蔵品の中から選りすぐられた逸品ぞろいの企画展ということで「へぇ、こんな作品も所蔵しているのか?!」と唸りながら観て回ったのでした。

画家ごとに作品が並んでいる場合、「自分は誰の絵が好きなのだろう?」「誰の絵は“趣味が合わない”のだろうか?」と考えながら観るのが好きです。芸術作品としての評価や、美術品としての“市場価値”など、色々な見方がありますが、そんなに美的センスもないし、ましてや購入の対象として見ることもないので、あとは全く好き勝手に「気に入った・気に入らない」で判断していくのみ。無責任な鑑賞者もいいところですね。
で、今回気に入ったのはシスレーとカンディンスキー。シスレーが描くキラキラ輝くような風景は、ノスタルジーと言うより、単純に“ロハスな暮らし”に憧れる都会人が好む感じ。日々の暮らしに少々疲れた自分には、観ているだけで癒やされる感じがしたのでありました。
一方のカンディンスキーは、“Moderate Variation”って作品が、観ているだけで楽しい気分にさせてくれるんですよ。例の赤・青・白・黄の「コンポジション」とは違って、幾何学模様であるのだけれど円(円弧)が多用されているんで、なんか可愛らしく見えるんですよ。原色ギラギラじゃないところも良し。気に入りました。
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題名の通り、印象派の黎明期から、その後の流れまでを概観するのにとてもよい作品群たちでした。さて、みなさんはどの画家の作品が好み? 自分の一枚を見つけてくださいな。

★ 美術展情報

「印象派からその先へ」展は下記の通り、開催中。
写真撮影スポットもありました。印象派の作品の中に入り込んでセルフィできますよ。
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JUNKO

この美術館は入ったことがあります。近くで同窓会があるので。
by JUNKO (2019-11-09 16:40) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
駅からも近いし、気軽に立ち寄れますね。
by ぶんじん (2019-11-09 21:26) 

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