東京都写真美術館 「建築 × 写真 ここのみに在る光」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]
東京都写真美術館で「建築 × 写真 ここのみに在る光」展を観てきました。
★ 展示内容
公式サイトによると、本展では東京都写真美術館のコレクションを中心として、さまざまな建築を捉えた写真を展示します。写真が発明された頃からどのような建築が写されてきたのか、そして現代の写真家がどのように建築を捉えてきたのかを紹介します。その中には、今ではすでに存在しないものや、実際に見ることが困難なものも少なくありません。写真家が建築を撮るときに感じた光を追体験していただけることでしょう。とのこと。
展示構成は以下の通り。
- 第1章 建築写真の歴史 ~東京都写真美術館コレクションより~
- 第2章 建築写真の多様性 ~11人の写真家たち~
渡辺義雄、石元泰博、原直久、奈良原一高、宮本隆司、北井一夫、細江英公、柴田敏雄、 二川幸夫、村井修、瀧本幹也
古くは1840年代のダゲレオタイプ(銀板写真)の作品から始まり、各時代の写真家たちが残した街並み、摩天楼、寺院などの写真が並ぶ。フェリーチェ・ベアト、ウジェーヌ・アジェ、ベレニス・アボット、ウォーカー・エヴァンスらの収蔵作品からセレクトされたものだ。
第二章では、渡辺義雄の「伊勢神宮」、石元泰博の「桂離宮」、村井修の「丹下健三の作品群」、奈良原一高の「軍艦島」、細江英公の「ガウディの作品群」など、それぞれの代表作が並ぶ。
★ 感想
冒頭の説明書きにもあったが、建築物は写真の被写体として相性が良い。特に、初期の写真撮影は膨大な露光時間を必要としていたので、“止まっている”ことが重要だったからだ。そして、建築物自体も“用の美”の最たるもの。存在自体がモニュメントであり、神の威光の体現である寺院・仏閣はもちろん、芸術的建築家のアート作品としての建造物もそれら自体が強いメッセージ性を持ち、また様々な表情を持っている。写真としてそれらをいかに切り出すか、どう見せるかで作品性に大きな違いが出る。そしてそれが写真家の意図を入れ込む余地を生み出している。
と、そんな感じで建物を撮った写真は、被写体である建物の面白さと、写真家の想いと、両方を一度に楽しめる“お得な”芸術じゃないかと思う。
私自身も、自分の思いを表現できるほどの腕前は全くないけれど、建築物の面白さそのものを切り取ることはできるだろうと思い、建造物の写真を撮るのが好きだ。そして、建造物の写真を見るのももちろん好き。
歴史的な建築写真というと、色んな写真家が思い浮かぶが、やはりウジェーヌ・アジェがお気に入りだ。街角の何気ない風景を撮っただけなのに、歴史的な記録としての価値はもちろん、そこから感じ取れる無言のストーリー性がジワジワと染み入るように感じられるのがいい。長時間露光で、そこを歩いていただろう人は陽炎のようにしか写っていないのもいい。時の流れ、かつて生き、生活していた人々の息吹、それらをじっと見つめる建物。そんなものが入り交じった世界はとても奥深い。
宮本隆司の「九龍城砦」シリーズも迫力満点。映画「ブレードランナー」の世界がまさにそこに広がっていた、という感じ。外から見るだけでも、まさに“近寄りがたい”雰囲気なのに、写真家は果敢に入り込み、今は亡きその姿を写していた。犯罪組織の拠点でもあったという話だが、一方で普通の人々の生活もそこにあったわけだし、その混沌さに惹かれてしまう。屋台で菓子(?)を売っているおばちゃんの姿がなんとも存在感があった。
建築写真の歴史と、建築物の面白さと、写真家たちの個性と、色んなものを楽しめる企画展だった。
★ 写真展情報
「建築 × 写真 ここのみに在る光」展は下記の通り、開催中。
- 会期 : 2018/11/10(Sat) - 2019/1/27(Sun)
- 開館時間 : 10:00 - 18:00(木・金曜日は20:00まで)
- 休館日: 月曜日、12/25(Tue)、1/15(Tue)、12/29(Sat)-1/1(Tue)
12/24(Mon), 1/14(Mon)は開館 - 料金 : 一般600円 学生 500円 中高生・65歳以上 400円 小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料
- 公式サイト :建築 × 写真 ここのみに在る光
- 図録:3,000円(税込)
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