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三菱一号館美術館 「フィリップス・コレクション展」 個人コレクションの魅力は配置順?! [美術 : 美術展、写真展紹介]

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三菱一号館美術館で開催中の「フィリップス・コレクション展」ブロガー向け内覧会に行ってきました。
例によって、特別な許可を得て写真撮影をさせてもらいました。通常は一部のコーナーを除いて撮影禁止です。

★ 展示内容

米国ワシントンにある私立美術館 フィリップス・コレクション は、断簡・フィリップスのコレクションを展示している美術館。昨年、開館百周年を迎えたこの美術館は、米国で最初の近代美術を扱う美術館だ。

● 展示作品

今回はそんなコレクションの中から75点が展示されている。以下、Tak(たけ) さんと学芸員さんによるトークショーの内容も交え、展示品をご紹介。

今回、展示構成をどうするかで色々あったそうです。画家ごとにまとめるとか、制作年代順とか、通常だとこんな感じになるはず。でも、フィリップス・コレクション側の担当者がそれでは納得しなかったのです。彼らはどのように作品を見せるかにとてもこだわりがあるそうで、“意味づけ”が重要だったとか。結局、ベースは「購入順序」で並べるとなったそうです。それでも、各展示室ごとに色々と“チェック”が入り、それぞれの絵が持つ雰囲気や構図などを元にした並び順に変えたところも。「雰囲気や構図」と言われても、多分に感覚的なことですからね。三菱一号館美術館の学芸員さん達も大変だったでしょう。
でも、その結果として「なんでこの画家とあの画家の作品が一緒に並んでいるの?」と思わせるところがあちこちに。謎解きではないですが、その意図を探りながら観るのも面白いでしょう。
一応(?)、構成は以下の通り。
  • Chapter 1 : 1910年代後半から1920年代
  • Chapter 2 : 1928年の蒐集 フィリップスの思考形成
  • Chapter 3 : 1930年代 理想の蒐集品
  • Chapter 4 : 1940年前後の蒐集
  • Chapter 5 : 第二次世界大戦後
  • Chapter 6 : ドライヤー・コレクションの受け入れと晩年の蒐集品
  • Chapter 7 : ダンカン・フィリップスの遺志


クロード・モネの「ヴェトゥイユへの道」。フィリップス・コレクションは“近代美術”作品を集めたとあるが、米国での“近代美術”とは印象派を含まない(!)、その後の作品群のこと。そんな中でのこの一枚。
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ポール・セザンヌの「自画像」。当初、フィリップスさんはセザンヌ作品が嫌いだったとか。でも、後に評価が変わっていったそうです。
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ピエール・ボナールの「棕櫚の木」。リンゴを持っている女性はボナールの妻だと言われています。フィリップス・コレクションは、オルセー美術館に次いで世界で二番目のボナール作品が集まっているのだそうです。
この展示室の壁にはもう一枚、ボナールの「開かれた窓」も展示されていて、こちらは猫が特徴的。でもボナールさん、犬は飼っていたけど、猫はそこら辺の野良猫をモデルにしていたのだとか。
さらにはその二枚に挟まれるようにパウル・クレーの「養樹園」が掛かっています。この並びがフィリップス・コレクションのこだわりのようです。この三作、構図的には画面が三分割された配置になっているのが“共通点”らしい。。。
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ジョルジュ・スーラの「石割り人夫」。スーラというと“点描”のイメージが強い、と言うか、それ以外の作品を知らないのですが、こちらはスーラ最初期の作品。当時は労働者を描いたものが多く、ミレーやクールベの影響だと思われる。
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アンリ・マティスの「サン・ミシェル河岸のアトリエ」。
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「サン・ミシェル河岸のアトリエ」はフィリップス・コレクションにおいてこんな雰囲気で展示されているそう。
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ワシリー・カンディンスキーの「連続」。フィリップス・コレクションは抽象絵画のコレクションも豊富。
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アルベルト・ジャコメッティの「モニュメンタルな頭部」。フィリップス・コレクションは絵画だけではなく、彫像作品もあります。フィリップスさんはジャコメッティを高く評価し、ジャコメッティの展覧会も開催したそうです。
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● こだわりのグッズ

今回の企画展では関連グッズにもこだわりが一杯。
ミュージアムショップの企画展コーナーでは、中心にこのミニチュアハウスがどんとお出迎え。フィリップス・コレクションのある展示室を忠実に再現したもの。プロのミニチュアハウス作家に依頼し、制作されたもので、ソファーは生地から作ったのだとか。
また、掲げられている絵画は、絵画そのものはもちろん、額縁も本物の写真をこのために撮影してもらい、再現されています。
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ドールハウスそのものは一点物なので非売品(要相談らしいですが、かなりの値段になりそう・・・)ですが、ミニチュア絵画はこんな感じで販売されています。複製画の販売は美術展に付きものですが、このサイズは初めてではないかとのこと。
ドールハウスは世界標準で1/12スケールと決まっているそうです。もちろんこのミニチュア絵画も1/12。なので、もしご自分でミニチュアハウスをお持ちならば、その部屋にこのミニチュア絵画を飾るとピッタリ!
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通常は三十種類ほどしか作られないポストカードも、今回は六十四作品が用意されています。しかも、フルコンプ(!)した箱入りセットも限定で販売されているとのこと。セット品、かなりお得な値段設定になってます。
「図録を買った方が、もちろん安いですが。。。」「展示作品は75点。ポストカードになっていない作品が何かをチェックしてみるのも面白いかも」なんて話もありました。
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音声ガイドも用意されています。
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★ 感想

個人のコレクションを展示した私立美術館は色々ありますが、このフィリップス・コレクションはその中でも個性的なコレクションですね。上記の通り、並び順がユニーク。どういう意図を持ってこの並びになっているのか、深い意味があるんですねぇ。そのため、各作品の横に付ける説明文にも、今回の展示のための番号と、フィリップス・コレクションとしての番号の二つが書かれています。研究者が画家の作品にナンバーを振ったりしているのはあるけど、こんなの初めて見たかも。
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フィリップスさんも年代によって趣味趣向が変わっていき、そのために購入作品の傾向も違いがあるようです。購入年代順の展示構成になっているので、その辺りを考えながら観るのも面白いかも。
あと、自分のお気に入りを探してみるのも良いですよ。これだけバラエティに富んだコレクションなので、好き嫌いもありそう。たとえば、ゴッホの作品は、実は苦手。ちとギラギラし過ぎていて目が疲れちゃう。
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エドガー・ドガの「稽古する踊り子」。こんな作品の方が好きかな。バレリーナって、人の身体の動きに目を惹かれるし、ドガの色調は私に合っているのかも。
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丸の内イルミネーション2018が11/8から始まるそうです。この美術展を観て、そのあとイルミネーション見物。そしてどこかの店でディナー。なかなか良いコースじゃないですか。おすすめですよ。

★ 美術展情報

「フィリップス・コレクション」展は下記の通り、開催中。




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コメント 4

JUNKO

おっと今回はジャスト、来週丸の内の明治生命会館に行きます。ちょっと抜け出して行かせてもらおうかな。こんなチャンスないですから。
by JUNKO (2018-11-10 16:33) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
おお、すぐそばですね。おすすめですよ。
by ぶんじん (2018-11-10 21:04) 

JUNKO

見てきましたよ。とてもよかったです。ここは毎年通って中庭で一休みもしているのに、展覧会が開催されるなど知りませんでした。改めてぶんじんさんの説明を読むととてもよくわかりました。ありがとうございます。
by JUNKO (2018-11-16 22:38) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
参考になったようで幸いです。
by ぶんじん (2018-11-17 21:55) 

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