国立公文書館の「ふらっとツアー」に参加 : 記録を残すということは大事な、大事なことですよ [美術 : 美術展、写真展紹介]
★ 国立公文書館の「ふらっとツアー」とは
最近、国立公文書館がお気に入り。最初は通院帰りにふらっと寄ったのが始まりでした。無料で貴重な資料展示が見られるし、「国立公文書館 「平家物語―妖しくも美しき―」展 平清盛、源頼政、木曽義仲など、豪華スター大集合」で紹介したような企画展もあるし、良いですよ、ここ。そんな国立公文書館が不定期で見学ツアーを開催しているのを知り、ちょうど“秋休み”で暇をしていたこともあって、参加してきました。
本日(10/10)、当館のバックヤードをめぐる「ふらっとツアー」を開催しました。お集まりいただき、ありがとうございました!次回は特別展の夜間開館にあわせて、10月25日(木)に「ふらっとナイトツアー」を開催します。ぜひご参加くださいね!https://t.co/puVit8ejMB pic.twitter.com/GN4mynH4iK
— 国立公文書館 (@JPNatArchives) 2018年10月10日
国立公文書館見学(ツアー)のご案内:国立公文書館で紹介されている通り、個人で見学するには、事前予約が必要な国立公文書館友の会会員向けツアーなどと、事前予約不要の「ふらっとツアー」があるとのこと。
「ふらっとツアー」は、月に一回程度の開催で、開始十五分前に受付に行って名前を書けば誰でも参加可能。時間は約一時間。資料展示室や修復室、そして地下書庫(の手前)を、解説付きで見学できます。この“解説”がかなり熱のこもった語りで、質問にも丁寧に答えてくれ、いわゆる“神対応”でした!
★ 地下の書庫に潜入?!
そんな「解説」からちょこっとご紹介。現在、国の公文書を管理する組織は三つあるそうです。
- 外交資料館:外務省の管轄。外交関連文書が保存されている。
- 宮内公文書館:宮内庁の管轄。皇室関係の文書が保存されている
- 国立公文書:上記以外の文書全て
ただ、意外なことに公文書に関するきちんとした法律が整備されたのは最近のことだそうです。それが「公文書等の管理に関する法律」です。もちろん、その前から「公文書館法」として法律はあったものの、管理・保存すべき文書の選別は各省庁の判断だったのだそうです。あらまあ、これでは隠蔽・買い残なんて問題が出てくる訳です。それを反省しての、法律制定だったのでしょう。
とは言え、現在は移行期間中で、まだ全ての文書が公文書館管理になっている訳ではないそうです。例えば、立法府の文書はまだ内閣が管理しているし、司法府の文書は移管中。さらに刑事事件資料は検察庁管理なのだそうです。例外的に東京裁判、軍法会議の資料は移管済みとのこと。
そんな国立公文書館では現在、資料のデジタル化とインターネットによる公開に力を入れているそうです。
公文書館管理の文書は、重要文化財になっていたりするもの意外は基本的に誰でも原本(!)を閲覧可能となっています。とは言え、この場所に来なければ閲覧できないし、写真撮影は可能とは言え、貸し出ししてくれる訳ではなく、閲覧室でしか見ることができません。
より便利に、そして気軽に使ってもらうための施策がデジタル化。現在、二割がデジタル化済みで、国立公文書館 デジタルアーカイブで公開されています。このサイト、ユーザー登録などは必要なく、誰でも閲覧可能。しかも、資料はJPEGなどでダウンロードすることもできるのです。これ、かなり画期的なことですね。
現在は、上記の非公開になっている貴重資料を優先的にデジタル化していて、日本国憲法等の本物が自宅で気軽に見られるようになってます。
残念ながら閲覧室と修復室は写真撮影できなかったのですが、地下書庫(の手前)は撮影OKでした。
と言っても、資料保存のため通常は書庫内は電灯が消されています。中の様子はこんな感じ。
温度22℃、湿度20%(だったかな?)に常に保たれていて、現在、年間三万冊が新たに収蔵されて行っているそうです。
ただ、実は竹橋のこの国立公文書館の書庫はもう満杯で、新しい文書は茨城県つくば市にある つくば分館 に収蔵しているのだとか。
と思っていたら、ちょうど職員さんが資料の出し入れ作業で書庫から出てくるところに遭遇。その間、一分くらいでしょうか、書庫内に灯りが。すかさず写真を撮りました!
この書庫ですが、場所的には建物の前に広がる広場のようなところの地下だそうです。なんかだだっ広い空間が広がっているなぁと思っていたんですが、そういうことだったんですね。
官庁でも公文書のデジタル化、デジタル文書による決裁などを進めているそうですが、まだ数%。それに、上記のデジタルアーカイブもそうですが、デジタルデータはフォーマットや保存媒体・デバイスの変化(進化)が速すぎて、“移し替え”作業が問題になると予想されています。確かに、フロッピーディスクで保存していたデータ、今だと読み出すデバイスが簡単には手に入らないですよね。“永久保存”が使命の国立公文書館としては大きな問題だそうです。
★ 憲法原文の見どころ(?)
国立公文書館 デジタルアーカイブでも閲覧可能な日本国憲法などの原文ですが、一階の展示スペースでもレプリカを見ることができます。さらには、現在開催中の「平成30年秋の特別展 明治150年記念「躍動する明治-近代日本の幕開け-」」展で、大日本帝国憲法の本物が展示されていて、見ることができます。それがこれ。解説の方によると、展示されるのはほぼなく、次は数十年後ではないかと。。。
鳥の子紙 - Wikipediaという和紙に十行の欄が設けられた用紙に書かれています。天皇の印鑑である「御璽」が七行分のスペースを取るので、そのページには文章を三行のみしか書いてはいけないのがルールだそうです。ボンと大きなハンコを押し、その上に天皇のサイン「御名」が書かれるのが正式な書式。
ところが、唯一、このルールを破った公文書があるのです。それが「終戦の詔書」です。あの玉音放送で読み上げられた奴ですね。ポツダム宣言受諾のリミットが迫っている中、急いで書き上げたために、きちんと清書する暇もなかったようです。そのため、文書の書き直し箇所、吹き出しによる追加箇所などがあり、さらには御名御璽のページの文章が四行になってしまっています。そのため、御璽が文章にちょっと掛かってしまっているのです。こんなのは後にも先にもこれだけだそうで、それだけ切羽詰まった状況だったのだと言うことが見て取れるのでした。
いやぁ、こんなの、説明してくれないとなかなか気が付かないもの。この話が聞けただけでもふらっとツアーに参加した価値がありました。
ちなみに、「日本国憲法」は、書式はきちんとしているものの、終戦直後の物資不足のために、紙の質も悪く、サイズも小ぶり。本文に至っては酸性紙のわら半紙(劣化がひどく、長期保存に適さない紙)に印刷されている状態。なんか、敗戦後に「今は大変な時期だけど、これから頑張っていこう!」という意志がそこから読み取れる気がしてきました。
「歴史は勝者が作る」とは良く言われること。平家物語が分かり易いですが、負けた側は悪く書かれてしまうもの。中立な立場で記録を残すのはとても、とても重要なこと。その意味で、国立公文書館の活動には注目していきたいし、我々ももっと関心を持つべき。そうでないと「消えた年金」だの「文書改竄」だのの問題がなくなっていかないでしょう。
いい勉強になりました。
2018-10-11 10:16
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コメント(4)
文書館の中はこんなふうになっているのですか。
by JUNKO (2018-10-11 16:26)
JUNKOさんへ:
造りは図書館も似たようなものなのでしょうが、管理がより厳重という感じでした。
by ぶんじん (2018-10-12 07:41)
22日に帰ります。なかなかチャンスなしです。
by JUNKO (2018-10-12 21:03)
JUNKOさんへ:
館内見学は特定の日ですが、企画展は無料でいつでも見られます。
by ぶんじん (2018-10-13 20:59)