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「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」展 欧州でのマスメディア誕生の歴史 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

ShareArtさんから招待券をいただき、国立西洋美術館で開催されている「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」展を観てきました。

15世紀後半から16世紀初頭にかけてドイツで活躍した銅版画家 イスラエル・ファン・メッケネムの作品と、彼が“フィーチャー” / “リスペクト”した“元ネタ”の作品を併せて展示した企画展でした。
メッケネムは、その当時、人気のあったショーンガウアーやデューラーなどの作品をコピーし、(当時の)ドイツ全土はもちろん、ヨーロッパの他の国々にもアート作品を普及させた人です。
作品の基本的なテーマはもちろん、キリスト教の教義や聖人達の姿。でも、彼はそれだけではなく、持っているだけで罪が許されちゃう免罪符的な作品を大量に売りさばいたり、俗世間の風俗を垣間見せるような風刺画(今だとコミックや週刊誌のようなものだった?)も作成しています。
そんな辺りを考えると、彼は当時の「メディア王」的な人だったのかもしれませんね。

展示構成は主題別になっていて、以下の通り。
  • Ⅰ メッケネムの版画制作の展開とコピー
  • Ⅱ 聖なるもの : キリスト教版画
  • Ⅲ 俗なるもの : 世俗主題版画
  • Ⅳ 物語る版画家
  • Ⅴ 初期銅版画とデザイン、工芸
となっていて、コピー元の作品も併せて展示されているものも多数あります。
また、銅版画がどのように人気を得て、展開されていったのかも分かるようになっています。初めは真面目にキリスト教の教えを忠実に伝えようとしていたのに、だんだんと俗っぽさが滲み出てくるようになります。

この時代、キリスト教は聖人伝説が持てはやされた頃。迫害を受け、拷問で死んだ殉教者はもちろん、夢の中で(?)キリストが“身体の中に入ってきた”体験をした女性など、八百万の神々よろしく、各地で聖人がフィーチャーされてました。そんな中、銅版画は“おらが村の聖人”の姿を誰もが(と言う訳でもなかったでしょうが)持てるようになる、画期的な技術革新だったようです。聖母マリアを初め、聖バルバラやら聖ラウレンティウス、聖バルトマイ、聖アグネス、聖フランチェスコなどを描いた作品が展示されていました。

俗世間を描いたもので興味を惹いたのは「モリスカダンス」。ぴっちりとした全身タイツのような衣装を身にまとったダンサーがクネクネと踊っている様子を描いています。当時、流行したダンスのようで、かなりセクシーな意味合いを持っていたみたい。今見ても、かなり“いっちゃっている”ダンスのようです。当時は相当、センセーショナルだったんでしょうね。

「Ⅴ 初期銅版画とデザイン、工芸」のコーナーでは、デザインのパターン画というか、デザイン見本のような作品が並んでいました。版画家が習作として作ったり、まさにデザインの見本帳として作ったりしたものだそうです。それにしてはこれだけで一つの作品として立派に成立している、魅力的なものばかり。一見の価値ありです。

★ 感想

コピー作品は、コピーであることがとても分かり易い。観てすぐに分かるんですが、絵が鏡像になっているんです。そう。版画ですから、人の作品をそのまま銅版にコピーすると、その銅版で刷った絵は左右が反転してしまうと言う訳。でも、あんまりそんなことは気にしなかったんですね。
受胎告知を描いた作品があるんですが、元はショーンガウアの描いたもの。それをコピーしたメッケネムの作品は、マリアが左側に、天使が右側にいるんです。ダ・ビンチの作品の印象が強すぎるのか、人物の配置が左右逆というのはかなり違和感がありました。
コピーライト(著作権)の意識が現代とは異なっていたのでしょう、今見ると、これはアウトだろう・訴えられちゃうよってものばかり。時代背景・人びとの意識・当時の常識を知る・考えるだけでも面白い企画展になってます。

小さい作品が多いし、かなり緻密に描かれたものも多数あり、ルーペを持参すると良いかもしれません。いや、作品を傷つけちゃいけないから、単眼鏡・双眼鏡の方が良いかな。とにかく、気合いを入れて観に行きましょう。
もうすぐ終わってしまうのですが、おすすめです、この企画展。


そうそう。国立西洋美術館はもちろん、上野の街全体で、ル・コルビュジエがデザインした(総指揮して、弟子に作らせた?)建物が世界遺産になったと言うことで、大盛り上がりでしたよ。改めて、美術館の建物を眺めてみるのも良いかもしれませんね。
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★ 美術展情報

「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」展は下記の通り、開催中。





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