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「フランスの風景 樹をめぐる物語」展 : 遠出をしないGWに、新宿で森の中を散歩気分 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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「フランスの風景 樹をめぐる物語 コローからモネ、ピサロ、マティスまで」@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 [広告]で紹介した美術展に、WindamArtPRさんから招待券をもらって行ってきました。

★ 展示内容

おおまかに、年代やタイプ(XXX派)をベースに分類され、展示されています。章立ては以下の通り。
  • 第1章 : 戸外制作の画家たち
  • 第2章 : 印象派の画家たちと同時代の風景画
  • 第3章 : ポスト印象主義と20世紀前衛芸術への試み
全部で百点程度でしょうか。
カミーユ・コローやギュスターヴ・カイユボット、クロード・モネ、そしてモーリス・ドニにアンリ・マティス、さらにはフェリックス・ヴァロットンと、ここら辺までならば私も馴染みがある(最近、知った画家もいますが・・・)けど、基本的には”初めまして”の画家さんがいっぱい。そのためか、いつも以上に各作品や画家に対しての説明書きが多めに掲載されていました。なので、どんな人が描いたの?ここに描かれているのはどこ?なんてのが知識としても得られるので”納得感”を持って鑑賞できますよ。

習作として描かれた作品の中に、所々に画家自身が「色指定」の言葉を書き込んでいるものがあります。「(ここは)オレンジ」って感じ。アニメのセル画下絵みたいでちょっと面白かった。これ、プチ情報。フランス語なので、なんて意味かわからない(そもそも読めない)のが多く、あの訳語も解説に載せてくれたら良かったのに。

★ 感想

私も下手くそながら風景を写真に撮ることは多く、山の緑や公園の草花などには”親近感”を持っている。GWの今、東京の公園は新緑の季節。どこに行っても緑が眩しいくらいにキラキラ輝いている。素直に美しいと感じる。この感情の根底には、子供の頃から慣れ親しんでいる文学上の自然賛美(和歌や俳句は元より、自然の美しさを謳う作品は多い)だったり、科学的興味(人間も含めた生態系への親しみや、地球環境の大循環の壮大さなど)だったりといった知識があるから、という面もあるだろう。
だが、「「中世美学史 「バラの名前」の歴史的・思想的背景」 : 中世ヨーロッパの人びとには世界がどう見えていたのか」などでも学んだように、中世ヨーロッパのキリスト教的自然観はちょっと違っていた。それは神の啓示を示すメッセージであり、神に従属するもの・かくあらねばならないものだった。そのため、風景自体を素直に”美しい”ということに抵抗があったようだ。
だからこそ、その観念・共通認識を超え、風景自体が美しい、それを絵画として描くことに意味があるという考え方に変わった時代は、まさに「パラダイムの変革」が起きた時だった。森の中の木々を描いた”だけ”の絵を美しいと感じるようになった、そしてそれが公にも認められるようになった(「印象派」と名付けられ、認知され、画壇でも評価されるようになった)のは、思った以上に大きな出来事だったのだろう。

と、長々と書きましたが、そんな訳で森や村外れの木々を描いた作品がずらりと並ぶ今回の企画展、意外と奥は深いぞと言いたかったのです。
十九世紀、二十世紀初め頃のフランスでの教育内容を知らないので、画家たちの知的背景がどんなものだったかよくわかりませんが、彼らの美的感覚が時代の先端を行き、自然の美しさを人々よりも先に感じ取っていたのでしょう。パリ郊外のフォンテーヌブローの森やバルビゾン村などに惹かれ、木々や草花を描いた彼らの感性は、現代の私達に近いのかなと思います。
特に木々は、季節によってその表情を変え、新緑のきらめき、黄葉、枯れ葉、葉が落ちて枝のみになった冬など、描かれる対象としても面白い・惹かれる存在だということなのでしょう。

細長く区切られた展示スペースを歩きながら作品を観るからでしょうか、だんだんと森の中の小道を歩いているような、そんな感じにさせられました。外はまさに新緑がきらめいていて街路樹も緑が眩しい。その記憶が新しいせいか、作品群観ていると森のざわめきが聞こえてきそうな気分にもなります。

まさにこの季節に観るべき美術展ですね。上野辺りの美術館・博物館はどこも大混雑でしょうから、それよりは余裕を持って鑑賞できるところもグッド。おすすめです。

★ 美術展情報

「「フランスの風景 樹をめぐる物語」展は下記の通り、開催中。



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