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「エディアカラ紀・カンブリア紀の生物」 : さらに理解が深まってきた彼ら。やっぱりワンダフル! [読書 : 読んだ本の紹介]

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★ あらすじ

● 原始生命の時代

最古の生命の化石は34億6500万年前の地層から発見された、1mmに満たない、シアノバクテリアではないかと言われている糸状のものだ。ただし、生物の化石ではない、との反論も出ている。
真核生物(細胞の中で核が局在化している(細胞内組織にまとめられている))の最古のものは約21億年前のものだ。数ミリから数センチの大きさを持つそれら化石は「グリパニア・スピラリス」と名付けられている。
動物の中で最古のものは約7億年前の地層から発見された化石で、大きさは0.3mm - 5mmほど。リン酸塩でできた"殻"をもっている。その表面には無数に小さな孔が空いていて、そこからプランクトンなどを水とともに取り込んでいたと思われる。「オタヴィア・アンティクア」と名付けられている。

● エディアカラ紀

第二次大戦が終わる頃まで、5億4100万年前から始まる古生代から生物の歴史は始まったと思われていた。しかし、終戦直後の南オーストラリアで、生物本体ではないが、その形が鋳型のように岩石に残る形でできた何体生成物の痕跡が見つかった。それは約6億3500万年~約5億4100万年前の期間を持つ、その化石が発見された場所にちなんで名付けられたエディアカラ紀(先カンブリア紀(カンブリア紀の前))の発見でもあった。

エディアカラ紀の生物の代表格はディッキンソニアだ。楕円形の生物で、長軸方向に一本の線が入っていて、短軸方向には節構造がある。"エアマットのような"と形容されることが多い。しかし、普通のエアマットと違って、いや、"常識的な"生物と違って、ディッキンソニアは左右相称のようでいて違っているのだ。体軸に沿って左右に伸びている節だが、左右の節が繋がっていない。半分ずつ、ずれているのだ。左右相称は生物の基本形であるはずだが、それをこんな形で崩したものは原生生物にはいない。そのため、ディッキンソニアの分類学的な位置づけは未だに定まっていない。

カナダのニューファンドランド、アヴァロン半島から見つかった「ランゲオモルフ」と名付けられた生物の化石は、まるで植物の葉っぱのような形をしている。海底に貼り付くためと思われる膨らみが先端にある「茎」のような形をした部分と、「葉」のような本体から形作られている。筋肉や感覚器官があったような痕跡は残っていない。「葉」の部分は小さな長方形のパーツが並んだ構造をしていて、軸のようなものはない。おそらく、海中を漂うプランクトンを濾し取って生きていたものと思われる。

エディアカラ生物群はほとんどが軟体で、活発に動いていたとは思えない構造をしている。そのため、本格的な生存競争・弱肉強食の争いはこの時代にはなかったのではないかと言われている。いわゆる「エディアカラの楽園」だ。

● カンブリア紀

古生代のカンブリア紀に入ると生物たちの姿は一変する。硬い骨格を持った者たちが登場するのだ。
カンブリア紀の生物たちを有名にした、そして「カンブリア爆発」という"事件"を世に知らしめたのが、スティーヴン・ジェイ・グールドの「ワンダフル・ライフ」だ。その本には、カンブリア紀に突然出現した多様な動物たちが紹介され、彼らの姿・形は、現生動物とは全く繋がりのない、奇想天外なものが一杯だったと指摘されている。グールドは、進化は突然に起こり、種の多様性は爆発的に増加、その後、幸運にも生き残ったものだけが今に繋がっているという考え方を示した。その考え方は「悲運多数死」と呼ばれている。

オパビニア・レガリスと名付けられた動物は、頭部に五つの目を持っている。前列に二つ、後列に三つあり、後列中央の目だけが頭部に直接付いており、他の四つは細い柄の先に目が付く形で、頭から飛び出ているのだ。
不思議なのは目だけではない。頭部から前方にホースのように伸びた吻のようなものが付いている。でも、これは口ではないらしい。身体の底面に口とみられる構造が確認されているのだ。となるとこのホースは何か。曲げるとちょうど口のところに届くことから、象の鼻のような機能を持っていたのではないかと考えられている。五つ目の象だったのだろうか。

グールドの「ワンダフル・ライフ」が出版されたのは1989年。その後、研究も進み、今ではバージェス動物群の多くが現生動物との繋がりを確認されてきており、"ワンダフル"さは小さくなっている。でも、未だに"訳の分からない"動物たちも残っているが。

★ 目次

  • 第1部 原始生命の時代
  • 第2部 エディアカラ紀
  • 第3部 カンブリア紀
    1. 発見物語
    2. ワンダフル・ライフ!
    3. 新たなフィールド
    4. 世界のカンブリア爆発
    5. 覇者アノマロカリス
    6. ワンダフル・ライフ?
    7. 「カンブリア爆発」の真実
    8. エピローグ

★ 感想

最初に「ワンダフル・ライフ」を読んだのはいつだっただろうか。ある意味、世界観を変えてくれた一冊だ。それまでも「進化」とは目的・方向性を持った変化ではなく、偶然のなせる技だとは理解していたが、適者生存(ここでは弱者滅亡)とはこういうことだというものを見せてくれ、「進化」の本質を見せてくれたのだ。それから二十五年、ワンダフルさはだいぶ収まってきたようだが、魅力が衰えることはなかった。やっぱり興味津々の、摩訶不思議な世界が広がっている。

エディアカラ生物群の話を始めて知ったのは岩波の雑誌「科学」だった。こちらはカンブリア紀の動物群に比べて情報量が少ない。本書はそれを大いに補ってくれた。それにしても左右相称だと思っていた彼らが、左右で節が半分ずつ、ずれているとは衝撃的。知りませんでした。これだけでもこの本を買った価値はある。うむ、どういう仕組みでこんな形になるのだろうか。いやぁ、不思議。その不思議さは、バージェス動物群を上回るのではないだろうか。

ということで、この本、かなりおすすめです。シリーズものになっているので、続きも読んでみようかな。







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