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「ターナー展」ブロガーイベント&作品鑑賞 : ターナーさんはKYだったと思う [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ イベント概要

東京都美術館が主催する「ターナー展」ブロガーイベントに参加してきました。また、朝日新聞デジタルさんの懸賞で招待券をもらったので、もう一度、観てきました。

司会が東京都美術館の方、ゲストはフクヘンこと鈴木芳雄氏(フクヘン。- 雑誌ブルータス副編集長、鈴木芳雄のブログ)、結城昌子さん(結城昌子オフィシャルサイト|アートアンド[artand])でトークイベントでした。
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お題はもちろん、ターナー。フクヘンさんはターナー展のキャッチコピーを手掛けたそうで、その苦労談。肖像画のほとんどないターナー(プライベートはひた隠しにしていたらしいです)ゆえ、キャッチコピーでポスターを引き立たせようと、ターナーの作品を大胆にトリミング、その上にコピーを乗せたのでした。通常、トリミングやら作品に何かをかぶせるのやらはNGであることが多く、今回は異例の許可が下りて可能になったのだとか。そのコピー採用されるまでに山のように作っては没になり、自分でも推敲し、やっと出来上がり。でも、没作品でもなるほどというものがいっぱいあったので、このイベントで特別にお披露目してくれました。
「ルネサンスの画家に学びました。印象派の画家が学びました。」なんてしゃれてますよね。ターナーの美術の歴史中での位置づけがよくわかる。
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結城昌子さんは朝日小学生新聞に十五年も連載を続けていて、子供向けに絵画・画家を紹介しているのだそうです。実は存じ上げず、今回のイベントで初めて知りました。巨匠の作品の一部を切り抜き、それを使って後は好きに絵を描け、なんてお題を子供たちに出しているのだそうですが、ターナーの空を使ったお題には最近では最も応募があったのだとか。その作品の一部が紹介されましたが、小学生とは思えない大胆さ。ネットの世界では「マッシュアップ」が盛んですが、子供たちは自然とそんな技を身に着けているんですね。それに、ターナーだったら著作権も気にしなくてよさそうだし、大いにマッシュアップできそう。
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★ ターナー展概要

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーは、英国で最も愛されている画家と言われる人。18世紀末から19世紀にかけて活躍し、ロマン主義を代表する画家となる。そして、印象派の画家達に大きな影響を与えた。
今回の企画展は、ターナーの作品を多く収蔵するテート美術館(テート・ブリテン)のコレクションによる。
  • 会期 : 2013/10/08(Tue) - 12/18(Wed)
  • 休室日: 月曜日 ただし、12/16は開室
  • 料金 : 一般1,600円、 学生1,300円、 高校生800円、65歳以上1,000円、中学生以下無料

音声ガイドの声は辰巳琢郎氏。500円なり。
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展覧会図録は2,400円。フクヘンさんも言ってましたが、「この値段でこの製本のクオリティは"買い"だ」と。
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クリスマスシーズンですからね。オリジナルグッズにはこんなのもありましたよ。Bonhommeってやつかな。
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★ 作品鑑賞

ブロガーイベントでは特別に作品の写真撮影OKでした。なので、ちょこちょこ本物を紹介しちゃいます。

今回の展示はほぼ年代順に、描かれたテーマごとに分けてありました。即ち、
  • Ⅰ 初期
  • Ⅱ 「崇高」の追求
  • Ⅲ 戦時下の牧歌的風景
  • Ⅳ イタリア
  • Ⅴ 英国における新たな平和
  • Ⅵ 色彩と雰囲気を巡る実験
  • Ⅶ ヨーロッパ大陸への旅行
  • Ⅷ ヴェネツィア
  • Ⅸ 後期の海景画
  • Ⅹ 晩年の作品

以下、気になった作品を一言感想で紹介。今回、初めてタブレット(Iconia W3-810)を持ち、絵を見た直後に感想をEvernoteにメモしてみました。それをベースに加筆修正しています。

初期の「嵐の近づく海景色」では、雲、波の描写がすでにターナー。
雨雲がモクモクと沸き出ている空を見ると、「ターナーの絵のような空模様だ」と表現してしまう。それくらい、ターナーというとあの雲、空が印象的だ。そんなターナーさん、英国では最も人気のある画家だとか。なんか、わかる気もします。お堅いイメージの英国紳士にぴったり。

「崇高」さの追求って、なかなか凄いテーマですが、当時はエドマンド・バーク「崇高と美の観念の起源」に代表される思想が支配的だったとか。これが私の生きる道、とターナーさんは感化されたのでしょう。産業革命などを通して英国が世界に冠たる国になっていった頃ですから、気合いが違っているのでしょう、今の時代の我々とは。

と言いつつ、ターナーさんは崇高さを自然の中に見いだしていたようで、「バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨」では、 湖面に映る虹と空の虹がつながり、円を描く様子をドーンと描き切っています。
また、「グリゾン州の雪崩」(下の写真)では雲、雪、土が混沌として描かれる。圧倒感は充分。
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かのナポレオンがヨーロッパ従を戦争に巻き込んでいた頃、ターナーは郊外のアイズルワースに移住し、農村の風景を描いている。「鉄の値段と肉屋の子馬の装蹄料を巡って言い争う田舎の鍛冶屋」は庶民の姿、風俗を描いた一枚。こんな風景をどんな想いでスケッチしていたのだろうか。
これは別の絵だが、こんな牛さん達を一杯描いている。
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「スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」。荒れた海上でのスケッチはさぞや大変だったろう。実際に自分の目で見てスケッチをし、絵にしているそうだ。
とは言え、実際はとってもいい天気だったのに、荒れた海に描いて迫力を"盛っている"絵もあるようで、その辺りは「芸術性」を重視したようだ、ターナーさん。


「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するファファエロ」ではイタリアの建築、絵画、彫刻、そして都市全体を一枚に収めようとしているような作品になっている。これぞイタリアと言わんばかりだ。フクヘンさんがポスターに使ったのはこの絵。

一方で、ペットワースハウスを描いた絵の構図は建築雑誌、インテリア雑誌の写真のよう。風景を多く描いた画家の感性は写真家に近いものがあるのだろうか。
ところで、「座礁した船、ヤーマス」はそのペットワースハウスに飾るために描かれた絵。なぜ、パトロンの屋敷を飾る絵の題材に難破船を選んだのだろうか。その辺りの感覚は不思議クン、KYクンとしか思えない、ターナーさん。自分が結婚していることも人に黙っていたほどの秘密主義だったようだし、ちょっと付き合いにくい人だったのだろうか。趣味は魚釣りだったそうだから、人よりも魚を相手にするのが好きだったのかもしれない。。。

そんなターナーさんは研究熱心。水彩画の可能性を追求し、抽象画のような形で新たな表現を見いだそうと日夜研究していた。そんな「試作品」の数々がアトリエから発見され、今回の企画展でも何点か展示されている。
「城」は白いシルエットで描かれた城と、色彩だけの空に大地。とてもデザイン的でモダンだ。ターナーさんは実験のつもりだったのだろうが、一つの作品として存在感充分だ。

そんなアトリエに残されていたターナーさんの画材道具も展示されていた。当時、絵の具はチューブではなく、豚の膀胱に入れられていたそうで、とっても扱いにくそうだ。使い終わったらいちいち紐で口を縛らなきゃならない構造みたい。
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その研究の成果かもしれないが、後期から晩年にかけての作品は風景画なのに(?)景色が霞んで対象物がよくわからない。水墨画、いや、墨絵に近い感覚だろうか。
「サン・ベネット教会、フジーナ港の方角を望む」で描かれたベネチアには黄昏が似合う。それはいいのだが、地理的制約は、無視することもあったようだ。実際とは太陽のあるべき方角が違っているそうだ。そこに夕陽が射してほしいと思うことは確かによくある。写真じゃ無理だけど絵画なら自由だし、そんな小さなことは気にしないことにしよう。風景画はGoogle mapとは違って、正確さは求められていないのだ。

とは言え、捕鯨船を持つ実業家がパトロンになり、これまた絵を描くが、なぜかクジラの姿がはっきりしない絵になっている。この作品はもう少しサービスして、クジラをはっきりと描けばいいのにと思ってしまった。まあ、それは絵心の分からない者の見方なのだろう。

ということで、ターナーさんの人となりを勝手に解釈しつつ、楽しんでしまった。本当のターナーさんがどんな人だったかは分からないが、その作品から受けた印象はこんな感じだったのだ。
ターナーの作品は前から好きだったが、ますます好きになってしまった。有意義なイベント&企画展であった。
会期はまだ少し残っているので、是非とも観に行って欲しい。そして自分なりのターナーを見いだして欲しい。いやぁ、面白かった。





ターナーさんもこれを読んだのでしょう。
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JUNKO

東京滞在中にできたら美術館めぐりをしてみようと思っています。
by JUNKO (2013-11-25 12:42) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
おお。どこをどう廻るか悩むところですね。上野で攻めるか、六本木か、そして、渋谷や恵比寿も。。。
by ぶんじん (2013-11-25 22:11) 

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