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「物語による日本の歴史」 鎮西八郎為朝と悪源太義平の話が載ってますよ、平清盛ファンのみなさん [読書 : 読んだ本の紹介]


NHK大河ドラマ「平清盛」も盛り上がってきていますが、これまで「山川日本史リブレット 平清盛」 「平家の群像 物語から史実へ」などを読んで勉強してきて、そのうち、平家物語や保元物語、平治物語なども読みたいなと思いつつ、まだ手が出せていない状態でした。そんな時に本書を知り、まずはと思って読んでみた次第。
大河ドラマでもユニークなキャラクターで(一部ファンに?)人気のあった鎮西八郎為朝と、悪源太義平の話が載ってます。ついでに平家物語の那須与一の話も。なかなかおトクな内容になっているのでありました。

とはいえ、本書は何も大河ドラマに合わせて出版されたものではなく(再版だから、実際はそうかも知れませんが。。。)、若き頃の網野善彦氏が編集したものとのことなので、元はずいぶん古いようです(1957年)。
物語の形がどのように変わっていくのかを辿りつつ、そこから日本の歴史を読みとっていこうと企図したもの。語り手が国家(為政者)だったり、(没落)貴族だったり、庶民だったりとバラエティに富んでいて、その視点の変化も楽しめるようになっている。

各章の概要はこんな感じ。
国のはじまり
出雲・播磨風土記、古事記、日本書紀から。国の始まりの神話も、中央政権と地方とではだいぶ見方が違っているのが分かる。

ヤマタノオロチ
古事記、日本書紀から。
クシナダヒメ(美しい稲の姫)や、その両親のアシナヅチ(足の力)・テナヅチ(手の力)夫婦(どちらも農業における労働を示している)などが出てくる辺りから、農業を基盤とした国家形成の姿を表しているのが分かる。

国々のむかし話
常陸風土記から。地方の人々の風習や習慣が垣間見られる。

倭建命
古事記から。ご存じ、天皇家の東国進出(侵略)の話。

青丹よし
万葉集から。天皇から下級役人まで、立場や境遇によって同じ都を歌った歌でもずいぶんと趣が違うことが分かる。

むかしがたりの歌
万葉集から。浦島太郎の話が出てきます。

国々の歌
万葉集から。地方の人々の厳しい暮らしぶりが忍ばれる。

防人の歌
万葉集から。泣かせます。

奈良の都のころの話
日本霊異記から。賄賂を要求する地方役人を”鬼”にたとえて描いている。寺院が高利貸しをしている様子なども分かる。

春のにしき
古今和歌集・新古今和歌集から。「この歌は詰まらない」などと、著者はなかなか厳しい批評を下しています。

世継のむかし話
大鏡から。藤原氏の摂関政治に対する批判。

光源氏の物語
源氏物語から。下級貴族(紫式部)から見た、ダメダメな貴族批判。才能や知識もないのに、家柄だけで偉くなっちゃう連中を批判しています。

四季のながめ
枕草子から。四季の移ろいを鋭く観察している清少納言も、農民の暮らしには全く理解がなかったようだ。

かぐや姫
竹取物語から。実は色んな伝承が詰め込まれた話だったんですね。富士山の名前の由来まで出てきます。

むかしの旅日記
伊勢物語、土佐日記、更級日記から。地方に下っていった(左遷された、自らドロップアウトした)貴族達の心情が忍ばれます。でも、都を懐かしんでばかりで、その土地の話は意外と少ないみたい。

平安時代のはやり歌
梁塵秘抄から。神楽歌、風俗(ふぞく)、今様などの”流行歌”。

信貴山縁起
宇治拾遺物語から。絵巻にするとおもしろい話の代表。映像化を意識していたのか?

鎮西八郎為朝
保元物語から。為朝はこの物語では主人公なんですね。平清盛なんか、為朝を怖がって直接対決を避けた弱虫として描かれてます。

いまはむかしの物語
今昔物語集から。あの、わらしべ長者の話が出てきます。こんな風に棚ぼた式に儲けられないかと夢見る当時の人々の想い、Loto6を買い続けている私としてはとっても共感しちゃいます。

悪源太義平
平治物語から。こちらの主人公は悪源太義平。この「悪」って、とっても強いって意味なんだそうです。”悪たれ小僧”って訳じゃないんですね。
ということは、藤原頼長のニックネーム「悪左府(あくさふ)」もそういうことなのかな。

和歌のしあい
六百番歌合から。著者によると「平安時代の和歌で、どれも理屈の多い、詰まらないもの」だそうです。

源平の合戦
平家物語から。琵琶法師が歌い語った調子を感じてもらうため、原文に近い形で収録。ちょっと読むのが大変。

西行と実朝
山家集から。都の貴族と違い、各地を放浪した西行の歌は活き活きとして面白い。

この本で日本史を学ぶ人のために
戦後間もない頃に出版された本書だけに、戦前・戦中の皇国史観から抜け出し、どのように”新しい”歴史を語ろうかという試みが表れている。「神話の記述を余り深読みせずに、素直に読め」といった指摘は、「神は死んだ」と宣言して新たな哲学を生み出そうとしたニーチェの苦労と似たようなものだろうか。前は素直に、全てが真実だとしていた神話も、天皇が神でなくなってしまった後ではこれら神話をどう解釈すればいいのか、確かに悩む。短い章だが、その辺りの苦労が読み取れるものになっている。

ということで、「平清盛」ファンにも、歴史好きの人にも、そして日本史再入門したい人にもおすすめの一冊です。

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コメント 5

JUNKO

各章の的確な概要、面白く読ませていただきました。
by JUNKO (2012-09-27 19:12) 

TaekoLovesParis

ぶんじんさん、たくさん読書をなさっているけれど、どこで時間を見つけていらっしゃるのかと思ったら、ドトールが読書の場なんですね。フルーツゼリーをお供に。私も、この本なら簡単そうだから、ドトールで読みたいけど、夜はおなかがすいて、ご飯に直行パターンで。。
by TaekoLovesParis (2012-09-27 20:14) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
全部書いたら、たらたらと長くなっちゃいました。

TaekoLovesParisさんへ:
ドトールコーヒーやら、ミスタードーナツやら、サブウェイやら、なんやらかんやら。カフェやファストフードの店にはお世話になっています。
by ぶんじん (2012-09-28 00:08) 

カエル

防人の歌、気になります。
by カエル (2012-09-28 12:18) 

ぶんじん

カエルさんへ:
防人は生きて帰れないことも多かったようです。残された奥さんが詠んだ歌が特に泣けます。
by ぶんじん (2012-09-29 08:03) 

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