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「桜田門外ノ変」完成披露試写会 [映画の感想]

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「桜田門外ノ変」完成披露試写会に行ってきました。会場は丸の内東映。表通りにマスコミ用の受付が出来ていて、かなり盛況でしたよ。

さて、水戸の藩士(襲撃時には脱藩して浪人の身)達が時の大老・井伊直弼を暗殺した事件が桜田門外ノ変。屋敷を出て登城する時を狙っての強行だ。今で言えば総理大臣を狙った極右テロということになる。忠臣蔵も徒党を組んで夜襲をかけるというところは同じだが、あちらはあくまでも私闘、敵討ちだ。そこに、犯罪ではあるけれどもあっぱれと言っても許されるものがある。しかし、極右テロとなると、時代は違っても単純には拍手を送る気になれない。二十一世紀の今、テロリズムが横行している世の中にいる訳で、その観点からするとこの事件の首謀者たちに対してどのような態度で臨むべきなのか、どうしても構えてしまう。
この事件が起きたのが今からちょうど百五十年前。ということで、茨城県や水戸市が全面バックアップしてでこの映画が制作されたそうだ。だが、そういった意味でなかなか難しいテーマを選んじゃったんじゃないかと思う。

ここからある意味ネタバレ。
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などなどと、映画の始まる前には思っていたものの、見始めてみるとだいぶ感じが違っていた。忠臣蔵だと、討ち取った吉良上野介の首を掲げて四十七士が凱旋するシーン辺りがクライマックスだろう。今回の作品もそうかと思いきや、前半のかなり早い段階で襲撃事件は終わってしまう。その後は、事件に至るまでの経緯や、後半は襲撃事件の首謀者たちの逃亡と、追い詰められての自害や、捕まっての処刑が続く。史実がそうなので、これはいかんともしがたい。が、それを淡々と描いていき、一人、また一人と夢破れて命を落としていく男たちの姿は痛ましい。そして最後は主人公の番。各藩に決起を促すために逃亡しつつ、賛同を訴えていったが、鳥取・薩摩・越後と日本中を歩き回ったというのに思う結果は得られなかった。そして結局は捕まってしまう。しかもそれは水戸藩によるもので、同じ藩の人間に捕まり、犯罪者と断ぜられて斬首となったのだ。
テロリストの末路はこうなんだ、と訴えているようにも見える。そして同時に、テロリストにも家族はいるし、国の行く末を考えて熱意を持っていた人たちであったと言うことも描かれている。原作を読んでいないのだけれど、扱いにくい難しいテーマを、じっくりと読者に、そして観客に考えさせるいい作品になっていると思えた。
映画としては見終わってすぐには答えを見いだせずにもやもやしたものが残る、そんな感じがした。が、考えてみればこの作品を撮ったのは佐藤純彌監督。いろいろな作品と撮っているが、私としては「人間の証明」や「野性の証明」が思い浮かぶ。どちらもとても強く記憶に残っている作品だ。見終わった後の感覚はあの「人間の証明」に近いのではないだろうか。これはもう一回、いや繰り返し見ないといけない作品なのかも知れない。

と、いつになく難しい感想を述べてしまったが、そこは東映の看板監督の作品。重厚だが見応え充分だった。
意外なことに本格的時代劇はこの作品が初めてだそうだが、リアリズムを追求して襲撃の場面もただのチャンバラではなく、人が人を切る、それを殴りかかって阻止する、真っ白な雪を鮮血が染める、そんな迫力のシーンになっていた。「人間の証明」よりも前はヤクザ映画を何本も監督していただけに、時代劇においても魅せてくれました。
そして、出演陣が豪華でしたね。今回、舞台挨拶に登壇したのが主役の大沢たかお、妻役の長谷川京子、息子役は子供店長でおなじみの加藤清史郎、水戸藩士役の江本明と渡部豪太、薩摩藩から襲撃に唯一参加した藩士役の板東巳之助だ。そのほかにも生瀬勝久や渡辺裕之、北大路欣也に伊武雅刀などなど、そうそうたるメンバーが出演している。それがどんどんと映画の中では死んでいってしまう。考えてみれば何とも贅沢な作品ですね。
舞台挨拶の話。席がかなり後ろだったのでちっちゃくしか見えなかったけど、それでも大沢たかおはいい男だったし、長谷川京子の美しさは輝いていたし(子供店長も見とれてました?!)、加藤清史郎君は利発そうだし、みんなスターだなぁと感心しちゃいましたよ。
そうそう。主題歌(エンディング)はalanでした。作詞が元かぐや姫の伊勢正三。いい曲でしたよ。彼女の声にあった歌詞じゃないでしょうか。CD、買っちゃいそうです。

ということで、久しぶりに重厚な作品を見たぞ、という感じでした。評価が分かれそうな気がしますが、私はおすすめです。
歴史的な背景や状況説明もしてくれるので、日本史が苦手な人も大丈夫ですよ。



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桜田門外ノ変〈下〉 (新潮文庫)

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mami

映画館にはすっかりご無沙汰しておりますが、時代劇は好きです。
歌舞伎に「井伊大老」という重厚な作品がありまして、これと併せて観ると裏表で面白そうだな、と思いました。
by mami (2010-09-08 23:59) 

ぶんじん

mamiさんへ:
歌舞伎には疎くて・・・。どんな作品なんでしょう?観る機会あるかなぁ。
井伊さんにも言い分はあるでしょうからねぇ。
by ぶんじん (2010-09-09 22:36) 

TaekoLovesParis

「キナコ」もぶんじんさんの記事で読んだ後、いろいろな所で評判になっていましたが、これもそうなりそうですね。「人間の証明」、ずいぶん前に見て、すっかり忘れてました。時代劇が初めての監督でも、やくざ映画の経験が活きるということ、なるほどね、と思いました。
井伊直弼の墓は、豪徳寺(小田急線)にあるんです。
by TaekoLovesParis (2010-09-10 00:27) 

東雲

ぶんじんさんって、いろ~~んな所に出かけられてるんですね~!
(チョット見習わなくっちゃ^^)
中々面白そうな映画ですね!
井伊直弼というと、篤姫の中で演じていた 
中村梅雀さんが浮かんで来てしまいます^^;
長谷川京子さんは ママになってより一層キレイになった気がします。

観たい映画は沢山あるのに、こっちに来てからは
1度も映画館に行ってないんですよね~~(-_-;)
by 東雲 (2010-09-10 14:45) 

Ranger

う~ん、ドラマとしての楽しさより、
色んな論議を交わすことが楽しそうでもありますね^^;
by Ranger (2010-09-10 18:03) 

ぶんじん

TaekoLovesParisさんへ:
豪徳寺は何度も行ったことがあるんですが、井伊さんのお墓の写真をちゃんと撮ったことはなかったかも。招き猫に目が行っちゃうんですよね。もう一度行ってこなくては。

東雲さんへ:
この映画では憎まれ役なので、井伊直弼は伊武雅刀さんでしたよ。そのほか、豪華な顔ぶれを見るだけでも一見の価値ありの作品なので、久しぶりにどうぞ。

Rangerさんへ:
9.11の時期でもあり、いろいろと考える題材になりそうですね。テロ・ゲリラ・義勇兵・革命軍・解放軍・英雄。。。。その違いや線引き、評価は歴史の常で相対的なものでしょうから。
by ぶんじん (2010-09-12 12:26) 

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