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「文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船 」 [読書 : 読んだ本の紹介]

伊豆・天城の施設で偶然手にした小川未明の童話集。その時は「赤い蝋燭と人魚」、「金色の魚」など数編しか読むことができなかった。でも、その魅力にはまってしまって本屋に寄った時に探してみると、なんと新刊書(文庫)コーナーにこの本が。なんという運命の出会い。これはもう、読むしかないでしょう。ということで買って帰り、早速読んでみました。
実は、小川未明という童話作家のことを知ったのもこの前のことだったので、童話を書く前は怪奇ものを書いていたなんてことは知るよしもなし。でも、一般にも童話作家として知られてしまったせいか、その前の作品は余り知られていないらしい。編者によると、この文庫のために初めて集められた、全集にも載っていない作品もあるそうだ。ほほぉ、これはますますおもしろそう。
さて、「赤い蝋燭と人魚」も怖い話でしたが、その人が書いた怪談。なんともいえないおどろおどろしさを持ってます。どの作品も短編のため、いきなり話は核心に入り、一気にクライマックス。そして、終わりは「あれ?これで終わり??」という位に突き放され、あとは自分で考えたり想像してねっと言う感じ。訳も分からず山賊(?)に捕らわれ、これから殺されようとしている男。山賊達は斧を研いだり、血糊のついた桶を用意したりしている。さあ、これから恐ろしい惨劇が繰り広げられるのだろう、と思って先を読み進めようとページをめくると、あれ?そこで終わっちゃうの?なぜ、彼はこんな目に遭っているのか。この山賊達は何者なのか。なんのために人をとらえて殺すのか。何も分からない。
冬の日、母は街まで商売に出かける。帰りの遅いのを心配した息子は雪の中、母を捜しに出かけていく。村から村へと探して歩くうちに汽車の線路に突き当たる。雪が降り積もり、線路がどこにあるのかも分からなくなる。そこへ汽車が・・・。急に止まった汽車から降りてきた乗客達。彼らが見たのは、変わり果てた我が子を抱きかかえる母親だった。
小川未明は新潟の人だそうで、雪に閉ざされた寒村やうらぶれた漁村、人里離れた山奥の村などが舞台となっていることが多い。冬の日本海、厚い雲に覆われて陽の光をなかなか見ることのない陰鬱さ。それがベースとなっているのだろうか。怪談と言うよりも不条理と言うか幻想の中の世界と言うべきか、そんな感じの話が多い。好き嫌いが分かれそうだが、私はますますこの人の作品が好きになってしまいました。この雰囲気は今の小説にはないもの。アンデルセンのようなブラックなお伽噺ともまたちょっと違う。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)を信奉していたそうで、日本の風土に根ざした“怪談”はこのようなものなのでしょうか。

万人におすすめ・・・はできないけど、好きな人は好きですぞ。で、自分が好きかどうかは読んでみないと分かりませんね。ということで、まずは一読をおすすめします。


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リカ

「後は自分で想像して下さい」系の物語なんですか?
普段から妄想の中で過ごしている私としては気になりますね☆
しかも、ぶんじんさんがおもしろいって言ってた本はだいたい私のツボにもはまるから読んでみたいかも~^^

by リカ (2008-10-27 14:34) 

ぶんじん

リカさんへ:
新刊なので、本屋さんに並んでいると思います。短編集なので、まずは一つ読んでみて雰囲気をつかんでくださいな。はまるかな?
by ぶんじん (2008-10-31 23:06) 

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